第13話 三大クラン
後日、僕は『クラン』を見て回ることにした。クランというのは同じ志を持った冒険者の集まりで、最初の試練に合格した新人冒険者は基本的にどこかのクランに所属するのが暗黙の了解となっているらしい。どのクランにも所属しないというのも制度的にはできるようだけど、冒険者ギルドの人は最初はクランに所属することを強く勧めていた。
(まぁ普通に考えて、クランに所属した方がパーティも作りやすいし、他の冒険者から助言も得られるだろうし、メリットだらけだよね)
僕はレベルだけはかなり高いけど、モンスターとかダンジョンとかスキルについては知らないことが多いし、とてもじゃないけどソロプレイなんてする勇気はない。どこかのクランに所属して、あまり目立たずに生きていこうと思う。
そんなわけで今日、僕はこの街の『三大クラン』と呼ばれる三つの主要なクランを順番に訪れることにしたのだった。三大クランはそれぞれ、『獅子の牙』、『白銀騎士団』、『這い寄る者たち』という名の大規模なクランだ。
この街では、冒険者になってすぐに三大クランのいずれかに所属することが王道らしく、冒険者ギルドの人も新人冒険者には三大クランへの訪問を積極的に推奨していた。もちろん、全員が全員、三大クランに所属するわけではなく、他の中小クランに所属する冒険者もたくさんいるらしい。
僕は手始めに、現在最も勢いがあるという『獅子の牙』本部へと向かった。
獅子の牙の本部はとても大きな建物で、たくさんの冒険者が建物内を闊歩していた。僕は受付でクランの見学の許可を得た。さっそく、その辺の獅子の牙所属の冒険者に話を聞いてみる。
「……なに、獅子の牙について? あぁ、君は新人か。そうだな、獅子の牙は基本的には努力、友情、勝利!って感じのクランかな。結構熱い人が多いよ。先輩からの面倒見もとてもいいと思う」
「獅子の牙は最高だぜ! 元荒らくれ者の俺でさえ歓迎してくれたんだからな! クランマスターは最高の男だ。男の中の男って感じだよ!」
「世の中、だいたい気合と根性でなんとかなるんだよ! どんなモンスターだって、どんなダンジョンだって俺たちが必ず突破してやるのさ!」
……何人かに話を聞いてみた結果として僕が思ったのはただ一つ。獅子の牙は熱血系の集団だということだ。訓練場を見てもみんな「うおおおおお!」とか「はぁああああ!」とか叫びまくりだ。近接戦闘系の人はもちろん、魔法系の人でもみんな叫んで魔法を撃っている。ポーションの飲みっぷりもすごい。みんなゴキュゴキュ飲んでぷはーって言ってる。……スポーツドリンクか何かかな。
(うーん、みんないい人だと思うけど、あまり馴染める気がしないかも……)
僕はどちらかというと熱いというよりは冷めている方だという自覚があったので、獅子の牙はないかなと思った。もっと普通な感じのクランを選ぼうということで、僕は獅子の牙本部を後にした。
次のクランは『白銀騎士団』だ。名前からしてちょっと僕には似合わないと思ったけど、実際に訪れてみないとわからない部分もあると思ったので、僕はとりあえず訪れてみることにした。
白銀騎士団の本部は街の中心近くにあり、建物は獅子の牙と同じくらい大きく、荘厳な外観だった。内部もちょっとした貴族の屋敷という感じでかなり高級感があった。
僕はさっそく受付に行き、見学の許可を得る。ちょうど、何人かの騎士のような鎧をつけた人たちがロビーで休憩していたので話を聞いてみる。
「何? 白銀騎士団について教えてくれって? いいだろう。まず、白銀騎士団が最も重視するのは高潔さ、誠実さ、そして正義だ。騎士団員は冒険者でありつつも、社会正義の実現を目指す騎士でもあるのだ。どうだ、素晴らしいだろう?」
「ダンジョンもモンスターもみんなそれぞれ特性がある。その特性にうまく対処して効率よく乗り切っていくのが僕たちのやり方さ。何事もスマートにね」
「獅子の牙? おいおい、僕たちとあんな脳筋集団を一緒にしないでくれよ。彼らは何でも気合と根性さえあればどうにかなると思ってる。非合理極まりないよね。それに獅子の牙ってクランマスターからして何か暑苦しいからね。あんなとこよりうちの方が断然いいよ」
何人かの騎士団の人から話を聞いた限りでは、みんないい人だったし印象は悪くなかった。ただ若干、プライドの高さというかエリート感がにじみ出ている点が気になった。まぁ白銀騎士団という名前の時点でそんな気はしていたけども……。
中庭にある訓練場を見学すると、獅子の牙とは対照的にみんな静かに訓練していた。近接戦闘系、魔法系の人も多いけど、神聖魔法を使う神官っぽい人も多くいた。ポーションの飲み方も上品で爽やかな感じだった。
(うーん、白銀騎士団も人は悪くないけど、全体的に気品が溢れすぎてるんだよね……。僕みたいな庶民は場違いかな……)
とてもじゃないけど、僕には騎士という称号は相応しくない。エレガントさなんて庶民出の僕には全くないのだ。僕はそう思いながら白銀騎士団本部を後にし、最後のクランへと向かった。




