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君と見る異世界物語  作者: 北岡卓斗
第三章 『聖騎士団』
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第85話 『ガガファスローレン国』


 ガガファスローレン国へと向かう為、副都を出発した卓斗達。副都の生徒を三人連れて行く事になったのだが、道中は卓斗にとって、地獄の道中となった。


「ハァ……ハァ……そろそろ……歩いてくれるか……」


「えぇ? もう歩かせるんですか、先輩」


「お前な……ふざけんな……ハァ……ハァ……三人を交代で背負って……何周目だと思ってんだ……!!」


 卓斗はユニを背負って歩き、暫くするとモニカとユニが交代し、もう暫くすると、モニカとジュリアが交代して、背負われていた。

 そしてそれは、既に三周目に突入している。卓斗の体力も限界に近付いていた。


「ユニの番が終わるのなら、次は私か」


「ちょっと、モニカ? お前は見て分からねぇのか……? ハァ……ハァ……俺は限界だって言ってんだよ……!!」


「情けないわね、タクト。そんなんじゃ、後輩達に嫌われるわよ」


 他人事の様に話すのはエレナだ。十月の半ばだと言うのに、卓斗は滴るほどに汗を掻いていた。


「じゃあ……お前も、背負えよ……!!」


「ほら、せんぱーい!! 進みが遅いですよ?」


「ユニ……お前も背負ってやってんだから……感謝くらい、しろよな……」


 ユニは卓斗に背負われて、上機嫌な様だ。まだ会ったばかりの卓斗に対して、ユニ達三人は既に心を開いている様だった。


「感謝くらいしてますよ。どさくさに紛れて、三人の女の子の太ももを触れてるんですから、逆に先輩も感謝して下さいね?」


「あー……そうですか……感謝すればいいんだろ、すれば……」


 そんなユニを背負って歩く卓斗の後ろを、付いて行く様に歩く三葉は、後輩達の可愛さに満足していた。

 三葉の隣を歩くジュリアは、何の曲か分からないが、鼻歌を歌ってスキップしている。


「楽しそうだね、ジュリアちゃん」


「ハイ!! 楽しいデス!! 皆で遠足をしている気分デスね!!」


「遠足かぁ、懐かしいね。そう言えば、ジュリアちゃんはいつからこの世界に?」


 ジュリアも三葉達と同様に、元居た日本から異世界へと飛ばされている。


「うーん、最近デスね。学校に向かってたら、気付けば副都に居ましたデスよ」


「寂しく無いの?」


「寂しく無いデス!! 元々ずっとイギリスに居ましたデスから、日本に来て間もないデスよ。こっちの世界は凄いデス!! 本で読んだ魔法とかが使えるなんて、ロマンティックデス!!」


「ジュリアちゃんは、強いんだね」


 三葉は只々ジュリアに感心していた。自分と歳が一つしか変わらないのに、強く居れる事が羨ましかった。


「ミツハ先生もニホンからデスか?」


「うん、半年前くらいにね。卓斗くんと、他にも四人友達が居てね、突然飛ばされたんだ……」


「うーん、飛ばされた理由は分かりマスか?」


「それが分からないの。来た方法も、帰る方法も分からなくて……今は皆で帰る方法を探してる所なの」


 三葉とジュリアの会話が聞こえたのか、モニカが興味津々な表情で三葉の隣を歩き出す。


「興味深い話が聞こえた。この世界の他にも、もう一つ世界が存在すると、ミツハ師匠は言った。私も、この世界の他にも世界が存在してると考えている。ミツハ師匠の話を聞けば、私の理論は決定的となる。詳しく聞かせて」


