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転生ヒロインは聖女ルートを依頼する!(仮)

前作、前々作同様、同世界、同じ舞台での作品ですが、今回は第一話から全く違った構成となっています。

ヒロインのキャラや名前はそのまんまですが、どれが一番反響があるか知りたかったので3作パラレルワールド風に仕上げました。

「そっちにいったぞー」

兵士の声とともによく響くベルが鳴って、私の居場所が知らされる。

「あーもうっ!追いかけてこないでよ!」

私は遠く上空にそびえるビルの壁を蹴りながら、進路を変えていく。


すこしばかり慌ただしいが、このホウキに乗ったワンピースの少女が当作のヒロイン、ミャウールだ。さて、あと少しばかりこの鬼ごっこをご覧いただきたい。そうしたらすぐにでもこうなったわけをご説明しよう。


「ありゃ魔女だ」

ミャウールには見えない地上で、栗茶色のベレー帽に白髭にパイプたばこといった風貌のおじいさんが呟いた。

「魔女だ〜〜!」

この声はさすがにミャウールにも聞こえた。なんと言っても、ミャウールと仲のいい友人の兄、メレードの高い声が聞こえてきたのだからミャウールの心情は少しばかり荒れ、それに合わせてミャウールのホウキも荒れた進路を進んでいく。

「人聞きわるいけど、たしかにそうなのよね」

ミャウールの呟きはやはり聞こえるはずもないが、それでもメレードの声に感化され、ミャウールの進行方向の建物の窓から身を乗り出す噂好きも多くいたりする。

「え、魔女?…きゃ!」

女性のスカートがめくれそうになって、ミャウールは初めて自分のホウキの出すスピードを意識したのだ。

「魔女だ〜!」

キャラカンキャランキャランキャラン…

ベルが煩い。

「だーかーらー!おってくるなっつーの!」

ミャウールの心情はますます荒れていた。


「ミャウールお嬢様!」

私の乱れた姿にばあやは驚いていた。

時速何キロだろう───成人男性でありただでさえ王都配置の騎士として現役活躍中のメレードが追いつかない速さ───で空を飛んでいたのだから当たり前と言えば当たり前なのだが、車もバイクも自転車もないこの世界。まして私のような魔法も使えない世界で、どうしてそんなことができるだろう。

