第131話 『死神の来訪』
エリオ砂漠ヴァルディアの近郊で卓斗とアカサキはスカアハの獣人化した鷲獅子の背に乗って、ユニを救出するべくヴァルディアへと向かっていた。
「――つうか、なんで俺らの味方になろうって思ったんだ?」
それは、ふと思った事だった。獣人種族は真性種である自分達を毛嫌いしていたはず。それなのに、何故スカアハがヴァルディアへと連れて行く様な真似をしているのか疑問に思っていた。
「勘違いしないで。別に、味方になった訳じゃないから。『鬼神』に脅されてるだけだから」
「脅され……?」
「人聞きの悪い事を言わないで下さい。私はただ、ヴァルディアへ案内してくれますかと頼んだだけですよ」
アカサキは優しい笑みを浮かべながら言葉にした。卓斗は横目でアカサキの方を見やると、その笑顔を見て何故かゾッとしていた。
「そんなオーラを放って頼んでも、脅しと変わらねぇと思うんだけど……」
「タクトさんまで、失礼ですよ? 案内して頂く分、危害は加えませんから、安心して下さい」
「嘘ね。どうせ、ヴァルディアへ案内したら殺すんでしょ……」
スカアハのその言葉を聞いて、卓斗は胸が痛んだ。いくらユニを連れ去った連中だったとしても、無駄な殺し合いはしたくないのが本音だ。
「殺さねぇよ。ユニを返してくれたら、それでもう終わりだ。極力、ナデュウとも話し合いで済ませる」
「貴方、ナデュウ様が生きている事、メルカルトから聞いたの?」
「聞いたってか、話してて生きてる感じに聞こえただけだ」
「今代のナデュウ様は優しい人だから、話し合いでってのは成立すると思うけど、いつ暴走するかは分からない。その時は、貴方も『鬼神』も生きて帰れないと思っておいた方がいいよ」
スカアハのその言葉を聞いて、卓斗はメルカルトの言葉を思い出していた。
『ナデュウ様の暴走は、誰にも止められない。今居る獣人種族のメンバー誰一人な。そして、お前らでも無理だ。恐らく、エルザヴェートでも、フィオラって奴でも無理だろうな』
ナデュウが暴走してしまえば、ユニ救出任務に参加している全員が死ぬ可能性もある。かと言って、ユニをヴァルディアに残せる訳もない。
「その時は、俺がナデュウの暴走を止めてやるよ」
「は!? 無理に決まってるでしょ!? 国が束になって掛かっても互角かそれ以上の力なのよ!? 貴方達だけで止めるなんて不可能よ……」
「そんなの、やってみなきゃ分かんねぇだろ。どれだけ強い敵だろうが、絶望的な状況だろうが、俺は仲間を救う為に全力を尽くす」
「馬鹿な人なのね。それじゃ、いつか本当に大切な人を失う事になるよ。そしてそれは、大きな憎しみとなり、貴方が世界を滅ぼす事になる……そうなったら、本末転倒ね」
スカアハのその言葉は、卓斗の試練と重なって聞こえた。黒のテラが世界を終焉へと導く力になってしまえば、卓斗が世界を滅ぼす事になる。スカアハの言葉は妙に卓斗の心に刺さった。
「――その時は、タクトさんが世界を滅ぼすのを、私が止めます」
アカサキの突然の言葉に、卓斗は少し驚いて視線を向ける。
「アカサキさん……」
「仲間が居る限り、止めてくれる者が居ます。もし、タクトさんが世界を滅ぼすのを止めようとした私が、世界を滅ぼす事になっても、また違う誰かが私を止めるでしょう。そしてそれは、繰り返される……タクトさんの心配は杞憂ですよ? タクトさんには多くの仲間が居ます。ですから、タクトさんはタクトさん自身の信念を貫いて下さい。後ろを振り返れば、私達が居ますから」
アカサキの言葉は卓斗にとって救いとなっていた。自分の周りには、頼りに出来る仲間が多く居る。守りたい仲間が多く居る。それらが、卓斗の信念が突き通せる後押しにもなっていた。
例え、ナデュウが遥か強大な敵になろうとも、卓斗は仲間を守る為に戦う。
「ありがとう、アカサキさん」