「えーっと……私の居た世界はね、魔法とか無いの。ビルとか建物が一杯建ってて、道を車が走ったり、空を飛行機が飛んだり、この世界に無いものが沢山あるんだよ」


「おぉ!! とても興味深い!! 帰る方法が分かったら、私も連れてって欲しい!!」


 モニカにとっては、車や飛行機など想像もつかない物だ。話を聞くだけで、夢が膨らんでくる。


 そんな楽しい話をしてる三葉達と比べ、卓斗は息を切らしながら必死に歩いていた。


「ハァ……ハァ……本当にそろそろ限界だわ……」


「ちょっと、先輩。女の子を背負っておいて、限界ってどういう事ですか? 女の子に対して、失礼ですよ」


「お前な……」


 ユニの言葉に呆れる卓斗に、エレナが救いとなる言葉を掛けた。


「ねぇ、あそこから馬車に乗れるみたいだけど、どうする?」


「乗る!!」


 本当に限界が来ていた様で、卓斗は即答した。ともあれ、まだガガファスローレン国までの道程は長い。

 馬車で行けるのなら、有難い事だった。卓斗達は、すぐさま馬車に乗り込む。


「はぁ……疲れた……」


 馬車の座席に座ると、卓斗はグッタリとしていた。ユニ達も初めて乗る馬車に、テンションが上がっている。


「先輩の背中より、全然乗り心地が良い!!」


「お前、二度と背負ってやらねぇからな……」


「嘘ですよ、先輩の背中もなかなか乗り心地良かったですよ? またお願いしますね?」


 そう言って笑顔を見せるユニに、思わず許してしまう卓斗。これが後輩の可愛さなのかと、痛感していた。


「そんな事より師匠。ガガファスローレン国へと向かって、誰と話をしたいんだ?」


「あー、『賢者様』って人に聞きたい事があってな」


「『賢者様』と呼ばれているという事は、知識が豊富な識者という事。私もこの際だから、話を聞いてみたい」


「モニカってさ、何で副都に入ったんだ? お前は騎士っていうよりも、研究とかそっちの方がしたいんじゃねぇの?」


 ここで、ガガファスローレン国に到着するまでの間、ユニ達三人の事を詳しく知ろうと、卓斗は勝手に質問タイムに突入した。


「私はユニに誘われて副都に入団した。そもそも騎士になる気は無い。だから、卒団した後はシルヴァルト帝国へ行きたい。あそこは、真実在や真理を捉えることの出来る最高の認識能力を手に入れる事が出来る。私の知識欲を満たしてくれる、まるで夢の様な国……」


「シルヴァルト帝国か……そういえば、蓮が行ってる国だよな。元気にしてっかな……」


「大丈夫だよ。蓮くんは蓮くんでやりたい事を見つけたんだから、きっと楽しんでると思うよ」


 三葉と卓斗は、ふと聖騎士団に入団しなかった蓮達の事を思い出していた。

 蓮はシルヴァルト帝国へと行き、悠利と李衣と恵はジャパシスタ騎士団に入団した。


「それで、ユニはどうしたいんだ?」


「私は、聖騎士団に入団しようと思ってます。私とモニカは王都生まれで、育ちも王都ですから、小さい頃から聖騎士団を見ていたんですよ。勿論、エレナ先輩やセレスタ先輩、エシリア先輩の事も知ってますよ? 三人共可愛くって憧れなんです」


「私が憧れ……?」


「はい!! 王族の衣装を着て、街を歩いてると誰よりも目立って、美しくて可愛くて、ずっと憧れてたんです。特に、エレナ先輩が憧れでした!! 二年前に滅亡しちゃった時は悲しかったですけど、副都にエレナ先輩が居るって話を聞いて、とても嬉しかったです!! だから私も、エレナ先輩みたいに可愛くて強い騎士になろうって決めたんです」


