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攫われ王女と絵画とうさぎ(4)

 ライナスが言ったとおり、塔からの脱出は次の日の夜になった。王は一日姿を見せずに準備は万端に整えられたが、いざ実行してみると、いつまでいっても地上などないように思えるほど、ロープでの懸垂降下は心身共に疲弊した。

 さすがに飛び降りれば無事ではすまない高さに、ロープを身体に結びつけ、先にするするとおろされる。腕力はさほど必要ではないが、宙に寄る辺なくぶらさがったロープにぶら下がるのは、姿勢を保持するだけで身体が強張る。地面についたときはよろめいた。

 教えられた通りに引くとあれだけ固く結ばれていたロープは嘘のようにするりとほどけ、するすると月夜の中にまた引きあげられていく。

 自分と違ってライナスは素早かった。どういう仕組みなのか、腰にぶら下げた金具にロープをひっかけてそれで調整し、するすると嘘のように簡単に降りてくる。降り立った彼を見ても疲労はまったくない。

 それでも及第点だったのだろう。素早くロープを外したライナスがねぎらいの言葉をかけてきたが、メイスは疲れた身体をだらりと弛緩させたままうなずいた。

 けれど疲労の色が多くを締めていた顔が、ぴくんと跳ねて目が鋭くなる。何かを紡ぎかけたライナスを制して、誰か来ます、というなり傍らの茂みに飛び込んだので、まだ気配は察せられなかったライナスもとりあえずそれに倣う。

 ザッザッと勢いよく近づいてくる足音が響いて、おや、というように意外そうな声がライナスの口の中で跳ねた。

「ほんとにきた」

 緊張が一気に漂ったが、次の瞬間、茂みの向こうに身を伏せていたメイスがはじかれたように立ち上がる。

「レザーさん」

「メイス!」

 全力で駆けてきたのか、やや息をきらして男は呼びかけに答えた。立つメイスを一瞥して大きな怪我はないと見て取ったのかほっとしたようだ。

「レザー」

 拍子抜けしたような顔でライナスも立ち上がると、その顔を見て相手はむうと苦い顔をしたようだ。一瞬、何かを迷うように少女と灰色の髪の男を見比べて、何故か舌打ちして行くぞ、ときびすを返した。

「レザー」

 すぐに並んだライナスが走りながら声をかけた。

「どこから現れたんですか」

「うるさい」

「グレイシアも来てますよ」

「知ってるよ」

「事情知ってますか?」

「知ってるよ」

「アシュレイに愛されまくってますよ」

「知ってるよ!」

「ついでに殴らせてくれません?」

「お断りだ!」

 うるさいコバエを払うように男が腕を振り回すと、笑いながらライナスが軽快に身を引く。じゃれあいにも似たやりとりをしていた二人は、急に足を止めた。白い髪の少女がシッと言って立ち止まったのだ。そのまま彼女は何かを探すように首をめぐらせる。

「どう――」

 しましたか、と聞こうとしたライナスを、男が乱雑に頭を叩いて続けさせなかった。メイスはそのまま夜のしじまに耳をすませて

「――悲鳴が聞こえます」

「どこからだ」

 白い指は、背にしてきた月光に輪郭を照らされ夜の中に屹立する塔を示した。ここで初めて男とライナスが顔を見合わせる。逡巡と停滞は長くなかった。

「お前ら、先に戻ってろ」

 俺なら顔がわれていないから、ときびすを返した男に、レザーさんと離れるとろくなことになりません、とメイスが続けて追いすがった。同じ道程を駆け抜けて戻った塔の入り口には、当然のように三人が集結していて、男が渋い顔を見せる。

「なんで」

「いや、僕は確かに顔を見られるとまずいので戻りますけど、とりあえずある程度は何が起こったのか把握しないと」

 じっと門の入り口に目を向けたままライナスが言う。男がため息をつく暇もなく

「――悲鳴が、大きく、近くなっています」

 その言葉に三人はとりあえず傍らの灌木に身を隠した。どんな耳してるんですか、と言いながらもライナスは少女を信用しているらしく、こくと横に首をかしげて「逃げたのが、ばれたかな?」

「……そんな声では――」

 瞬間、塔の入り口から黒い塊が転がり出てきた。一瞬何かわからなかったが、すぐにもがいて立ち上がったので人だと見分けられた。

 さらに続いて飛び出してきた二人目は、躓いたのか土に這う。うわあわうわあと意味のとれない狼狽の声をあげ、へっぴり腰で立ち上がって城の方へと走っていく。

 さらに次から次へと塔から人が吐き出されてきた。男と女両方の声が聞こえた。従卒や侍女、中には兵士もいる。誰もが慌てふためき我先にと駆け出している。耳に届くのは、聞いているほうも決して心やすらかとはいられない、極限状態の人間の金切り声だ。

