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君と見る異世界物語  作者: 北岡卓斗
第三章 『聖騎士団』
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第90話 『ジャパシスタ騎士団結成』


「カジュスティン家滅亡の真相……?」


 エレナは若菜の言葉に、胸がざわついていた。


「ここからは、私と春が聖騎士団に入団してからの話よ……」



 ――話は再び遡る事、三年前。



 若菜と春が聖騎士団に入団して、三年が経とうとしていた。若菜は、ジョン率いる第二部隊に配属され、春はアカサキ率いる第一部隊に配属されていた。


 十五歳になった二人は、副都に居た頃より、背も伸びて大人っぽくなっていた。

 若菜も髪が伸び、可愛らしいというよりは、美しい女性になっていた。


「よーし、王都のパトロールに行くぞ、お嬢」


 若菜をお嬢と呼び、声を掛けたのは聖騎士団第二部隊隊長のジョン・マルクスだ。

 現在の副隊長であるイルビナ・イリアーナはまだ入団しておらず、当時の副隊長は若菜だった。


「隊長、春が一人だけ、国王室に呼ばれてたんだけど、何か知ってる?」


「ん? ハルがか? さぁな、俺は何も知らねぇが。やっぱ、旦那の事が心配か?」


「まだ結婚してないわよ。春が十八歳になるまでは、結婚出来ないんだから」


「ハハハハハ!! なんだよ、その決め事は。結婚出来る年齢なんて決まりはねぇぞ」


 結婚出来る年齢の法律があるのは、卓斗達の元いた世界だけで、この世界では、何歳からでも結婚は出来る。

 流石に、若い頃に結婚する者は少ないが、中には一桁の年齢で結婚する場合もある。勿論、政略結婚だが。


「私達には私達のやり方があるのよ」


 若菜と春の関係は、恋人だった。二人にとっての初恋は、見事に成就している。

 副都に居た時に付き合い始め、もう既に三年も付き合っている仲だ。


 若菜がジョンと会話をしている間、春は国王室に呼び出されていた。当時の国王はカジュスティン家の王でエレナの父親のジュディ・カジュスティンだ。


「お呼びですか、国王」


「おぉ、来たか。ハル、お前にいい話がある」


「俺に? どんな話です?」


 ジュディは、机に両肘を付き、春に微笑みながら、


「聖騎士団に新たな精鋭部隊を作ろうと思っていてな。第四部隊なんだが、その隊長の座にハルを選出したい」


「俺が第四部隊の隊長?」


「正直な話、天才と謳われるお前が、もう一人天才と謳われるアカサキの元に居るのは勿体が無い。お前も十分に、隊を率いるのに適しているからな。グレコもこの話に賛成している。どうだ、引き受けてくれるか?」


 国王から直々に隊長に就いて欲しいと、声が掛かるのは珍しい事で、春としても嬉しく思っていた。だが、


「有難い話ですけど、俺はアカサキさんの元で戦いたいって気持ちもまだあって、それに、いくら周りが俺を天才って呼んでくれても、アカサキさんと比べたら俺なんかまだまだなんです。ですから、返事はもう少し考えさせて貰ってもいいですか?」