 後輩に憧れと言って貰えて、エレナは嬉しそうな表情をしていた。


「そうなんだね……ユニは私が大好きなのね……!!」


「いやいや、大好きじゃなくて憧れだって言ってんぞ……ぐふっ!?」


 エレナの強烈な肘打ちが卓斗の横腹に決まる。悶える卓斗に笑顔を見せながらエレナは、


「あんたは黙ってなさい」


「お前……加減くらい……しろよ……それで、ジュリアわ……?」


「私は、楽しければ何でもいいデス!! 私にとっては、全ての時間がpricelessデス!!」


 突然のジュリアの英語に、卓斗と三葉以外は理解の出来ない顔をしていた。


「また出たね、ジュリアの訳の分からない言葉」


 当然、ユニ達は英語を知らない。だからこそ、ジュリアの英語には違和感だらけだった。


「pricelessか……まぁそうだよな。この世界に居れる事も、いい意味じゃ貴重かもな」


「え、先輩はジュリアの謎の言葉が分かるんですか!?」


「まぁ、分かるもなにも英語だしな……それより、何でこの世界で日本語が通じるのかが謎なんだけどな」


 卓斗の謎はまだまだ多い。異世界に飛ばされた理由や方法、この世界で日本語が通じる理由、そして、


「この世界に飛ばされた人が、今の所全員が日本人って事もな……」


「あ、そういえばそうだね!! 私達と同じで飛ばされた人で出会った人は皆が日本から飛ばされてるのって、偶然なのかな……」


 卓斗達を含め、今までに日本から飛ばされてる人には多く会っている。

 ジャパシスタ騎士団の面々や、副都で出会った恵、過去にも日本から飛ばされてる人の話で、フューズの妻の友理奈、副都で教官をしていたヨウジという男性、セシファが話していたフミトという男性。全員が日本から飛ばされていた。


「何で日本人ばかりが……? 偶然にしちゃ出来過ぎてる……」


 考えれば考える程、謎が深まっていくだけだった。それも『賢者様』に会えば、何か分かるかも知れない。そう期待している卓斗だった。

 すると、馬車を運転していた運転手が徐に口を開いた。



「――目的地、ガガファスローレン国が見えましたよ」


「本当か!?」


 卓斗が馬車から身を乗り出して、前方を見やると、視界に移ったのは、大きなコンクリートの塀で囲まれた建物だった。

 天井はくり抜かれているが、塀の高さが異常だった。何十メートルはあるであろう。


「何だよ……あれ」


「うわぁ……なんか、不気味さが漂ってるんですけど……先輩、あんな所に行きたかったんですか……?」


「いや……俺も初めて見るんだよ……」


 そのコンクリートの塀は、ガガファスローレン国全体を囲っていて、見た目のインパクトは絶大だった。

 この世界での国の大きさは、日本の都道府県よりも小さい。例えば、王都ヘルフェス王国は東京よりも小さい。

 ガガファスローレン国も当然、王都より小さいが、こうも全体をコンクリートの塀が囲っていると、その光景は言葉を失う程だ。


「では、到着です。ご武運を」


 卓斗達は馬車から降りると、コンクリートの塀を見上げた。不気味さを漂わせ、他を寄せ付けない様な雰囲気を醸し出している。


「本当に……入るんですか……?」


 ユニは漂う不気味さに、思わず気圧されていた。ここを通りすがる旅人は、決して寄り道しないであろう。そんな異様な空気感が、ガガファスローレン国の入り口からは漂っている。


「折角来たんだし、早く入るわよ」


「エ、エレナ先輩……待って下さいよぉ……!!」


 異様な空気感にも動じないエレナは、入り口へと歩き出す。そんなエレナに続いて、他の皆も重い足を動かす。

 入り口には、門番兵が二人立っていた。騎士のテンプレートの様な鎧を着ていて、野太く低い声で、


「入国の理由は?」


「話したい人が居て来ました」


「ほう、話したい人か……また珍しい入国希望者だな。コロシアムの参加はどうする?」


 ガガファスローレン国での経済の基盤は、騎士同士の殺し合いだ。その賭博で国を運営している。


「いや……参加はしないですけど……」


 当然、その様なイベントには参加する筈も無いし、参加したくも無い。


「そうか、入国を許可する」


 正門を通され中へと入ると、異様な空気感は更に強まっていた。殺風景な街並みで、商売をしている建物は見られない。

 レンガで建てられた、アパートの様な建物だけがズラッと並び建ち、真ん中には大きな闘技場が聳え建っている。


「ここが……ガガファスローレン国……」


 行き交う人々は皆が、血に染まった鎧を着ていて、常に殺気立っている。

 当然、制服の様な騎士服を着ている六人は目立ち、視線を集めてしまっている。


「あ、あの……かなり見られてるんですけど……」


「ユニ、怖いのは私も同感だ。この場所では、正常な思考は出来ないと思われる」


「ユニもモニカも、怖がりなんデスね!! もっとenjoyしないとデス!!」


 ユニは卓斗の服の裾を掴んで、極力引っ付いて歩いている。卓斗は少し歩きづらそうだが、そんな卓斗も行き交う人々達の視線を合わせない様に、ジッと真っ直ぐ見つめて、歩く事しか出来ないでいた。