というわけでこの惨事を見てこの世の誰にも何があったかなどわかるはずもない。

「髪を…いえまずはお召し物を…いえまずはお水…」

あたふたするばあやに私は、ひとつずつでいいからお願い、と言って聞かせた。

「街の騒ぎは一体何事なのっ」

「奥様!」

バタンっと扉が鳴って現れた黒髪ストレートロングの女性は、なんと齢40の私の母だ。

その歳でシワひとつない。切長の目は濃いアイラインで品よく、さらに切長に仕上がっており、真紅あかい口紅が全体をまとめている。

「おかえりなさいませ、お母様…」

私は隠しきれない髪は諦め、苦笑いを浮かべてお母様を迎えた。

「ああぁ」

お母様は察したようにこちらを見た。

「支度が全て整ったら、私の書斎へいらっしゃい」

「はい…」


「ミャウールです」

「開いてるわ」

「失礼します」

お風呂に入り直し、一応全ての服、メイクをした私をお母様は不快な顔をして出迎えた。

この人には全てバレている。隠し通せることは何一つないんだということを、最初に認めさせるのになぜこんなにこの人は長けているのだろう。

「ミャウール、今日は何があったの?」

「えっと…」

私は語り出した。



【第二話 ビフォーライフ〜これまでのお話】


お母様は私が転生者であるということを既に知っている、唯一の人だ。それがどんな出会いであったかというと、まさにこう。


「奥様、ミャウール様が目覚めたのですよ。7日間の熱に、よく耐えられました」

「お母…様?」

「ええそうよ、ミャウール。よく顔を見せて。ああかわいい子」

そう言ってお母様はミャウールの顔を撫で回す。

「ばあや、悪いけど2人にしてくれる?」

「はい。奥様、本当にようございましたね。ばあやはこの感動の場から退きますよ。なんと言ったってもう、感動の場ですからね。死の瀬戸際から…」

止まらないお喋りを続けながら、ばあやは部屋から出て行った。

バタンっとドアが閉まる。

お母様はそのドアをしばらく見つめていて、私はなにも知らないまま、ただ愛おしいと感じるミャウールのお母様の横顔を見ていた。

足音が完全に消えるのをお母様は待っていたようだ。ほんの数秒前の私からするとただ時が期したようで、お母様が口を開けただけのように見えたのだが。

「あなた、私の子じゃないわね?」


こうして私はお母様の質問攻めに遭い、答えないわけにはいかなかった。

前世は覚えていないが自分が転生者であるらしいこと。

元のミャウールがどこへ行ったのかわからないこと。

自分はこの世界のことをなに一つ知らないこと。

実を言うとお母様のことも知らないこと。

こういった私からすると当たり前のことを、お母様は真摯に聞いてくれた。それも元のミャウールの行方について以外、一切動揺することもなく。

「大変だったのね、この数日間。だけどこれからここで生きていく気なら、もっと大変よ」

そういったお母様の言葉を私は今も強く覚えている。


「これがミャウールの日記なの」

「え、私…開いていいんですか?」

「ええ。構わないわ。元のミャウールはもうこの世界には居られない、そんな気はね、随分と前からわかっていた気はするのよ。だからあなたがこの世界で生きていくつもりがあるのなら、もらって。そしてミャウールとして生きて」

そう言って渡されたのが分厚い、文庫本のような表紙の本だった。

その内表紙に記されたタイトルは『メインストーリー』。中は少女漫画に似た、やはり転生モノのお話だった。

「これ、…読んだんですか?」

2人の時に私がお母様、と呼ぶ事をお母様はひどく嫌った。なんと呼べばいいかもまるで見当がつかなかったので、私は適当にごまかして呼んでいた。

「いいえ。私たちの前では開かなかったみたいで、誰一人としてミャウールが開く姿を見た人はいないわ。私達もね、開かなかったの。あなたが来たからよ、その日記を開けたのは。だけど内容は異国語だった。あなたは難なく読めてるみたいね?」

「はい。これ、日本語…」

「日本?」

「はい。えっと…異世界の、島国です。あ、この世界にも島国ってありますか?…島国っていうのは海に囲まれた…」

「島国くらいあるわ、バカにしないで。海を見たことがないだけよ」

「そう…なんですか」

「ええ」

お母様は不快そうにいう。

「ねえ。見たところ、あなたこの世界の文字が読めるように見えないのだけど」

「え?そうなんですか?すごい洞察力ですね」

「わからないのね、ここに文字が浮いてるのが!」

「はい?」

「ああ…。ねえ一応聞くけど、文字は教えないほうがいい?」

「え!?困ります、教えてもらわないと私っ」

「大丈夫、一応、一応聞いただけだから」

「はい。でも本当に今のはわからなかっただけですから。もう一回お願いします」

こうしてお母様としては相当に骨が折れる練習を積み重ねて、2次元と3次元と4次元の間の空間に浮かぶ文字の認識を、私はできるようになった。

その他にもお母様は元のミャウールが覚えていたマナー等の練習を手伝ってくれたが、こちらはミャウールの記憶が残っていて、リハビリを思わせる進度で、文字を覚えるよりずっと楽にできた。


さてと、現在に戻ろう。



【第三話 トゥデイズストーリー〜今日の話】


私はソファの上に正座している。お母様はちゃんと椅子に座ってクッキーを前に、3杯目の紅茶を飲んでいる。

「元から飛べたわけじゃないんです。今日が初めてで、ちょっと飛べるかなって、まさかなって思ったんですけど、コスプレのつ…」

「コスプレ?」

お母様は知らない言葉、この世界にはない言葉を言われるとすぐ問いただす癖がある。何度も何百回も繰り返すうちに、途中で話を遮られてももう嫌な気はしなくなった。

「劇、劇の衣装を着る事です。その劇の衣装を着るだけのつもりで私、ホウキにまたがったんです。黒いワンピースじゃなくていつもの白いワンピースだったから、本気でやるコスプレとかでは全然なくって、ほとんどノリ…みたいな。それでかるくジャンプしたんです。魔女はこれで飛ぶのか、鳥みたいに。それができたら楽しいだろうなって想像したんです。それで2、3回飛び跳ねてみたら、そしたら、」

「想像はつくわ。できるつもりじゃなかった。やったらできた。ってことね?」

「まあ、というかあいかわず今回も完答です。それで私、降りられなくなっちゃって、…あ、そうだ!庭のリンゴの木の枝、折っちゃいました。すみません」

「枝一本で済んだのなら安いモノだわ。そんな危険なことして切り傷ひとつないなんてってばあやも驚いていたわ」

「え!ばあやに言ったんですか?」

「まさか。あんなに髪がなっててもそうだったってだけで、驚くには充分よ」

「そうですか。みなさんに迷惑かけてすみません」

「それは私にじゃなくてメレード君達に言うべきじゃない?魔女が伝説を超えて現れたって話、もう広まってるよ。メレード君も頑張って事態収集と、目撃情報の収集、記録で徹夜するって意気込んでたわよ。世界的に見ても空飛ぶ人間なんて神話だから信じないでしょうけど、しばらく噂は持ちきりでしょうね。そういうことなら誰か聞きに来てもなにも知らないって言うわ」