「そうか……まぁ、直ぐに答えをくれとは言わん。ゆっくり考えるといい」


「はい、では失礼します」


 春は深く頭を下げると、国王室を後にする。王邸の廊下を歩いていると、春はある人物に声を掛けられた。



「――あら、ハルさん。来ていらしたんですね」


「エイナ様。国王に呼び出されて」


 春に声を掛けた女性は、カジュスティン家の第一王妃である、エイナ・カジュスティンだ。

 春とは同い年という事もあって、親しい関係だった。


「お父様から、何か言われたのですか?」


「いやいや、怒られたとかじゃなくて、新たな部隊の隊長にならないかって言われたんです」


「それは喜ばしい事ですね」


「でも、俺にはやりたい事があって……」


「やりたい事、ですか」


 春は隊長昇格よりも、目指すものがあった。それを成し遂げる為には、ジュディからの話を断らなければならない。

 だが、まだ踏ん切りが付かず、ジュディには言えないでいた。


「俺は、俺と同じ国の人達を集めた騎士団を立ち上げたいんです」


「ハルさんの国とは、確か……」


「日本って国ですよ。恐らく、俺と若菜以外にも日本人が居ると思うんです」


 春の目指すもの。それは、日本から異世界へと飛ばされた者を集めて、騎士団を立ち上げる事。



「――なんだ、そういう事なら、そう言ってくれればいいのによ」


 すると、春とエイナが会話をしている所に、ジュディが現れた。


「国王!? 話……聞いてたんですか……」


「まぁな。エイナが遅いから、迎えに行こうと思ったらよ、廊下で二人が話してるから聞こえちまった。ハル、その話は聞いてもいいぞ。別に、第四部隊に限られた話じゃねぇからな。兎に角、お前には隊長格になって貰いたいって話なんだよ」


「では国王……」


「お前の騎士団を立ち上げるといい。グレコには俺から言っとく。つっても、王都の所属になるから、今までと変わりはないと思うがな。それから、一人で立ち上げるのもなんだ、もう一人誰か誘っていいぞ」


 春の目指すものは、思わぬ形で成し遂げられた。そして、もう一人誘うとなれば、既に決まっている。



 ――その日の夜、若菜と春は王都の外れにある花畑に来ていた。月明かりが、色とりどりの花を照らし、心地いいそよ風が踊れと言わんばかりに、花達を揺らす。


「今日、国王様と何を話してたの?」


「なんだよ、お前も知ってたのか。聖騎士団の新たな精鋭部隊、第四部隊の隊長になってくれって言われた」


「第四部隊の隊長!? 春、凄いじゃない!!」


「――でも断った」


 春が花畑を眺めながら、そう言葉にすると、若菜は首を傾げながら春の横顔を見つめた。


「どうして? せっかくの隊長になれる話なんでしょ?」


「その代わり、聖騎士団とは別に、新たな騎士団を立ち上げる事になった」


「新たな騎士団?」


「その新たな騎士団の隊長に就く事になったんだよ。俺はその騎士団に、日本人を集めようと思ってる」


 春のその言葉に、若菜は驚きつつも、嬉しい気持ちで溢れた。若菜も春と同じ様な事を実現したいと思った事があったからだ。


「それで、その騎士団の副隊長を探してるんだけどさ。若菜、俺と一緒に来てくれないか?」


 春に誘われ、若菜としても返事は一つだけだ。間が空いて、心配になったのか、春が若菜の方に視線を向けると、若菜は満面の笑みで頷いた。


「はぁ、良かった……断られたらどうしよって思ってた」


「断る訳無いでしょ。だって、春の頼み事よ? 私が聞かなきゃ、誰が聞くの?」


「だってお前さ、ジョンさんに気に入られてるし、第二部隊の方が心地いいかも知れねぇじゃん」


「確かにジョンはいい人よ。私を娘の様に扱ってくれて、お父さんの姿と被るし、心地もいい。でも、春と一緒に居る方が幸せなんだから」


 若菜が頬を赤らめながらそう話すと、春は若菜の肩を抱き抱え、自分の方に抱き寄せる。


「あんまり俺の言う事ばっか聞いてると、結婚したら亭主関白になっちまうぞ」


「良いのよ、それで。私が幸せで、春が幸せなら」


 満点の星空、輝く満月、踊る花畑をバックに、抱き合う二人の姿は、とても絵になっていた。



 ――それから数日後、春と若菜の聖騎士団としての最後の仕事が行われ様としていた。

 聖騎士団総隊長のグレコの元に召集されたのは、若菜と春、そして第一部隊の隊長アカサキ、聖騎士団に入団したばかりのディオスが集められていた。


「集まったな。今回の任務は、ギューデルト高原に大発生した魔獣の討伐だ。たかがゴブリンだが、数が計り知れん。気を抜くなよ。今回の編成は特別編成だ。ハルとワカナはこれが、聖騎士団としての最後の任務となる。気を引き締めろ」