「なんだ――?」

 尋常ではない様子で逃げていく人々を見やる。並んで駆けだしてきた二人のうち一人が、後ろから来た相手に押されて途中で転んだ。

 月明かりに地面で引きつった侍女の顔が明らかになり、共に出てきた侍女が引き返してその両手をとった。けれど、侍女はその体勢で凍りついたように動きをとめた。転んだ侍女が振り向いて悲鳴をあげ、立ち尽くしたままの仲間に抱きつく。その感触に我にかえって二人は互いの身体を引きずるようにして、城の方へと走り去った。

 塔からのっそりと一つの影が姿を現している。それまで出てきた人間とは違って、何かから逃げる様子もなく、動きは緩慢だった。

 茂みの中の傍観者は、はじめは特に異質なものを感じなかった。しかし塔の影から進み出て月光を浴び白々と浮かび上がった姿に、三者三様、息を呑んだ。

 現れたのは一人の男だ。青い絹の立派な仕立てだが、赤茶けた妙な模様を散らした服をまとい、ぶらりと下がった右手には抜き身のレイピアが下げられて、月光の中、どす黒い雫をぽたぽたと伝わせていた。もう片方の手には兵士のものなのか、武骨で特徴のない剣を柄ごと握っている。持っているものとあわせて見れば、服の妙な模様が誰かの返り血だとすぐわかる。男の存在はふんだんに血臭を漂わせていた。

 月光に浮かび上がる横顔は皺が目立たず、若く見える。浮かんだ表情は穏やかだった。けれどいくら彼の表情が狂気を語らずとも、恐れおののいて逃げ惑った人々の心底からの悲鳴、血塗られた刀身と返り血を見れば誰でもわかる。

「ミノス・ル・ジュ・アリー……」

 低い声で呟いたライナス・クラウドの声が、月の夜に遠く響いた。




 しばらく俺たちは慄然と国王その人の様子を見ていた。王はすぐにふらりと向きを定め、城の方へと歩き始めた。それを見て思わず俺は飛び出しかけた。

「レザー、ちょっと待って下さい」

 ライナスが咄嗟に肘をつかんで引く。

「んなこと言ったって」

「誰か来ます」

 呟いたのはライナスではなく隣のメイスだった。茂みの中からじっと固定されていた赤い瞳が、訝しげに細まった後、ハッとした。

「お師匠様」

 その言葉があんまり意外だったので、立ち上がりかけていた俺も思わずすとんと茂みに身を戻す。物騒な夜に浮かぶ白い月が、城の方から悠然と歩いてきた人物を照らし出した。

「嫌な晩だな、貴様などに会う」

 その言葉に、王は佇まいをなおして、丁寧と言っていい態度でコルネリアスに向かって身をかがめた。優雅で自然な動作は余念がない。真似しようと思ってもできるものではない。

「娘のアリアドネをご存知ないでしょうか?」

 答えない黒髪の魔導師の前で王は短いため息をはき

「どこへ行ってしまったのやら。また攫われてしまったらどうするのだろう。――子どもはいつも、親の心を知らない」

「誰も誰かの心など知りはせん」魔導師は答えてこちらも、は、と短く鋭いため息を吐いた。

「本当に嫌な晩だ。亡者ばかりが彷徨いだして死人の名前を叫んでいる。死人が死人を求めるな。だから余計に嫌になる」

 死人という言葉に、少し国王の顔が表情をなくした。憤怒や失望を表すよりも失われていく表情の方がぞっとした。

「……仰っている意味がわかりませんが」

「わかったらお前はここにいるまい」

 にべもなく言い切って魔導師はそれまで、友好的とまではいかないものの、硬化はしていなかった態度をがらりと変えた。冷たい軽蔑と怒りに頬をかすかに歪ませる。

「本当に、お前は変わらないな。吐き気がするほど昔のままだ」

 ざわりと俺の背筋と肩の辺りで何かが動いた。

「アリアドネはどこに?」

「死んだ」

 ぽろりと王の手からレイピアが落ちた。月がその表情を照らす前に空いたその手で顔を覆った。かわいそうに、と呻くような声が漏れる。

 そのまま王は止まるのかと思った。それほどそれまでの王は静かだった。しかしその予想を破り、顔を覆っていた手が突然動いた。鞘に収まっていた剣の柄をぐっと握り、抜きざまに両眼は鋭く狙いへと集中する。はたから見ていたからわかった。恐ろしく冷静な動きだった。

 次の瞬間、月下の舞台は次の場面に移っている。大きく身を引いて肩にぐっと力をこめる男を前に、黒髪の女魔導師は何もしなかった。肉を突き刺す音は頭の中でだけ聞こえた。

 実際のところ、その一瞬、音はなかったと思う。国王の右肩が大きく突き出されている。右足も大きく踏み出されて、肩から腕まで綺麗に一直線になる、お手本のような突きだった。