「――友情なんて、簡単に言葉に出来る。言葉なんか、簡単に発せれる。貴方と『鬼神』は、それを言葉じゃなくて、行動に移す事は出来る? 人は、死を目前にすると我を忘れ、側に居る仲間を助けもしないで、己の命を乞う。私はそうとしか思わない。貴方の言葉は、偽物では無くて、本物だって言える?」
「本物だって証明は、言葉では信じないんだろ? だったら、俺がユニを救って、本物だって認めさせてやるよ」
「貴方の様な人が、世界を左右する存在なんだね。救う事も、滅ぼす事も出来る……私は、貴方じゃナデュウ様に勝てないと確信してる。貴方の本物は、ただの偽物でしかない」
スカアハの言い分に苛立ちを募らせながらも、卓斗は何も言い返せなかった。まだ何も成していない状態では、本物とは呼べない。そこで本物を強要しても、それはただの傲慢でしかない。卓斗が、それを本物だと言い返せる時は、まだまだ先の話なのかも知れない。
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「お前さんと、本気で戦えるのは光栄だな。『最強』の力、見せてみな!!」
全身に炎の様な紫色のテラを纏わせるメルカルトは、そう叫ぶと姿を忽然と消す。だが、グレコは何も動じずに、目を瞑って突っ立っている。すると、
「――それが、『最強』の余裕って事か……!!」
グレコの目の前に突然と姿を現したメルカルトは、膨張した筋肉の付いた右腕を頬に向けて振りかぶる。グレコは両腕でガードして防ぐが、力負けしてそのまま殴り飛ばされる。
「おらぁぁ!!」
高く砂飛沫をあげながら、グレコは勢い良く地面を転がる。その威力は絶大なものだった。
「ガードしても無駄だって。骨が折れるだけだ」
砂埃が消えていくと、グレコは立っているものの、ガードした両腕はブランと垂れ下がっていた。これは、完全に両腕が折れている証拠だった。
だが、グレコは表情一つ変えずにメルカルトを見つめていた。
「両腕を無くした『最強』は、どうやって俺に抗う? おっと、力で勝とうなんざ思わない方がいい。俺の力は、千年以上も培って溜まり込んでるからな。人の骨なんざ、楽勝で折れる。鉄をも砕き、地を割る威力だ。さて、どうする?」
「どうもこうも、『力』など、俺には効かん」
すると、グレコの折れた両腕を緑色のテラが纏い始め、みるみる内に傷は消えていく。
「なっ……!?」
グレコの両腕は完全に治り、掌を閉じたり開けたりしながらメルカルトを見つめる。
「高速治癒だと……? おいおい、それが、お前さんの『最強』の所以ってか? ふざけんな。治癒に長けた所で、戦いには勝てねぇ。俺には勝てねぇんだよ。獣人種族を舐めんじゃねぇ」
「勝手に治癒魔法だと決めつけるな。俺は、治癒魔法など使えん」
「――あ?」
グレコのその言葉に、メルカルトは首を傾げてグレコを睨んだ。それは、意味の分からない言葉だった。
「じゃあ、その腕はなんだってんだ? 折れた筈の腕が完全にくっ付いてる様に見えるが?」
「あぁ、傷は治っている」
「おいおい、頭でもイカレたのか? あぁ? 納得とまでは言わねぇ、理解出来る様に説明しろ」
「お前の様な凡人に、俺の力を説明したところで理解は出来んだろうな。だが、知りたいと言うなら、教えてやっても構わん」
そう言葉にしたグレコに対し、メルカルトは更に苛立ちを募らせ、強く睨み付ける。だが、そんな睨みなど何とも思わないグレコは、
「一つ忠告しておく。俺の力を知った者は、死ぬ運命にある。覚悟はいいな?」
「死ぬだと? 理解に苦しむな、こりゃ。なんだっていい、説明しろ」
「なら教えてやる。俺のこの携える剣、何か分かるか?」
そう言うとグレコは、腰に携えていた剣の柄の部分に手を掛ける。真っ黒で金色の刺繍が入った柄で、金色の豪華な鍔の剣を、メルカルトは見た事は無かった。
「いいや、知らねぇな」
「これは、『神器』だ」
グレコの口から出た言葉は、『神器』だった。それは、フィオラが作った特異な能力を持つ、世界に五つしか存在しない武器だ。だが、既に五つの『神器』の所有者は判明している。
