表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/40

第30話 初めての魔法

(うーん、【魅了攻撃】が微妙にいらないかも……? 正直このスキル、あまり使う気になれないんだよね……)


 敵モンスターを魅了状態にして他のモンスターと戦わせるのは確かに強力なんだけど、後で自分のために戦ってくれたモンスターを自分の手で処理するというのがとても悲しいのだ。かといって処理しないと付いてくるのでそれも困る。


(間違って人間に当たったらとんでもないことになるし、今のうちに売っておこうか)


 僕はそう思ってスキル店を後にし、バルロさんが言っていた二軒隣にあったスキル買い取り屋へ入った。


 スキル買い取り屋は店としては広くなく、カウンターに店員らしき男の人が一人いるだけだった。


「……いらっしゃい。スキルの買い取りですか?」


「は、はい、そうです。【魅了攻撃】っていうスキルなんですが……」


「【魅了攻撃】ですね……、それならこの価格になりますがよろしいですか?」


 店員の人はそう言って用紙にさらさらと買取価格を書いた。価格は最初に【魅了攻撃】を買ったときよりもだいぶ安かったけど、僕はそれで了承した。


「それでは、こちらの紙の上に手を置いてください」


 店員の人はそう言って、特に何も書かれていない紙をカウンターの上へと出した。僕は言われたとおりに紙の上に手を置く。すると、店員の人は僕の手を包むように両手を掲げた。


「――【スキル抽出】、【魅了攻撃】」


 店員の人がそう言うと、僕の手と紙が光り、紙に何やら紋様が刻まれていく。最初は何も書かれていなかった紙が、あっという間にスキル店で売られているスキル書へと変わった。


「はい、これで終わりです。では、こちらがスキル買い取りの代金になります」


 そう言って店員の人は僕に代金を差し出した。僕はそれを受け取ると、スキル買い取り屋を後にした。後で自分に【識別】をかけてみると、確かに【魅了攻撃】のスキルはなくなっていた。


(よし、これでスキル関連の用事は済んだかな……。あとは…………やっぱり、魔法かな)


 ……もともと僕はこの世界に来るまでは魔法というものにそれなりに憧れがあった。だけど、この世界に来て初めて魔法を使ってからというもの、魔法はあまり好きではなくなった。すべての原因は最初の試練での重力魔法のスクロールだ。未だにあのブラッドゴブリンが押しつぶされていく光景は脳裏に焼きついてるし、自分に魔法を制御できる自信もない。


 例えば炎系の初級魔法を使ったとして、それで辺り一面が焼き尽くされて、それに他の冒険者が巻き込まれでもしたらとんでもないことになる。ミサキとかセネリーが近くにいたらそんな魔法は絶対に使うわけにはいかない。


 ……そんなわけで、僕には自分である程度コントロールできるスキルの方が遥かに安心感があったのだ。


(ただ、魔法も使いこなせれば便利なのは確かなんだよな……。いい機会だし、回復魔法あたりを覚えて練習しようか……)


 回復魔法、あるいは補助魔法なら多少威力をコントロールできなくても大惨事にはならないだろう。それで徐々に魔法に慣れていけば攻撃魔法の威力もコントロールできるようになるかもしれない。


 ……僕は魔法を覚えることを決意し、遂に初めて魔法を覚えるために魔法店エスタルーンへと向かった。



 かなり久しぶりにエスタルーンへと入ると、僕はすぐに回復魔法のコーナーへと向かった。様々な回復魔法の魔法書があったけど、僕はその中でも特に初級のものを手に取った。値段は初級ということもあってか、かなりお手頃だった。


「……ひひ、お客さん、回復魔法をお探しですかな?」


 すると、いつの間にか隣に怪しげな老婆――もとい、エスタさんが立っていて僕に話しかけてくる。僕は少し顔を引きつらせながら返答をした。


「は、はい、そうです。えっと初心者用のを探していて……」


「ひひ、なるほど、初心者用ね……。それなら確かに、今お客さんが手に取られている【キュアル】が最適でしょうな。効果は低めだが、そのぶん魔力消費も少ないし、駆け出しの冒険者にはうってつけです」


