第80話 『思わぬ相手』
シドラス帝国王邸前では、『嫉妬』を司る、ルミナ・フォードラスとエレナ、ヴァリが対峙していた。
「ヴァリ、二人でやるわよ」
「そうっスね……それがいいっス」
ヴァリは立ち上がり、神器レーヴァテインを構える。白い仮面を付け、両腕に青い炎を纏わせるルミナを見つめ、ヴァリは考え込んでいた。
何故、自分の意思で操れる炎を、操れないのか。そして、それをルミナが指摘出来るのかを。
「まずは、どういう仕組みなのか見極めないと駄目っスね。『強欲』のケプリと同じだとしたら、五感を操れる能力系スかね……」
「どういう事?」
「ヴァリの神器レーヴァテインの太陽の方は、炎を自分の意思で、自在に操れるんスよ。燃やしたり、消したり。例え、水のテラが相手でもヴァリが燃やすと意思すれば、水が掛かっても消えないっス。でも、さっきあの人と対峙した時、ヴァリの意思とは反対の事が起きたんス。こんな事、初めてっスよ」
「ヴァリの、その意思ってのを操ってるかも知れないって事ね」
だとしても、その仕組みが全く分からない。ルミナに操られている感覚も無く、何か能力を掛けられた覚えも無い。
だが、確かにヴァリの意思とは反対の事が起きている。そして、その事をルミナが指摘する以上、ルミナの能力としか考えられない。
「どうやってヴァリの意思を操ってるのかは、全く分からないっス……」
「それに、ヴァリの速さにも反応してるしね……剣は持って無い様だけど、あの青い炎は厄介よ」
エレナが見つめる先、青い炎を腕に纏わせ、不気味に立つルミナ。表情が見えないのが、更に不気味さを増す。
「話し合いは済んだの?」
「あんたの正体、絶対に暴いてあげるから。――エリナお姉様じゃ無い事を願ってるけど……!!」
エレナはそう言うと、ルミナの元へと走り出す。エレナは仮面を剥ごうと、ルミナの頭に向けて剣を振りかざした。
ルミナは頭を後ろへと背け、エレナの剣の剣先が仮面を僅かに掠める。
「もう少し……!!」
エレナは振り切った剣を、すかさずもう一度ルミナの頭目掛けて振りかざす。
ルミナはそれを左腕で防ぐ。すると、横サイドから突然ヴァリが姿を現し、神器レーヴァテインの太陽を突き刺す。
「隙ありっスよ!!」
その瞬間、ルミナはヴァリの神器を右手で掴んで勢いを殺す。だが、これでルミナは完全に隙だらけとなる。
その隙を見逃さないエレナは、すかさずルミナの腹部目掛けて、前蹴りを繰り出し、ルミナを蹴り飛ばす。
後ずさるルミナの目の前へと、ヴァリが移動すると、足底をルミナの顎に当てて、一気に上空へと蹴り上げる。
「――っ!!」
空高々に浮かび上がったルミナの元へと、ヴァリはジャンプして追い掛ける。
そして、地面へと叩きつける様にルミナを真下へと、かかと落としで蹴り落とす。
ルミナは地面に落下寸前、両手を地面へと翳すと、青い炎の波動砲を噴射して、その反動で落下スピードを緩める。
だが、地面に着地した瞬間、エレナが剣に炎を纏わせて、振りかざしていた。
「はぁぁ!!」
だが、ルミナは柔軟に足を蹴り上げて、エレナの剣を防ぐと、器用にそのまま、回し蹴りでエレナを蹴り飛ばす。
「ぐっ!!」
すると、ルミナの立つ真上からヴァリが、神器レーヴァテインの月を鞘にしまい、左手の拳に黄色の雷を纏わせて殴り掛かる。
「全身全霊っス!!」
ルミナも左手を上に向かって、ヴァリの殴り掛かかった拳に自分の拳を合わせる様に腕を振りかざした。
二人の拳が合わさった瞬間、衝撃でルミナの立つ地面が大きく抉れる。
するとエレナがすかさず、ルミナの元へと走り出す。ルミナは、ヴァリの左手首を掴むと、王邸の方へと投げ飛ばす。
「おわっ!?」
