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異世界転移……?

 ――さて、この物語を読んでいる皆さんには、将来を共にすることを約束したパートナーは居るだろうか。初恋の相手は? 一目ぼれした女の子は? もし貴女が女性なら、死ぬほど愛している男性は? 居ても居なくても、異性との関わりを心のどこかで欲しているのではないだろうか。


 そんな皆さんなら、子供の作り方ももちろん知っているだろう。オブラートに包み隠さずに言えば性行為――セックスという呼び方が最も一般的なのではないだろうか。


 もちろんこの物語の主人公こと俺――沢渡シンも、セックスのことなら1から10までどんと来いだ。思春期男子に相応しく、朝から晩まで健全なことばかり考えている――初体験はまだなのだが。そんな俺の性知識は、おそらくこの日本で1位か2位を争える程度には豊富だと自負している。いやおそらくではない。絶対だ。何故なら。




 ――この日本では彼氏彼女、結婚、セックス――妊娠という概念すら、消え失せてしまっているのだから。






 「――であるからして、この日本国は2つに分けられ、東京を境として旧関東地方北部、東北地方、北海道地方に女がニッポン国を築き、そして東京以南に我々男が日本皇国を――」

 

 歴史の授業はいつだって退屈だ。この国が、女と男で全面戦争をして2つに分かれた――なんてくだらないことを何回も教師が教壇で喋るだけ。いやまぁ史実なのだが。


 「はぁ……」

 「おい沢渡! 聞いとるのか! 今の授業の内容言ってみろ! 」

 禿げた頭が目立つ中年教師が俺に怒鳴りつける。セックスのやり方も知らないおっさんが、と言い返したくなる衝動を必死に抑え、俺は起立してくそったれな史実を答える。


 「2340年に勃発した男女内戦によってこの日本は女のみを国民とするニッポン国と、男のみを国民とする我々の日本皇国に分裂しました。現在は冷戦状態にありますが、我々は必ずニッポン国の悪しき女どもを滅さなければなりません」

 マニュアルを読み上げるように正解を述べると、不満げな顔で座れと命令された。



 俺が何故現状に不満を感じているのかを説明するには、1か月前の出来事から説明しなければならない。2019年のある日、俺は東京に住んでいるごく普通の高校2年生だった。いつものように高校へ通い、男友達と馬鹿をやったり、可愛い女子への下心を秘めて見つめたり――本当にありふれたいつもの日常だった。晩飯を食い、ベッドに寝転んでスマホをいじっている間に眠りにつく――。


 ――翌朝目覚めると、そこは知らない誰かの部屋だった。気づけば服装もどこかの学校のジャージのような服に変わっていて、初めは誘拐を疑ったものだ。起き上がって部屋を見渡すと、妙に生活感に溢れている。まるでずっと俺自身が住んでいたかのように。枕と180度反対になっている寝相も、スリッパをベッドの近くに乱雑に脱ぎ捨てているのも。


 とはいえ全く見覚えのない近未来感漂う部屋を出ようとすると、金属製の扉がすうっと横にスライドして開いた。自動ドアという訳だ。しかしそんな小さなことに構っている暇は、あの時の俺には無かった。


 部屋を出た俺の眼前に広がるのは、一面ガラス張りの大きな窓。そしてその向こうには――

 「車が――飛んでる……」

 そこは俺が知っている、昨日まで住んでいた東京ではなかった。数えきれない程の車がビル群の間を規則正しい動きで飛び交い、そしてそのビル群の向こうには見間違えるハズもない――東京スカイツリーが天高くそびえている。

 

 まだ起き抜けで乾いた目に飛び込んでくる風景は、俺の眠気を一瞬で飛ばすには十分だった。

 「間違いない……これは……異世界転移だ……」

 これが俺の新生活の記念すべき二言目、そしてこの認識が間違っていることを俺はすぐに知ることになる。


 ――俺は、未来の日本。2519年の日本にタイムスリップしてしまったのだ。


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