第29話 耐性スキル
後日、僕は街のスキル店に来ていた。もはや顔なじみになっているバルロさんが声をかけてくる。僕はそれを「あ、今日は大丈夫です……」という感じでかわすと、スキル店の耐性スキルのコーナーへと向かった。先日のマンドラゴラ狩りでは耐性がなくてひどい目にあったので、いくつか耐性を得ようと考えていたのだった。
耐性スキルは毒や麻痺、睡眠、幻覚など色々あった。値段も手頃で予算的には複数買っても大丈夫だった。マンドラゴラ狩りの報酬がとてもよかったので、資金的にはだいぶ余裕があるのだ。
……とはいっても、さすがに耐性スキルに全財産を費やすわけにもいかないので、とりあえず特に受けるとまずそうな毒と麻痺、睡眠の耐性スキルを買うことにした。
すると、いつの間に隣にいたのか、バルロさんが話しかけてきた。
「毒、麻痺、睡眠の耐性スキルか。もしかしてダンジョンで毒を受けて慌てて耐性スキルを買いに来た感じかな?」
バルロさんはニコニコしながら言った。……完全に図星だった。僕は少し恥ずかしい気持ちになりながら答えた。
「ま、まぁそんなところです……」
「耐性スキルはいいよ~。例えば【毒耐性】があれば、相手の毒攻撃は効かなくなるし、トラップで毒霧を食らっても平気だし、その辺の毒キノコを食べても問題なくなるからね! しかも耐性スキルは精神力を消費しない! もう、これは冒険者必携といってもいいと思うな」
「それは、すごく便利ですね……」
【毒耐性】があれば、解毒薬とかダンジョンに持ち込む必要なくなるよねと僕は思った。
「――ただ耐性スキルには気をつけるべき点が一つある。それはなんだと思う?」
そう言ってバルロさんは少し真剣な顔になってこちらを見た。……気をつけるべき点? うーん、なんだろうか……。僕は少し考えたけど全く思いつかなかった。
「全然思いつかないです……」
「ふふ、簡単なことだよ。耐性スキルはね、『耐性スキルを無効化するスキルによって破られることがある』んだ。例えばいくら君が【毒耐性】を持っていたとしても、僕が【爛れる毒の雨(毒耐性無効)】みたいなスキルを使ったら、君は毒を受けてしまう」
バルロさんはそう言った。……なるほど、そういうことか。各種耐性を貫通するスキル……そういうスキルがあってもおかしくはない。
「ランクが低いダンジョンにはそんな耐性を無効化するスキルを持ってるモンスターはほとんどいないんだけどね。ランクが高いダンジョンにはそういうスキルを持ってるモンスターもいるから要注意だ」
バルロさんはそう言ってウィンクをする。……僕はそこでふと思った。耐性を無効化して、かつレベル差にも依存しないような状態攻撃スキルはあるのだろうかと。
「あの……耐性もレベルも全て無視して相手を毒状態にするスキルとかあるんですか?」
すると、バルロさんはうーんと唸る。
「耐性もレベル差も無視する状態異常攻撃? 片方ならよくあるけど、両方を無視するスキルは聞いたことがないなぁ。少なくとも僕は今まで見たことがない。あったとしても相当レアだと思うよ」
バルロさんはそう言った。……僕にとってはそれは良い知らせだった。もし両方を無視するスキルがないのなら、レベル300超えの僕が【毒耐性】を覚えたら毒攻撃を受けることはまずないからだ。【ゲラングス】のようにレベル差を無視してきても【毒耐性】があれば毒は防げるし、逆に【毒耐性】を無視してきても効果がレベル差に依存するなら僕のレベルは300あるから相手が低レベルなら毒の効果はすぐに打ち消される。
「というかレベル差も耐性も完全無視できるって、それってほとんど反則級のスキルだよね。だってこっちがレベル1で相手が耐性のあるレベル100でも毒とか麻痺とかにできるんだからさ。まぁそれだけ精神力の消費が激しいのかもしれないけど」
バルロさんはそう言って肩をすくめた。確かにその通りだと僕は思った。ゲームだってボスみたいな敵には基本的に状態異常は通用しない。この世界はゲームとは違って現実だけど、現実ならなおさらそんな世界のバランスを壊しそうなスキルは存在しないだろう。……まぁそれは僕の推測にすぎないことではあるけど。
(ま、何にせよ備えあれば憂いなしってね。レベル300超えの僕が耐性スキルを身につけたら、とりあえずは毒や麻痺になることはないでしょ!)
僕はそう思いつつ、毒と麻痺と睡眠の耐性スキルを購入することをバルロさんに伝えた。
スキル書を受け取ると、さっそく店内でそれぞれのスキルを習得し、確認のために自分に【識別】をかけてみる。
【識別結果】
レベル:372
スキル:【識別】【魅了攻撃】【受け流し】【魔力障壁】【具現化:弓矢】【弓使いの心得】【魔力の矢】【毒耐性】【麻痺耐性】【睡眠耐性】
……うん、ちゃんと習得しているみたいだ。それにしてもスキルが全部で10か。我ながら結構覚えたなぁと思う。
すると、そこにバルロさんがやってきて僕に言った。
「もう結構スキル覚えたでしょ? もし取得スキルが増えてきて、このスキルいらないなぁって思うことがあったら、スキルの売却も考えてみるといいかもね。ちょうどこの隣の隣の店でスキルの買い取りをやってるから、興味があったら行ってみるといいよ」
なるほど、スキルは売ることもできるのか……。僕は自分の取得済みスキルを見て少し考えた。




