第16話 新クラン名決定!
その日、僕たちは三人で新しくクランを結成したということで、ちょっとした懇親会を開くことになった。クランの名前が未定なので懇親会ではクラン名も決める予定だった。
夜も更けてきた頃、クラン本部として使うアパートの一室で僕とミサキ、セネリーは片手にお酒の入ったコップを手にしながらテーブルを囲んでいた。
「そ、それじゃあ新しいクラン結成を祝って、か、乾杯……」
なぜか乾杯の音頭を取るように二人に言われた僕は、そっとコップを掲げた。
「……かんぱい」
「ふふ、この杯を新たなクランに捧げる……」
……いまいち噛み合っていない感じがしながらも三人での懇親会が始まった。僕は正直本当にこれでよかったのかなぁと思った。やはり三人だけのクランだとどうしてもこの先が不安になる。セネリーも最近ランク2になったばかりということだし、みんな冒険者は初心者みたいな感じなのだ。
「……そう言えば前から気になってたんだけど、ミサキのその眼帯はファッションなのかい? それとも怪我?」
少し酒が入ったのかセネリーがズケズケと聞く。ミサキの眼帯については正直僕も気になっていたのでセネリーが聞いてくれてよかったと思った。セネリーの質問に対してミサキは特に顔色一つ変えることなく答える。
「……けが。商隊護衛の仕事をしているときに盗賊にやられた」
ミサキはそう言って肩をすくめる。
「そうか、それは気の毒に……。最近は物騒な世の中だからね。私もついこの前クランを追い出されたばかりだし……。人生なかなかうまくいかないものさ」
そう言ってセネリーがごくごくとぶどう酒を飲む。僕はセネリーが酔っ払う前に新しいクラン名を決めようと思った。
「あ、あのさ、新しいクラン名についてなんだけど、どうしようか? 二人は何かいい案ある?」
「……私はなんでもいい」
ミサキが興味なさそうな顔をして言った。
「うーん、そうだな……。私としては絶対『カオス』の文言は入れたいね! 『カオスの求道者たち』とかどう?」
セネリーが得意げな顔をして言った。僕は普通にそれはないと思った。カオスの求道者って明らかに怪しい集団の匂いしかしないんですけど……。
「それはダサすぎ」
ミサキがすかさずダメ出しを入れた。
「えぇ!? さっきなんでもいいって言ったじゃん! それじゃあ代案を出してよ代案を!」
そう言ってセネリーはテーブルをバンバン叩く。
「………………じゃ、じゃあ、『迷える子猫たちの会』……とか」
ミサキは少し小さな声でそう言った。……猫……かぁ。猫とか好きなのかな。
「……なんかすごく弱そうなんだけど」
「そ、そんなことない!」
「だいたいさ、そもそも迷える子猫とか全然冒険者っぽくないじゃん? 凶悪なモンスターが徘徊する未知のダンジョンに挑むのが冒険者だよ? 子猫ちゃんなんてお断りでしょ」
セネリーがそう言ってやれやれと言った顔をする。
「!! ち、違う!! 別に子猫だって強いから!! というかカオスなんて意味不明な言葉を使うあなたよりよっぽどマシなんだけど!」
「な、なにおお!」
その後、二人の間でよくわからない論争が続いた。セネリーはカオスとか暗黒みたいな中二病的ワードにこだわり、ミサキは猫とか迷子みたいなふわふわした感じのワードにこだわった。……これからこの三人でクランを運営していくわけなんだけど、最初からこんな感じで大丈夫なんだろうか。
僕はそう思いつつ、頑張って場の雰囲気を和やかにしようと努めていた。
……結局、新しいクラン名については揉めに揉めてなかなか決まらなかった。僕は無難に三人の名前を取って『ユミセネ冒険者協会』とか『ユミセネ団』といった案を出したけど、二人には速攻で却下された。「普通に地味すぎるbyセネリー」とか「ユミセネという言葉が意味不明byミサキ」とかボロクソに言われて、僕は正直グサっと来た。
「……あーもう、これじゃあいつまで経っても決まらないよ! もうこうなったらみんなこれだけは絶対に入れたい!って言葉だけ出して、それをくっつけたものにしよう。多少変なのになってもいいからもうそれで決定で!」
しびれを切らした僕はそう二人に提案した。
「……わかった」
「りょーかい」
二人は僕の提案を了承した。
「じゃあ、『いっせーのーで』で行くよ? ……いっせーのーで!」
「カオス!」
「ねこ!」
「団!」
…………。
この時を持ってして、新しいクランの名前は『カオスねこ団』になった。さらに新クランのリーダーも決めることになったけど、ミサキが「絶対パス」と言い、セネリーが「そういうの私に務まると思う?」と言ったので消去法的に僕になった。
僕は正直リーダーなんてやりたくなかったけど、このメンバーだとそんな僕ですら僕がやった方がいいかもと思うほどだったので渋々やることにした。
(なんだろう……この世界に来てからというもの、僕の負うべき責任が加速度的に増していっている気がする)
僕は自分が普通の高校生活を送っていた現代がどんどん遠くなっていくのを感じた。