「あのー、何故俺がこの場に呼ばれているんでしょうか」


 そう話したのは、ディオスだ。当時十九歳のディオスは、まだ聖騎士団に入団したばかりで、第三部隊に所属していた。


「お前は新入りだからな。経験と思っていい。アカサキとハル、ワカナが居るから危険は無いと思うから、安心して行って来い」


「宜しくお願いします、ディオスさん」


「敬語は辞めて下さい、ハルさんは聖騎士団の先輩ですから」


「なら、ディオスさんも敬語は辞めて下さい。後輩と言えど、歳上ですから」


「歳で話をすると、俺が一番歳上になってしまうんですが……」


 若菜と春は当時十五歳。アカサキが当時十七歳となるので、ディオスが新入りながら、一番歳上だった。


「そうですよ、ディオスさん。歳上なんですから、気兼ねなくタメ口で結構ですよ?」


 アカサキにそう言われると、ディオスは困りながらも、


「うーん、分かった。なら、タメ口で話す。でも、名前にはさん付けさせて貰うね。それから、ハルさん達もタメ口でいいよ。先輩なんだから」


「分かった。じゃあ、そうさせて貰う」


「私は、これが普段の話し方なので、このままで話させて貰いますね」



 ――こうして、若菜と春の聖騎士団最後の任務が始まった。一行が向かったのは、ギューデルト高原。

 ガガファスローレン国の更に奥に向かった先にあり、村の集落などが沢山ある場所だ。

 王都からだと、かなり距離があり、馬に乗って飛ばして行っても二時間は掛かっていた。

 そして、ギューデルト高原に到着した若菜達は、その光景を見て驚愕した。

 そこには、何万もの数にも及ぶゴブリンの大群が、ギューデルト高原を埋め尽くしていた。


「嘘だろ……」


「何この数……」


 若菜と春は、ゴブリンの大群を見て思わず息を呑んだ。何万にも及ぶゴブリンの大群を見ていると、気持ちが悪くなってくる。


「これは少し、驚きましたね……」


「この大群発生は、自然現象とは呼べないな……」


 アカサキやディオスも、その数に圧倒されていた。すると、ゴブリンの大群の中で、数名が戦っているのが見えた。


「誰か、戦ってる。直ぐに助けに行くぞ!!」


 春はそう言うと、ゴブリンの大群の方へと走り出す。


「ちょっと、春!! もう、すぐに突っ走るんだから!! アカサキさん、ディオスさん、行きますよ!!」


 若菜達も春に続いて、剣を抜いてゴブリンの大群の方へと走り出す。春は既に、ゴブリンを斬りながら数名の元へと向かって行く。

 流石は天才と呼ばれる程で、一撃でゴブリンを仕留めていた。


「凄い数……!! これじゃ前に進めない……!!」


 若菜もゴブリンを斬りまくるが、数には追いつけず、足止めを喰らっていた。

 アカサキも、全属性の魔法を駆使して、ゴブリンを薙ぎ払って春の後を追って行く。


 ゴブリンに足止めを喰らっている若菜に、容赦無くゴブリン達が棍棒を振りかざす。


「しつこいわよ!!」


 すると、若菜の周りに無数の白い光の粒が現れ、それに触れたゴブリン達が次々に吹き飛ばされていく。


「歳下なのに、皆凄い……」


 ディオスも、ゴブリン達と戦いながら、若菜やアカサキの姿を見て、感心していた。


 一方、春は走りながらゴブリン達を切り払って突き進み、遂に数名が戦う場所まで辿り着いた。


「大丈夫か!? 俺らも手助けする!!」



「――どこからの援軍か知らへんけど、正味助かったわ。ありがとうな!!」


 春は返事をした少女の話し方に違和感を覚えた。どこか懐かしく、聞いた事のある方言だった。


「その喋り方……」