それにしてもそれにしてもねぇ?、と繰り返してお母様は吹き出した。

「ミャウールがなんとなくで空を飛ぶなんてね。ふふっ。だからまあ外出はせず安静にしとくことね」

「…はい…お手数おかけします」


今日のことの後始末はお母様に任せて、私は部屋に戻り、『メインストーリー』と書かれた例の日記を読み進める。

ちなみに日記とは名ばかりなので、私はお母様に手渡されて以降、一度も書き進めてはいない。

そういえばお母様と出会ってからまだ半年も経っていない。

なのにこんな風に誰も知人がいない世界で信頼関係が築けているのはすごいと思う。ヒロイン補正の機能でもあるのだろうか。



【第四話 アナザーストーリー〜メインストーリーのあらすじ〜】


『メインストーリー』

この日記は、私の未来期であった。

そして読むうちに、わりと序盤で気づいたのだが、本当は私がこの世界に来るのはもう少し早かったらしい。

というのも、先程少し言ったようにこれは転生モノの小説なのだ。そして物語の始まりは、転生者のヒロインがヒーローの姿を王子の成人祭で見かけ、恋をするシーン。

この記憶が寸分違わずミャウールの体に残っていて、周りの人に聞いても肯定の、事細かな馴れ初めの話を欠かさず聞かされるのだから、元のミャウールがどうやら私宛にメッセージを残していたことと、元のミャウールが『メインストーリー』をちゃんとなぞらえて生活していたことがわかる。

さて、この成人祭は『メインストーリー』では互いに15歳になった年に行われているのだが、私はもう17歳。もうすこしでクライマックスに差し掛かる年代だ。

なので私はいま急ピッチで『メインストーリー』を読み進めている。やっとクライマックスに突入したところだ。

「ミャウール!ミャウール!」

窓から声がする。

「オウレンね!」

私はもうこの『メインストーリー』という話のヒーロー役をしている第二王子オウレンと面識がある。私がこの世界に来た半年前以前からオウレンとは交際していたようなのだが、「変わったね。そういう事いうのも、俺、好きだよ」と言われてそれからそれ以上なにも聞かれることはなかった。

「ミャウール!オウレンだよ!」

「オウレン!いらっしゃい!綱をおろしてあげる。部屋に登っていらっしゃいよ!」

「わかった、いま行くよ!見ててくれ!」

ラプンチェルの物語みたいになんでもないようにテラスへ登ってくるオウレンは、ちょっとキザなところもあるけどやっぱり私自身も愉快な彼が好きになった。

「いらっしゃい、オウレン」

「やあ」

「どうしたの?今日は休みじゃないんでしょう?」

「ちょっと顔が見たくなってね」

「いくら王都から近いからって、無理はダメよ?」

「わかっているが」

オウレンは恥ずかしそうに目を逸らし、私の入れた紅茶を口に含む。

「そうだ、今日はマーケさんはいないのね?」

「ん。マーケの兄のメレードがいるだろう?」

「ええ」

「あいつが暇なら人手をよこせと言っていたのでやった」

王子周辺の護衛ってそんな簡単なものでいいの、だろう…か。

メインストーリー曰く、王子はやっぱり剣の腕もいいということだったが、ちょっと不安だ。

「ああそういえば、メレードが魔女を見たと騒いでいた」

「私も聞きました」

私は自分の器にも紅茶を注いで、ようやく席についた。

「ずっと伝説だと思っていたが、いるのだな、魔女は」

「ええ…」

そんな言い方されると返答に困ってしまうのだけど?