 もしこれが、某喧嘩ゲームならば、行き交う人々のメンチビームは全て卓斗に向かって伸びている、とでも言うのか。

 もし目が合えば、恐らく殺される。卓斗は心の中でそう思っていた。


「わ、私も……ちょっと怖い……かな」


「ミツハ師匠、こういう時は手を繋ぐと、恐怖心は緩和される」


 モニカはそう言うと、三葉の手を繋ぐ。モニカは表情にこそ出さないが、相当怖がっている様だ。

 そんな中、平然としているのはエレナとジュリアだ。エレナは喧嘩なら買う、と言わんばかりに同等と歩き、ジュリアはこの様な場所でも楽しそうにスキップしていた。


「皆見てるデスね!! なんか、有名人になった気分デス!!」


「命知らずだな……ジュリア……」


 そうして一行が、ガガファスローレン国の雰囲気に怖がりながら歩いていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。



「――おーい!! 卓斗じゃねぇか!! 三葉ちゃんにエレナちゃんも!!」


 卓斗が声のする方へと視線を向けると、そこには、



「――悠利!? それから……若菜さんと沙羽さん!?」


 そこには、ジャパシスタ騎士団の清水若菜と、上野沙羽、副都からジャパシスタ騎士団に入団した御子柴悠利の姿があった。


「久しぶりね、卓斗くんに三葉ちゃん、それから……エレナ様も」


 半年振りに若菜と沙羽と再会した卓斗と三葉は、感激で恐怖心など一瞬で忘れていた。


「久しぶり!! 何でここに!?」


「ちょっと、人探しでね。聖騎士団の騎士服、良く似合ってるわね」


「わー……この人綺麗……」


 卓斗の後ろにくっ付いていたユニは、若菜の姿を見て、目を奪われていた。

 綺麗な橙色のロングヘアでハーフアップの髪型。妖艶さ漂う美しい顔立ちに、スタイルも抜群。

 エレナに負けず劣らず、絶世の美女と言ってもいいくらいだ。


「その子達は?」


「副都に通ってる子らで、今は課外授業みたいな感じで、ここに来たんだけど……」


「へぇ、可愛い子達だね!!」


 沙羽は覗き込む様に、ユニやモニカ、ジュリアを見つめていた。


「この人も、可愛い……」


 沙羽も劣らず可愛い顔立ちをしていて、金色の髪色にシニヨンの髪型で優しい笑顔を見せる沙羽にユニは思わず、頬を赤く染める。


「元気そうだな、卓斗」


「お前もな、悠利。それで、人探しって?」


「あー、俺らは日本からこの世界に飛ばされた理由や方法、飛ばされた日本人を探してんだよ。そしたら、『賢者様』って人の情報を得てさ、その人を探しに来たんだよ。それで、卓斗達は?」


「いや……俺らも『賢者様』を探しに……」


 まさかの、目的が全くの一緒だと思わなかった卓斗は、驚いた表情をしていた。

 卓斗はフューズから『賢者様』の情報を聞き、悠利達は独自の捜査で『賢者様』の情報を得ていた。


「やっぱ、そこに辿り着いたか。もしかしたら、『賢者様』なら過去に日本からこの世界に飛ばされた日本人を知ってるかもって思ってさ」


「過去?」


「過去から飛ばされた人が居るなら、この世界での生活は長い。だったら、何か知ってる可能性もあんだろ? 俺達は……ていうか、殆ど俺がだけど、その過去の人物の情報を探ってんだよ。この間の、セレスタちゃんの件の時に、オルダン騎士団のシェイドって人を捕らえたろ? その人から少し話を聞いたんだけどよ……」