「あー、こっちの者は皆それ言うな……説明すんのがしんどいで、変な喋り方してるんやな思といて」


「いやいや……関西弁……」


 当然、春はその方言を知っている。日本の関西方面の方言だ。そして、春がそう言葉を零すと、驚いた表情をしながら、同い年くらいの少女が春の方へと振り向いた。


「あんた、関西弁知ってるん!? って事は、あんたも日本人なん!?」


「どうしたん、飛鳥!!」


 すると、もう一人の少女も、春の元へと駆け寄って来る。その少女も関西弁を話していた。


「結海!! うちらと同じ日本人が居ったわ!! そこの兄ちゃんが日本人みたいやで!!」


「ほんまに!? やっぱ私ら以外にも居ったんや……兄ちゃん、助けに来てくれてありがとう!! 私は結海ゆうみ言うねん、よろしく!!」


「うちは飛鳥あすかや!! 取り敢えず、早ようこいつら倒すで!!」


「お、おう……!!」


 突然の日本人との邂逅に、春は戸惑いながらもゴブリン達と戦う。



 ――そして、数時間の戦闘の末、ゴブリンの大群は全滅し、春達は勝利した。ギューデルト高原には数万の数のゴブリンの死体が転がっていた。


「ハァ……ハァ……やっと片付いた……」


「春!!」


 全員が春の元に集まると、飛鳥と結海と他にもう一人も集まって来る。


「おおきにな、うちらだけやとこの数はしんどかってん、助かった」


 飛鳥がそう話すと、関西弁に気付いた若菜も驚いた表情をしていた。アカサキは四歳の頃からこの世界に来ている為か、関西弁を知らないでいた。


「貴方達も……日本人……」


「うちら以外にも居る思ててん。そんでこっちの男が健太けんた。皆はどこから来てくれたん?」


「俺らは王都から来た。ゴブリンが大量発生したって聞いてさ。それより、いつからこっちに?」


「うちらは、ほんの三週間前くらいに飛ばされて来てん。どうやって来たんかも分からへんのが怖ぁてしゃーないわ」


 飛鳥は、黒髪でショートボブの髪型。片方の襟足に赤色のメッシュが入っている。

 キリッとした目をしていて、クールな印象。背丈は160センチ程で、スタイルも抜群だ。

 結海は、茶髪で毛先がパーマ掛かったハーフアップの髪型。お淑やかな顔付きで、豊満な胸と長くて細い脚が印象的だ。

 背丈は160センチ程で、飛鳥とは幼馴染の様だ。

 健太は、黒髪で坊主頭。こんがり焼けた肌色で、背丈は168センチ程。

 三人共同じ学校に通っていて、飛鳥と結海はセーラー服を着ている。健太は学ランを着ていた。


「取り敢えず、ありがとうな。あんたらの事は、ちゃんと覚えとくから」


「でしたら、私達も王都へと帰りましょうか」


 若菜と春の聖騎士団としての最後の任務は、こうして無事に終わった。



 ――そして数日後。王都の街外れの一角に、春の立ち上げた騎士団のアジトは建てられた。

 まだメンバーは春と若菜の二人で、二人だけには少し広い部屋だった。


「騎士団の名前を考えなくちゃなんねぇな」


「どういう名前にする?」


「ずっと考えてたんだけど、ジャパシスタってのはどうだ?」


「ジャパシスタ? ちょっと変じゃない?」


 春の考えてきた騎士団の名前に、若菜は少し違和感を感じつつも、


「まぁ、春が考えたのなら、それでいいと思うわよ」


「よし、なら決まりだな。つっても、聖騎士団の時とやる事はあまり変わらねぇからな。俺らも聖騎士団の協力はしなくちゃなんねぇし」


 春の立ち上げた騎士団は、あくまでも王都所属の騎士団。聖騎士団の中の特殊部隊の様なものだった。

 時には、若菜と春の二人で任務を行い、時には聖騎士団と合同で任務行う。そんな日々が続き、春はある事を決意する。