自分の元へと向かって来たエレナの剣をすかさず、右腕で防ぐと、左手をエレナの胸に当てがう。
その瞬間、エレナも王邸の方へと吹き飛ばされていく。
「ぐっ……!!」
ヴァリは、転がったまま体勢を整えるが、エレナはそのまま勢い良く転がり、王邸の壁にぶつかって勢いが止まる。
「エレナ!! 大丈夫っスか!!」
「大丈夫よ……これくらい……」
そうは言うが、エレナの額からは血が垂れていた。二人掛かりでも、完全に優勢なのはルミナだった。
その事が、かなり悔しかった。自分は強い筈、副都を経て更に強くなった筈、それなのに結果はこのザマだ。
この世界に、自分より強い者など、沢山居るんだと実感さえしてしまっている。その事が何より悔しくて、――妬ましかった。
「いいわね、その表情。嫉妬心に駆られてる様ね」
「嫉妬? 私があんたに? ふざけないで」
「自分の実力がうちを超える事が出来ない。それが悔しいんでしょ? ならあんたは無意識の内に嫉妬してるのよ、うちに。嫉妬は乗り越えれば己を強くする……でも、その逆もある」
「私があんたより劣ってるって言いたいの?」
エレナの苛立ちは収まらない。それこそが、嫉妬の闇の部分でもある。
ルミナに勝てない自分を認め、嫉妬を乗り越えなければ己が強くなる事は無い。
だが、今のエレナはその悔しさ、妬みを怒りに変えてしまっている。それではルミナの思うツボだった。
「劣ってるわよ。あんたは一生うちには勝てない。そのままじゃね。嫉妬心に勝たない限り、乗り越え無い限りうちには勝てないわよ」
「はぁ? あんた何が言いたいの? それじゃあまるで、私を試してるみたいに聞こえるんだけど」
ルミナの言葉にエレナは困惑していた。敵である筈の自分に対して、嫉妬を乗り越えさせようと誘導している。
その事が理解出来ない。何かを企んでいるとしか思えなかった。だが、何故かその言葉が胸に染みてしまう。
「そう、試してるのよ。あんたを強くさせる為にね。特別に教えてあげる。うちの能力の一つを」
「自ら能力の詳細を喋るっスか? 馬鹿にするのもいい加減にするっスよ」
「うちの能力は、相手に嫉妬心を与え、強くさせる事と弱くさせる事。強くさせるとは、嫉妬を乗り越えさせて、己の本当の力を引き出させる。弱くさせるとは、相手の意思を操り、その反対をさせて弱らせる。これがうちの能力よ」
何故、ルミナがわざわざ自らの能力を話したのか、二人には理解出来なかった。
「意思を操り、その反対をさせる……成る程、それでヴァリの太陽が炎を出す事が出来なかったんスね。なら話は早いっス。炎を出さないという意思を持てば、炎が出せるって事っスね」
「甘いわね。そんな簡単な能力じゃ無いわよ。うちは意思を操るって言ったのよ? あんたが炎を出さないって意思を持てば、うちはそのまま能力を掛けない。炎を出すと意思を持てば、能力を掛ける。つまり、うちには魔法は使えないって事よ」
「やっぱり『大罪騎士団』の人の能力は、理解不能っス」
「さっきからあんた、私達を馬鹿にしてるの? 弱くさせる方の能力は自分にメリットがある。でも、強くさせるって何? あんたにとってデメリットしか無いじゃない」
エレナの言う事も正しい。相手を強くさせてしまえば、ルミナは負けるだけだ。そんなデメリットしか無い能力など使い物にならない。
「なら、あんたが強くなって、うちにデメリットしか無いか確認すればいいわ」
敵に強くなれと言われるのも腹立たしいが、その声がエリナに酷似している事も癪に触る。
もしかすれば、本当にエリナなのかも知れない。だが、カジュスティン家の生き残りはエレナだけの筈。それに、『大罪騎士団』に居る様な悪人に成り下がっているなど考えたくも無かった。