 握られていた剣は、肉を突き刺しその背中からもぐりこんだ刀身が再び飛び出ている。

 言葉もない。深々と突きたてる、剣を握る腕はそのままに、女魔導師の肩のあたりで、冷めた目の色で狂った王は低く呟いた。


「じゃあ、あなたが死んでください」





「お師匠様!」

 隠れていることも自分の立場も全て忘れて、茂みから跳ねるように立ち上がりメイス・ラビットが金切り声をあげた。俺もライナスもそれをとめなかった。それ以上に、呆然と見ていた。

 国王の握った刀身は黒髪の女魔導師の身を貫通し、月が浮かぶ向こうの夜へと突き抜けている。左胸を一突き。剣に縫いとめられた女は空を見上げた形で静止している。国王の顔は見えない。全てが凍りついている。

「お師匠様ッ!」

 メイスだけが凍らなかった。紛れもない悲鳴をあげて、茂みをかきわけて無我夢中で飛び出そうとした。次にその場に響いた声がメイスの身体をぴたりと凍らせた。

「くるな、鬱陶しい」

 どくりと心臓が鳴った。視界は動かせない。空を見上げた女がすっと手をあげて、髪をかきあげながら無造作に言った。

 そうする女の横顔もまた無造作に作られていた。自身で言ったように鬱陶しさも感じているようだ。

 女は対峙する王の向こう側の空、遠い何かを眺めていた。こちらではない。自分を刺した男でもない。女はまるきりその二つを無視して眺めていた。夜の虚空に、女にだけ見える何かがあるように。

 そうしてかきわけた髪を耳にかけると、コルネリアスは突然、身体をひねって膝を前に突き出した。それは驚きの目を向けていた国王の鳩尾に炸裂して、小さなうめき声と共にあっけなく崩れ落ちた。残っているのは剣と魔導師だけだ。

 国王が崩れた後、場の沈黙と停止はますますひどくなるだけのように思えた。女はもう少しだけ虚空を眺めて、そして、どこかの瞬間で虚空に見切りをつけたように、くるりとこちらを向いた。

 自分を眺めるこちらの顔を全てゆっくり視認したあと、タガが外れたようにコルネリアスがけらけら笑いはじめた。笑っているのに、まったくおかしそうではない。左胸から剣の柄をはやしたまま、どこまでもアンバランスに。冷めた目をしていた。深く深く刀身を飲み込んだ胸が、少し陥没しているように見える。

「おかしいか?」

 その言葉を呟き、胸から剣をはやした女が笑う。そして急な動作で右手を柄にかけ、一気に自分から刀身を引き抜いた。真っ白な刀身が月光によく映えた。服には小さな穴があいている。だけれど。血はない。どこにもない。

 俺の呟きを読んだように、女は俺の方を見た。

「そんなに気になるのか?」

 ゆっくり女が歩み寄ってくる。レザー、逃げたほうがいい、ライナスが小声で言った。だけれど動けなかった。悠然と俺の前に立って女は笑った。引き抜いた剣を掲げて今度はおかしく見えるように笑った。

「見せてやろう」

 言うなり自分の左腕に一閃させた。俺はその瞬間、臆病なことに目を瞑った。見てはいけないもの。これは目にしては決していけないものだ。

 ただ恐怖する。畏怖する。ただ息をするように自然に、俺の意思に反して瞼は開いた。悪夢とは違う。目を覚ましても、そこにいた女が視界に飛び込んできた。ざっくりと食い込んだ刃が離れても、腕も刀身も白いままだ。

「利き腕はどちらだ?」

 俺はかけられた言葉が、ろくにわからなかった。メイスが「右腕です」と囁くように言ったときも、わからなかった。

「――ッ!」

 答えたメイスが息を呑んだ。もう一度、剣が一閃した。魔導師だというのに女は当たり前のように剣で薙いだ。

 左腕に痺れるような痛みを覚えた。闇に血の水滴が丸く飛び散って、刀身にも血油が浮かぶ。ああそうだよな、きられたら、やっぱり血が出るよな、と俺は自分がやられたというのに、まるで馬鹿みたいにただ考えていた。

 隣で何かが動く。ライナスが飛び出してくるりと身体を反転させると、思いもよらないほど遠くに届く蹴りを女に繰り出した。たいていの奴はこれで間合いを狂わされる。ぎくりとするような見事な呼吸だ。けれど女は後ろに大きく飛びのいてそれから逃れた。

「レザー、呆けているなら、引いてください」

 ライナスの背中が言う。そうだな、とゆっくり頭の中で自分が動いた。斬られるのを黙って許容した。これでは馬鹿を通り過ぎて能無しだ。すぐに傷の具合を確認する。傷口を抑えた掌から血が溢れる感触がわかったが、そう深くは斬られていない。十分に動かせた。