紅茶のおもてに視線を泳がせる。我ながらいい出来だ。

私がそれ以上なにも言わないので、しばらくの沈黙ができてしまった。

何か話そうかと思っていると、ちょうどよくオウレンが、そういえば、と言う。

「そういえば妖精の話は知っているか?」

「いいえ。妖精ですか?」

「ああ。夜空に未来を描くという西の妖精。陽が沈み出した時、西へ向かって歩いていくと妖精に会えるらしい。もっともこれも逸話だが」

「いいですね、妖精。私も伝説としてしか知りませんが」

「そうだろう、私もこの話を叔父上に聞いたときには驚いた」

「ふふふっ」

妖精…。

そんなファンタジーに欠かせない存在を、メインストーリーには登場させないでいたのか?もっとも魔女も今のところ見つからないが。

私は元のミャウールの日記『メインストーリー』の内容を思い返す。

「……なあ…」

「はい?」

オウレンの囁くような声に返答する。

「ミャウールの本は光るのか?」

「光る?なにをおっしゃって…」

光っていた。

『メインストーリー』の本が光っていた。たしかに私は薄暗い本棚の裏にしまっていたというのに。

オウレンが立ち上がった。

「開けてもいいか?」

「え、いえ!私が取ります」

ミャウールの頭はフル回転していた。

私が異世界人であることを、オウレンにも話さなければいけないのだろうか。そしたらオウレンは何という?幻滅する?何でもないよと言ってくれる?

ああでもまずはこの本を読んでくれとも言わないかも…。

いやそれはきっと無理。私の本だからここにあって、しかもそれが目立つように光ってるんだもの。好奇心の強いオウレンには無理な話…。

そうだ、ええ、そうよ。

「まあ、この本だったんですね」

私は『メインストーリー』を手に持って呟いた。

『メインストーリー』の後半半分が光っている。そして心なしか厚く重くなっているような…。

開けますね、と言うとオウレンは私の手をじっと見つめている。

後ろの方を開くと、光の量がだんだん少なくなっていく。

「これは…」

「オウレン」

私はオウレンの言葉よりすこし早く語りかけ、作り話をかいつまんで話した。

「私、この文字が読めなくって。たまたま書店の舶来品売り場で見つけて買ったんですが…」

「そうか。残念だ。翻訳家を呼ぼうか?」

「いいえ、お母様に頼んで私の方で頼むわ。心配しないで。上手く解読ができたら一番に教えるわ」

「ああ。頼む」

私は開いていたページに近くにあったペンを挟み、本を机の上にそっと置いた。

「そうだ、今日はいつまでいられるの?」

「ああミャウール、笑いが今日はあと数時間しかいられない」

オウレンは現国王であるお父上と夕食を食べるのだと言っていた。

「そう、よかったわね」

私たちはこうしてこの一時間、他愛もない話をした。今日あったこと、何が楽しかったか、誰が結婚した、何の勉強をした、誰がつまずいた、誰がかけそうになった。なんな滑稽な話もしたりした。

「じゃあね、オウレン」

「またね、ミャウール」

オウレンがさっき来たように綱を伝って帰っていく。

王子様なのに申し訳ないくらいの扱いだが、お母様は不純と言って一度も部屋に上げることを許可してくれたことがない。

「なんにもないのにね」

こういうところだけはお母様の勘も弱くて上手くごまかせるので助かっている。その代わり見つかったら、芋づる式にこれまでの事がバレて、しばらくオウレンと合わせてもらえなくなるかもしれないが。

ああ怖い怖い。



【第五話】


「さてと」

私は一声を出して、机に肘をついた。

『メインストーリー』の後半部分に現れた、『サイドストーリー』なる文字に目を通していく。


「っつ…あーーー!」

肩が痛い。

ボキッボキッ…

肩が嫌な音を鳴らす。

「っつったー。…ふぅ」

話の終わりが見えてきたというのに、集中力の途切れが目立つ。

今わかっているのは、『メインストーリー』のクライマックスで覚醒し、ヒロインが世界を救ったと農夫に言わせていたシーンが、実は魔女として覚醒していたのだと分かるシーン。

うーん、上手くいえないけど、覚醒した力は魔女の力であったらしい。


その魔女の力というのが、書き分けると以下の通り。


まず攻撃魔法。一度使うと十日と半日寝込む大魔法だが、これで一刻を燃やし尽くすことができる。

次に回復魔法。こちらは傷を治すことに長けているが、一度の服用でも精神に多大な被害を与える中毒性を持つ。


一言で言うと、おそろしい力だよね。人をすごく不幸せにする力。

とまあそこまで読みましたと。

「あともう少し…」

そうやって騙し騙し読んでいってなんとか今日中に読み切れる予感がしてきた。

「やっと読み切ったー!」


最後の内容はざっとこんな話だった。


さっき言った魔女の力。その二つの力で、『メインストーリー』という少女漫画的な話では、我が国が圧倒的に勝利し、自ら前線に赴いた勇敢な王子オウレン(実際にこう描写されていた)ともども脳を支配し、逆ハーレムのフラグが誕生する。