「やっぱりあんたは、エリナお姉様じゃ無いわ」
「そう。あんたがどう思うかは自由だけど、これを聞いてもまだそう言い切れる? ――エイナ姉の死を、無駄にしちゃ駄目だ……生きろって、エイナ姉は言った。だからうち達は生きるしか無いんだよ」
「――っ!?」
ルミナのその言葉を聞いたエレナは、目を丸めて驚いた。その言葉は、二年前の滅亡の日にエリナがエレナに言った言葉だ。
そして何より驚いたのは、その会話をしていた時、その場にはエリナとエレナの二人しか居なかった事。長女であるエイナの事を、エイナ姉と呼んでいる事。
正しくそれは、エレナとエリナだからこそ分かる言葉だった。そしてそれは、ルミナがエリナである事を証明している。
「――エリナ……お姉様……?」
「久しぶりね、エレナ」
仮面は付けているが、エレナは完全にルミナをエリナだと信じてしまった。
声が、言葉がエレナを信じさせてしまっている。まだ本当にエリナ自身かどうか分かって居ない筈なのに。
「――信じちゃダメっスよ!! エレナ!! きっと、何かの能力でエレナの過去を知ってるだけっス!! 『大罪騎士団』ってのはそういう悪辣な組織なんスよ!! 言葉は悪いかも知れないっスけど、二年前の滅亡の歴史は真実っス!! エレナはたった一人の生き残りなんスよ!!」
「分からないじゃない……もしかしたら、生きていたかも知れないじゃない……」
「しっかりするっスよ!! 敵の言葉を信じちゃいけないっス!! エレナは騙されてるんスよ!!」
「――分からないじゃない!!」
エレナは突然叫んだ。ヴァリは驚き、思わず喉が詰まる。そしてエレナは、か細く震える声で、
「誰にも分からないわよ……私の気持ちなんて……たった一晩で家族全員が死んで……私だけが生き残って……他に誰かが生き残っていたかもって、思ってもいいじゃない……夢でもいい……私は、家族に会いたいのよ!! ずっと……ずっとずっとずっと……そう思ってたの……やっと……やっと会えたの……やっと会えたのよ!!」
仮にもし、ルミナがエリナじゃ無いとすれば、あまりにも酷過ぎる。その場合の事も考えると、ヴァリは許せなかった。
「このやり方は許せないっス。さっさと仮面剥がして、エレナにも分からせるっスよ!!」
ヴァリが走り出そうとしたその時、エレナがヴァリの前に立ち塞がった。
「エレナ?」
「ごめん、ヴァリ。ここは私にやらせて? ヴァリの言ってる事もちゃんと、分かってるから」
そう言ってエレナは振り返り、ルミナを見つめる。二年間も孤独と戦い、その孤独から解放されるかも知れない。
だが、例え大好きな姉だとしても、『大罪騎士団』という組織に入り、悪さをしている事は許せない。
「あんたは本当にエリナお姉様だと思ってる……確信もした。だって妹だもの、分かるわよ……それくらい。でも……悪に染まったなら、例えエリナお姉様でも、――私は戦う!!」
「そう言ってくれると、思ってたわ。なら、うちの強さに嫉妬し、己の力を引き出すのよ、エレナ」
エレナは地面を勢い良く蹴り、ルミナの元へと走り出す。剣を横に振りかざすが、ルミナはしゃがみ込んで避けると、エレナの腹部に手を当てがう。
その瞬間、エレナは吹き飛ばされ、地面を勢い良く転がっていく。
「ぐっ……私だって、強くなったの……タクトやセラに負けない様に……こんな所で、立ち止まれないの!!」
エレナは立ち上がり、再び走り出す。今度はルミナの腹部目掛けて、剣を突き出す。
だが、ルミナは半回転して避けると、エレナの足を蹴り払い、エレナは地面に倒れる。
そして、エレナの顔目掛けて、ルミナは拳を振るう。だが、エレナは転がって避けると、すかさず寝転んだまま蹴りを入れて、ルミナを蹴り飛ばす。