「そ、そうですか」


 どうやら僕の選択は間違ってはいなかったらしい。エスタさんは薄ら笑いを浮かべて、さらに話を続けた。


「ひひ……ただですね、お客さんもご存知かもしれないですが、【キュアル】だけだと状態異常は治せないんですよ。回復魔法を覚えるなら、ダメージを回復する魔法と状態異常を回復する魔法をセットで覚えるのがオススメでしてね……。失礼ながら、お客さんは状態異常を回復する魔法をすでに習得済みで?」


 エスタさんはそう言って僕を見た。


「えっと、まだ……覚えてないですね……」


 僕がそう言うと、エスタさんはニヤリと笑った。あ、これは絶対、状態異常を回復する魔法をセールスされるなと僕は思った。


「ひひ……であればですねぇ、これ、【エスリク】という魔法なんですが、これがおすすめですよ。状態異常を回復する魔法で、レベルが低いうちは治せる状態異常も限られるのですが、レベルが上がれば様々な状態異常を治せるようになるんですじゃ。お仲間の方が毒とか麻痺になってもこれさえあれば大丈夫……ひひ……」


 エスタさんはそう言って、棚から【エスリク】の魔法書を取り出した。僕はちらっと値札を見たけど、【キュアル】に比べると相当な高値が付いていた。買えなくはないけど、買うと今は結構お金が入ってる僕の財布が即すっからかんになるだろう。


(うーん、どうしようかな……。確かに状態異常を回復する魔法は便利だと思うけど、今買うべきか……)


 僕はかなり悩んだ。ただ、これからのことを考えると、今覚えておいて損はないかもしれない。僕の今のレベルなら、多分ほとんど全ての状態異常を治すことができるだろう。仲間が状態異常になったときに備えて覚えておくのはありだと思った。


(確かミサキもセネリーも状態異常を回復する魔法は覚えてなかったような気がするし、それなら僕が回復役になってもいいかも)


 僕は心に決めた。


「あ、じゃあ、それも買います……」


「ひひ……お買い上げですね。毎度ありがとうございます。……あぁ、言い忘れましたが、【エスリク】は結構、魔力消費量が大きいので気をつけてくだされ。特に重い状態異常を治す時は魔力を全消費することもありえるので……ひひ……」


 エスタさんはそう言って薄ら笑いを浮かべた。……魔力全消費と聞いて僕はちょっと身構えたけど、よくよく考えてみたら僕はレベル300あるし、多分魔力も相当あるので全消費まですることはないんじゃないだろうか。エスタさんは、きっと僕がレベル10ちょっとぐらいの駆け出し冒険者だと思って話をしているだろうなと僕は思った。


 その後、僕は【キュアル】と【エスリク】の魔法書の代金を払い、そのまま店内で魔法を習得した。僕は自分がちゃんと魔法を覚えたかどうか確認するために、自分に【識別】を使うことにした。


 エスタさん曰く、【識別】は自分に使う場合に限り、自分が習得している魔法も表示してくれるらしい。ただ【識別】は他人に使っても相手が習得している魔法はわからないのだとか。そういう意味では魔法はスキルと違って【識別】で相手に悟られない分、有利かもと僕は思った。僕は自分に【識別】をかける。



【識別結果】

 レベル:372

 スキル:【識別】【受け流し】【魔力障壁】【具現化:弓矢】【弓使いの心得】【魔力の矢】【毒耐性】【麻痺耐性】【睡眠耐性】

 魔法:【キュアル(ダメージ回復)】【エスリク(状態異常回復)】



 …………弓使いな後衛ヒーラーかな?


 なんだろう、なんていうか全体的に地味な気がする……。やっぱり攻撃系の強いスキルがないのがちょっと華に欠けるような……。というか僕のメイン武器は一応、剣なのに剣関係のスキルが【受け流し】しかないってどうしてこうなったの。


(でも、剣で衝撃波出すみたいな攻撃スキルってびっくりするほど値段が高かったからなぁ……)


 先立つものはなんとかというやつだろうか。僕はお金をためていつか剣関係の強いスキルを覚えようと心に決めたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