 ――王都ヘルフェス王国の国王邸の地下に、牢獄がある。主に、王都で事件や犯罪を犯した者が収容されている。

 その場所に、悠利と若菜は顔を出していた。目的はシェイドと話す為だ。


「君は確か……ミコシバとやら……」


「ユウリでいいよ、おっさん」


「こんな所まで、わざわざ何の用かね?」


 折越しに話す悠利とシェイド。その周りには、シェイドの他にも犯罪者達が収容され、悠利と若菜を凝視していた。


「ここは、居心地が悪いからさ、直ぐに話してくれると有難いんだけどさ、俺と戦った時に言ってた事、覚えてるか?」


「あぁ、覚えているとも。この世界の人間じゃ無い様なオーラを持った者の話……だな?」


「そうそれ。その人の事、俺に教えてくれるか?」


「もうこの際だ……いいだろう、話す」


 悠利と若菜は無言で見つめ合って頷き、シェイドの言葉を待つ様に耳を傾ける。


「私が、過去に出会った者の中に、その人物は居た……名は知らんが、その側に居た者の名は知っている」


「確か、カジュスティン家の者だよな?」


「あぁ、その者はカジュスティン家の王妃、トワ・カジュスティンという女性だ。そして、そのトワという女性の仲間の中に、君と良く似たオーラを持った者が二人居た」


「二人……!? それは、男性? それとも女性?」


「前者の方だ」


 シェイドが言うに、トワというカジュスティン家の王妃の側には、悠利と似たオーラを持った二人の男性が居た。


「男性が二人も……その人らと会ったのって、いつの頃だ?」


「もう結構昔の話だよ。確か、十六年程前の話だったな」


「十六年前……トワ・カジュスティン……若菜さん、トワって人は知ってる?」


「いいえ、残念だけど知らないわ。私がこの世界に来たのは、六年前の時だから。その時から、カジュスティン家の事は知っていたけれど、トワという名の女性は居なかった筈よ」


「となると……六年以上前に居なくなったって事かな……これは、一回エレナちゃんに聞いてみるか」


「私が知っているのは、これで全部だ。その二人の男性の名は知らんが、知りたいのなら『賢者様』とやらに聞くとでもいい」


 シェイドの口から出たのは、『賢者様』という人を指した言葉だった。


「『賢者様』? その人はどこに行きゃ会える?」


「確か、ガガファスローレン国に居ると、聞いた事があるが……」


「若菜さん、今直ぐガガファスローレン国へ向かおう!! 『賢者様』に会って、トワって人と、その二人の男性について聞きゃ、何か分かるかも知れない」


「そうね。では、一度アジトに戻って沙羽も連れて行きましょう。ガガファスローレン国は危険だから、人数が多い方がいいわ」





 ――そして、ガガファスローレン国で卓斗達と再会した、という事だった。


「トワ……確か、フューズさんって人が、エレナを見てトワって人なのかって聞いてきた」


「丁度、エレナちゃんも居るし、都合がいい。それで、エレナちゃん、トワって人はカジュスティン家に居るのか?」


 悠利がエレナに言葉を掛けた。エレナは人差し指を顎に当てて、思い出す様にして、口を開ける。


「トワ……私も、会った事は無いんだけど、お母様の妹の筈よ。妹が居たっていうのは、一度聞いた事があったから」


「妹……エレナちゃんでも会った事が無いとなると、やはり、十六年前くらいから居なくなったって事か……やっぱり、『賢者様』って人から情報を得るしか無いか」


「悠利は何で、そのトワって人の事が知りたいんだ? その人はカジュスティン家の人だろ? 俺ら日本人と関係ねぇだろ」


「それがな、そのトワって人の周りに、俺らと同じでこの世界に飛ばされた可能性のある人が、二人居るんだ」


 卓斗はその言葉を聞いて、目を丸くして驚いた。もしそれが、本当なのだとしたら、日本へ帰る方法が分かるかも知れない。


「後は『賢者様』って人を探すだけだ。卓斗らは会えたのか? 『賢者様』って人に」


「いいや、俺らは今来た所だ。これから、探す所だ」


「なら、今から一緒に行くか? 手取り早く『賢者様』の居所を聞くには、この国の王に会えばいいと思ってる。これから、王邸に向かうんだけど、どうだ?」


「あぁ、一緒に行く」


「分かった。所で、そこの三人の名前は?」


 悠利は卓斗の後ろにくっ付いて居るユニと、楽しそうに笑顔を振りまいているジュリアと、三葉と手を繋ぐモニカに視線を向ける。


「あー、こいつらは副都で俺らの後輩に当たる、ユニとモニカとジュリアだ。因みに、ジュリアも日本から飛ばされて来たらしい」


「まじか!? やっぱり、俺らの後も異世界に飛ばされる事象は起きてんのか……早い所、情報を得るしかねぇな」



 ――卓斗達は、ジャパシスタ騎士団の若菜、沙羽、悠利と共に、ガガファスローレン国の王に会う為、王邸へと向かった。





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