「いいわね、その調子よ。そして、もっともっと引き出せ!!」
――その頃、地上へとシドラス帝国の民達を避難させたディオス達は、心配そうに上空を見上げていた。
空を眺めても、見えるのは雲だけでシドラス帝国は見えなかった。
「タアくん達、大丈夫かな……」
「心配だね。俺、ちょっと行ってくるから、ミラはティアラちゃん達と一緒に民達を頼む」
そう言ってディオスが掌を合わせると、
「待ってください!! 私も行きます!!」
そう名乗り上げたのは三葉だ。三葉も、卓斗やエレナ、ヴァリが心配だった。
「でも、上は危険かも知れないよ?」
「それでも行きます!! タクトくんやエレナちゃんが戦ってるのに、私だけ何もしないなんて嫌です」
「ミツハちゃん、民達を守る事も立派な聖騎士団の仕事だよ?」
三葉はディオスの言葉に、言い返せないまま、ただ拳を強く握って視線を下げた。すると、
「いいじゃん、お兄ちゃん。行かせてやりなよ。ミツハちゃんだって、好きな人を守りたいんだよ。ここは、私とティアラ? って人だけで十分だからさ。ね? ミツハちゃん」
「ミラさん……」
「はぁ、分かった。ミラ、ここを頼んだよ。ミツハちゃん、行くよ!! 俺の体に触れて」
「はい!!」
三葉はディオスの腕に手を触れる。すると、一瞬にして二人の姿がその場から消える。
――エレナは何度も何度も、ルミナに攻撃を仕掛けるが、全てことごとく躱され、吹き飛ばされていて、既にエレナの体もボロボロで、ヴァリは見ていられなかった。
「ハァ……ハァ……」
「どうしたの? 己の限界を超えるのは、もう無理なの?」
「うるさい……わね……まだ、まだ……よ」
すると、突然エレナの前にディオスと三葉がパッと現れた。そして、ディオスはその場の光景を見て、驚愕していた。
「何が……あったんだ……?」
「ミツハ……ディオスさん……?」
エレナは虚ろな目で、二人の背中を視界に捉える。すると、三葉が振り返り、
「エレナちゃん!! 何があったの!?」
ディオスと三葉の見た光景には、首無しの死体と身元が確認出来ない程にグチャグチャの死体があり、見た事の無い人物が立っている。
「君は一体、誰なんだ?」
ディオスはルミナに向かって話し掛けた。青い炎を両腕に纏わせ、白い仮面を付けているルミナに対して、不気味さを感じていた。
「ミツハ……ディオスさん、邪魔しないで……これは、私の戦いなの……」
「エレナちゃん?」
すると、エレナは体中の痛みに耐えながら、ゆっくりとルミナの元へと歩み出す。
「エレナちゃん、ダメージが酷い……治癒魔法掛けるから――」
三葉がそう言うが、エレナはその言葉を聞かないまま、三葉の横を通り過ぎて行く。
三葉がエレナの腕を掴もうと手を伸ばすと、その手をヴァリが止めた。
「ヴァリちゃん?」
「やらせてあげるっス……本当にやばい時は、ヴァリが助けるっスから」
「どうして……? もうエレナちゃんの体は限界なんだよ?」
そんな事、ヴァリだって重々分かっている。エレナでは、ルミナに勝つ事は出来ない事も。
「あの仮面の人、エレナのお姉さんかも知れないっスよ」
「えっ!?」
カジュスティン家が滅亡して、エレナがたった一人の生き残りだと言う事は、三葉もディオスも知っている。
だからこそ尚更驚いたのと、エレナの事が心配になった。シドラス帝国を襲ってきてる人物が、姉だと分かった時の心情は、誰も想像出来ない。エレナにしか分からない苦悩だ。
「エレナちゃん……」
エレナは歩んでいた足を止め、徐に口を開き始めた。