 構えをとったライナスは自分から仕掛ける気はないようだ。当たり前だ。ライナス一人ならとっとと逃げていただろう。それでも奴が立ち向かっているのは、俺が呆けているせいだと思うと、ようやく思考と身体を完全に重ね合わせられた。

 しかし女魔導師もそれ以上、攻撃する気はないように見えた。ライナスをつまらなげに一瞥した後、

「貴様の血は必要ない」

 と言って剣を逆手に深く地面に突き刺した。戦闘の意思がないことを示す態度か。いやそれにしては。自分の血のにおいがして、血――? と何かが引っかかって。

 そして突然、夜が揺れた。

 視界に広がる空いっぱいがぐらぐら揺れた。数秒後に空ではなく地面と俺たちが一続きで揺れていることに気づいた。

 俺の怪我に添っていたメイスが顔をあげる。ライナスも警戒しつつも振り仰いだ。一瞬後に、どんっと激しい横づきがきてよろめいたメイスが俺にぶつかった。俺も正直、転びそうだった。

 ライナスと女魔導師だけが動じない。ライナスは絶妙なバランス感覚で立っていられるのだろうが、女魔導師はそもそも揺れを感じていないように、周囲をゆっくり見回している。

「……思ったより、厄介なことになりそうだな」

 コルネリアスの呟きが聞こえた。それを問いただす暇も与えてくれず、視界でおかしなことがおきた。俺の立っている側から見えていた城の煉瓦塀がぐいんっと急に背を伸ばして曲がったのだ。

 飴細工のようにそれは、伸びて伸ばされて変形した。嘘のように。

 見えたものがあまりにシュールすぎて俺は周囲の視線を確認した。ライナスが見ている。珍しく全ての動きをとめて。膝元のメイスも見ていた。赤い瞳が見開いている。

 飴細工は壁だけではなかった。全体に広がって城はぐにょぐにょと動いていた。その様は軟体動物の律動のように気味が悪い。でっぱりや塔は全体の中に吸収されて大理石やら木板やら色々なものが流れて、揺れたと錯覚した空へと背伸びするようにぐんぐん伸びていく。やがて視界を高くしなければどうにもならないところまで来て、諾々と首を動かして見上げた、高い角度に背景は夜だけになって


「嘘――」


 誰の呟きだったのか。あまりに近すぎて誰もがそれを自分の声にした。

 夜の王都に広がったのは、闇の中にさらに濃く形作られる巨大な陰。レンガ造りの身体、大理石の身体。ごきごきとその表面は常に流れるように変形し続けている。

 レンガが流れる。巨大な門が流れる。部屋の内装まで裏返って流れていった。ようやく形をはっきりとさせて出来上がってきた肩らしきところに、裏木戸の小さな扉が流れてくるりとまかれていく。そうして流動したあと、出来上がったのはやたら上半身だけがずんぐりでかい、不恰好な犬のようなものだった。

 目も顔もないが四つの足だけがずんと地面から伸びる。身体の部分はどちらかというと、全身がおたまじゃくしの頭部のようだ。膨れ上がってまだ少し動いている。その丸みを帯びた輪郭に、さあっと大きな裂け目が走って口になった。犬の全ては城で出来ている。降り注ぐほどに巨大なその光景、大きさはクラーケン以上だ。けれど目も鼻もない、ただ口が開いただけの頭部の化け物と比べれば、ぬめった表面と黒いだけの瞳を持つイカも、どれだけ生き物らしさを感じさせたのか改めてわかる。

 濡れた身体を震わせるように、ぶるりとそれが身震いした。がつんがつんと飲み込まれていなかった表面の煉瓦が辺りに散った。飛んできたそれを思わず避けて、それから無意識に剣を柄から抜いていた。

「レザー。あの中には――」

 ライナスがそう言ったので、これもほぼ無意識に剣を柄に収めていた。もとより剣一本で立ち向かえるものではない。犬のようだが、それはあまりに整っていなくて、犬本来の素早い動きができるかどうかは怪しかった。

 けれどそんなことは関係ない。この大きさではこいつが、たとえ歩くことすら全うできず転んだだけでも、都の五分の一は壊滅する。

 これはそういう大きさだ。どうしようもできない。どう手の出しようもない。これは大きさだけですでに災害に近い。

 こんな自重には地上の生物は耐えられはしないのに、巨大な建造物で身体を構成させてこいつは今、ここに在る。見上げ続けてただ思った。ただ呆けた。大きさに眩暈もした。

 ああでも本当に目がくらむことは。

 考えたくもないことは。

 事実が間違いなくて。どうしようもなくて。冷たくなることもできない。

 アシュレイもグレイシアもリットもカールも――叔父貴も、いるのだ。まだ、いるのだ。

 寒さではなく身震いをした。



 こいつのなかに。




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