そうして世間の人々はミャウールをこう呼ぶ。破壊の魔女、と。


個人的な感想としては、「ちょっと遠慮させていただきたい」というのが正直なところ。物理破壊も精神崩壊も見ていて楽しいものじゃないに違いない。

「もっとこうさ、みんなでウィンウィンになれる話はなかったわけ?あーこうしてる間にも何か対策考えないとな。今朝の感じ、もう覚醒してるもんな。クライマックスじゃ19歳の卒業間近なところを、まだ私17歳なのに」

あんな破壊力のある力を、ただの空を飛ぶことに使ってるなんて、なんだか申し訳ないような。

「違うよ!人が死んでないんだからいいじゃない」

そして裏表紙裏に書かれた一行。

『サイドストーリー〜ゲームシナリオ第二十二稿〜』

「あ、そんな力入れて描かれたたんだ、この話」

ちょっと呆気に取られていたというのに、唐突にまぶたが落ちてきた。

「うぅーんっ…ふぁあ!っと寝るとしますかっ」

何時間読んでいたのだろう。もうとっくに陽が上っている。

そのまま深い眠りについて、陽が高くなっているのを確認したが、どうやら誰も部屋に来ないようで助かった。

「誰もいないけど、おはよう」

ミャウールはベッドから顔を出して、『メインストーリー』の今直面しているシーンを読み返す。

「それにしても両極端過ぎるのよね。回復なら回復!攻撃なら攻撃!もっと効力が低くて両方使いってだけでもチート級なのに、なによこの馬鹿げた力は。覚醒って名前がついても持て余すわよ、こんなの、片方だけでも」

誰に向けてでもなく───否、日記に向けてミャウールは毒づいた。

「私はねっ!みんな!笑って!ウィンウィンのっ!世界ってのに!憧れ!てん!のよ!…はぁ…」

ベッドの上に放った日記に枕を叩きつけるので、埃が舞っている。

「そうよ、せっかくない世界なんだからなにもヒロインが手を汚すこともないじゃない。ラスボス断罪イベントもなにも、悪役のちゃちな渾身の嫌がらせも前なのに」

何を隠そう、本来ならミャウールの力が覚醒するのは悪役の中でもラスボス級、ということでミャウールがラスボスと称するメレドの暴走を止めるときなのだ。

「なににせよ、メレドの呪いが完成してなんとかいうドラゴンの覚醒するまで二年とちょっと。待っていられない」

ミャウールは日記を再度ベッドに叩きつけた。

「そうよ、誰が破壊の魔女なんて愚称号を受け取るもんですか!こうなったらオウレンの言ってた夜空に未来を描くという西の妖精にでもなんでもすがって聖女になってやるんだから」



【今後のあらすじ】

ミャウールが西の妖精へ会いにいく。

試練(?)にクリアして、なんとか頑張る。


あとは流れに任せる。←書く意味ないですよね、すみません。



こちらは作者としては珍しく、作成時、タイトルより半分より前に描いたものですが、こちらの方がただしいシナリオと思うので付属します。

【今から描くあらすじ】


とある『メインストーリー』なる小説と『サイドストーリー』なるゲームシナリオをひと通り読み終えたミャウールは、現在在籍する学園で、一年後にクライマックスとすぐ先のエンドロールに向けて魔女の力を覚醒すると知った。

しかし、ミャウールはおてんばが転じて、既に力を覚醒している。そしてその力が両極端であることを確認するのだ。

まず攻撃魔法。一度使うと十日と半日寝込む大魔法だが、これで一刻を燃やし尽くすことができる。

次に回復魔法。こちらは傷を治すことに長けているが、一度の服用でも精神に多大な被害を与える中毒性を持つ。

この二つの力で、『メインストーリー』という少女漫画的な話では、我が国が圧倒的に勝利し、自ら前線に赴いた勇敢な王子オウレン(実際にこう描写されていた)ともども脳を支配し、逆ハーレムのフラグが誕生する。そして実際、ゲーム版ではそうなる。


この魔法、という力はこの世界ではみとめられていない力なのだが、国家戦力にすっごーく役立つので重宝される。

なのでミャウールは今、一途な第二王子様、オウレンと熱々交際中だ。

夜空に未来を描くという西の妖精、メレダに聖女ルートを依頼する。聖女として人々を助ける役をかいたいのだ。

そしてなにより私はオウレンだけで十分だと、強く思っている。

ラスボスのメリドと西の妖精メリダが似た名前なのは変換ミスではない。ただしどういう関係なのかは今後のお楽しみということで。

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