「――私はずっと、お姉様二人を尊敬していた。エイナお姉様は凄く優しいし、温厚で包容力があって、一緒に居ると凄く暖かい気持ちになれた……エリナお姉様は喧嘩っ早いけど妹想いだったし、面倒見も良かった。強くて、王族だとかに囚われてなくて、そんな二人が憧れでもあったの……だから、だからこそ目の前に居るあんたを、エリナお姉様だと信じたく無かった……この二年間で、エリナお姉様に何があったのかは知らないけど、私が目を覚まさせてあげる――」
――その瞬間、突然エレナの全身を渦巻く様に赤色のテラが包み始めた。
まるで炎の様に立ち昇り、みるみるうちにテラ量が膨張していく。
「な、何だ……このテラ……エレナちゃん、君は一体……」
「私にも分からない……急に力が溢れてきて……」
エレナは自分自身でも分からなかった。だが、一つだけ分かった事は、さっきまでの自分より遥かに強くなっている事に。
「それが、嫉妬心に打ち勝ち、己の力を最大限まで引き出した結果よ。まさか、覚醒するとは思って無かったけど」
「覚醒?」
三葉は聞いた事無い言葉に、首を傾げていた。すると、ヴァリが説明し始めた。
「特定の人だけが導き出せる、体内テラの第二段階の事っスよ。体内にテラを宿す事を第一段階、更にそれをパワーアップさせて、新たな力を解放する事を第二段階、「覚醒」と呼ぶっス」
「第二段階……」
「そうっス。人間はテラを宿すと、最大で第三段階までテラを解放する事が出来るっス。まぁそれは、第二段階を解放できる特定の人の中の更に特定の人だけっスけどね。ヴァリもティアラから聞いただけっスけど、第三段階目は解放しない方がいいみたいっス。テラに完全に乗っ取られ、悪魔と化す……そうなれば、二度と人間には戻れないっス。そして、第三段階は「堕天」って呼ばれてるっスよ」
堕天の存在を、知っている人間は、今の時代では限られている。
ヴァリが知っているのは、千三百年もこの世に生きているティアラから聞いたからだ。
当然、この場に居るディオスも堕天の存在は知らないでいた。
「堕天……体内テラにも、そんな段階があったとは……でも、どうしてティアラちゃんがそんな事を?」
「ティアラは長生きっスから」
「長生き?」
ディオスはティアラの姿を思い浮かべて、首を傾げた。誰がどう見ても幼女な見た目のティアラだが、年齢が千三百歳とは、誰も気付く筈が無い。
エレナの覚醒に、三葉も只々目を奪われた。ルミナも、赤色のテラを全身に纏うエレナを見つめながら、
「強くなってるわね、エレナ」
「最後の確信の為に、あんたの仮面は剥がさせて貰うわ」
そう言ってエレナは、手を翳す。すると、突然エレナの足元の地面から、大量の炎が吹き出してルミナを襲う。
「――っ!!」
まさにそれは、炎の津波の様なモノだった。ルミナには避ける場所も、何か出来る事も無く炎に呑み込まれていく。
一瞬にしてシドラス帝国王邸前は火の海と化した。すると、火の海からルミナが青い炎の波動砲を放出する。
「この力……凄い……」
エレナは自分の力に驚いていた。どんどんと力が漲ってくる感覚、何でも出来そうな感覚が心地よかった。
「これなら、勝てる……!!」
エレナは片足を一歩前へと踏み出して、その場で右の掌を前へ突き出す。すると突風が吹き荒れ、ルミナの青い炎の波動砲と、エレナの炎が消える。
ルミナはそのまま勢い良く吹き飛ばされていく。エレナから前方の地面全体が抉れていた。
ルミナは立ち上がると、仮面に大きなヒビが入る。そして、ボロボロと砕けて素顔が露わになった。
そして、その素顔を見たエレナの確信は確定へと変わった。
「――エリナお姉様……」
「これで本当の久しぶり、だね……エレナ」
――『嫉妬』を司る、ルミナ・フォードラスの正体は、王族カジュスティン家の第二王妃であり、エレナの姉である、エリナ・カジュスティンである事が確定した。