「――若菜、そろそろジャパシスタ騎士団のメンバーを増やそうと思う」


「メンバーを増やす?」


「あぁ。当初からの俺の目的でもある、日本人を集めた騎士団を作る事だ」


 日本からこの世界に飛ばされた日本人を集め、一つの組織を作る事が春の夢だった。

 もし、日本へと帰る方法が分かった時、自分達だけでなく、他の日本人も一緒に帰れる様にと考えた春の作戦だ。


「でも、日本人なんかどうやって見つけるの?」


「取り敢えずは、あの三人を誘う」


 春の言葉に、若菜の脳裏に思い浮かんだのは、関西出身の飛鳥達の事だ。


「あ!! あの関西の子達ね」


「あぁ。暫く任務も無いだろうし、旅行がてらに探しに行こうぜ」


 そして、若菜と春は飛鳥達を探すべく王都を後にした。急いでいるつもりは無く、歩いてギューデルト高原へと向かっていた。

 道中、昼休憩に立ち寄った国で、ある人物との邂逅が待っていた。



「――お前……日本人なのか……?」


「はい」


 街を歩いていた若菜と春の目の前に、日本の学校の制服を着た少年と出くわしていた。

 飛鳥達を探すべく王都を出たつもりが、思わぬ形で日本人と出会ったのだ。


「俺は春、こいつは若菜。お前の名前は?」


「僕は深田慶吾って言います」


 現在のジャパシスタ騎士団のメンバーであり、若菜の右腕としても活躍している深田慶吾だった。

 当時十三歳の慶吾は、ブレザーの制服を着て腰に剣を携えていて、既にこの世界に馴染んでいる様にも見えた。


「慶吾……よし、お前も俺らと一緒に来るか? 日本人を集めた騎士団を立ち上げたんだ」


 春の誘いに、慶吾は黙ったまま頷いた。こうして、ジャパシスタ騎士団は三人となった。

 その後も休憩を挟みつつも、着々とギューデルト高原に近付き、ギューデルト高原手前の国で休憩していると、また一人の日本人の少女と出会う。



「――私は上野沙羽。十四歳で中学二年なんだけど……ここは、何処なの?」


 沙羽とも出会い、ジャパシスタ騎士団に迎え入れ、飛鳥達と出会うまでに、二人の日本人を仲間にした春と若菜。

 こうして、世界を歩いていると、思ったよりも日本人が居る事に、若菜達は驚かされていた。


 そして、当の目的でもある飛鳥達とも再会を果たし、無事にジャパシスタ騎士団に迎え入れる事に成功した。

 こうして、ジャパシスタ騎士団は若菜と春の二人から、慶吾、沙羽、飛鳥、結海、健太を加えた七人体制となった。



「――ここが、俺らのアジトとなる。そして、ジャパシスタ騎士団の最大の目的は、日本への帰り方を見つける事。まぁ、俺と若菜はそこまで帰りたいとは思ってねぇけど、皆は帰りたいだろ? そこで、一つ聞きたいんだが……皆はここにどうやって来たのか、分からないんだよな?」


 春の質問に全員は頷いた。誰一人、日本からどの様に飛ばされたのか分からないでいた。

 気付けば異世界に居て、当然帰り方も分からない。この世界で、ただ生きていく事しか出来ないのだ。


「まぁ、聖騎士団と一緒に色んな任務をこなしていきながら、日本への帰り方も見つける。これが、俺達の共通目的って事で頼む」


「ほな、春くんがここのリーダーって認識でええねんな?」


 飛鳥がそう言うと、春は真剣な表情で頷き、


「あぁ、とりあえずはな。でも、ここでの関係は皆が対等だ。何か言いたい事があれば、気を遣わずに何でも言ってくれ」



 ――ここに、ジャパシスタ騎士団は誕生し、若菜達の新たな異世界物語が始まろうとしていたが、その一年後に物語の歯車は歪んでいく。





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