一つは、神器シューラ・ヴァラ。変幻自在に多彩な武器へと変化出来る神器で、セラ・ノエールが所有している。
もう一つは、神器グラーシーザ。無限射程の光速斬撃を放つ事の出来る神器で、ヴァルキリア・シンフェルドが所有している。
もう一つは、神器レーヴァテイン。炎を自在に操り、消えない炎をも作れ、切り傷でさえ死に至らせる事の出来る双剣神器で、ヴァリ・ルミナスが所有している。
もう一つは、神器ヴァジュラ。決して他の剣と刃を交える事の出来ない神器で、アカサキ・チカが所有している。
もう一つは、神器クニクズシ。一太刀で地形を変える程の威力を誇る神器で、セリザワ・ハルが所有している。
この時点で、存在する筈の全ての『神器』の所有者は割れている。しかし、グレコは存在しない筈の六つ目の『神器』を持っていると言った事になる。その、六つ目の神器とはいかに。
「こいつは、神器クラウ・ソラス。『神器』を作ったとされる、フィオラが最後に作った『神器』だ」
「『神器』……当然、知ってる。『黒夜戦争』で活躍した英雄の持つ武器……俺らも苦戦を強いられたってもんだ。だが、お前さんの持つその『神器』を、持ってる奴に会った事が無い」
「それもそうだろうな。神器クラウ・ソラスは、まだ未完成な『神器』だからな」
「未完成?」
「対エルザヴェート陛下用に作った『神器』。自身と仲間に持たせる意味で五つの『神器』を作った。そして、フィオラはエルザヴェート陛下以外にも、対策の一つとして六つ目の『神器』を作っていた。それがこの、神器クラウ・ソラスだ。なら、何の対策か分かるか?」
グレコの言葉に、勘のいいメルカルトは直ぐに分かった。フィオラが六つ目の『神器』を何の為に作ったのかを。
「ナデュウ様……」
「そうだ。六つ目の『神器』は、対ナデュウ用に作られていた。だが、完成を目の前にエルザヴェート陛下の力と共に封印された。未完成にもかかわらず、その力は絶大だかな。自動回復、自動防御、自動攻撃、そして、俺が敵と判断した近くに居る者の魂を削る。これが、俺の持つ神器クラウ・ソラウだ」
「おいおい、そりゃお前さんが『最強』というより、その『神器』が最強なんじゃねぇのか?」
「フン、そうとも言えるな。だが、俺は俺で騎士としての鍛錬を積んだ。俺に勝つには、剣を抜かせない事と、即死させる事以外に無いぞ」
「剣を抜かせずに、即死で倒すか……これまた、難しい話だな。そう簡単に、死んでくれないんだろう?」
「聖騎士団の総隊長だからな。俺が簡単に死ぬ訳にはいかん。俺が死ぬのは、守るべきものを守り通した時だ」
「そうかい。まぁ、俺も簡単には死にやしない。例え、『最強』の肩書きを持ち、神器を扱う者だとしてもだ」
「そうか。なら、俺もこいつを抜いても、少しは楽しめそうだな」
グレコがそう言葉にして、柄の部分に手を置いた瞬間、メルカルトの拳がグレコの目の前まで迫っていた。
「――抜かせたら駄目なんだろう? だったら、抜かせねぇっての!!」
メルカルトは、グレコの頬を拳で捉えた瞬間、地面に叩きつける様に力一杯に振りかぶる。大きな砂飛沫を上げ、砂漠の地は円形に波打ち、その衝撃は凄まじさを語っていた。
その場から距離を取ったメルカルトは、砂埃が舞う場所を見つめる。
「即死級のパンチだ。流石のお前さんでも……!?」
砂漠の地が波打った中心に舞う砂埃の中に、メルカルトは黒く光るものが見えた。そしてその瞬間、全身に重力が掛かっているかの様な重さを感じる。
「ぐっ……何だ、この感覚……体の芯が重く、感じる……!!」
そして、見つめる先の煙が消えていくと、グレコが神器クラウ・ソラスを抜いて、立ち尽くしていた。太刀の様な剣の刃には、黒白い光りが纏い、剣の周りには黒色の球体が四つ飛び交っている。
「ハッ……!! ハッ……!! 息が……苦しい……」
「お前の息が苦しいのは、俺の剣がお前の魂を削っているからだ。さっさとしないと、お前の魂が保たんぞ?」
「へっ……言ってくれるなぁ……おい。こちとら千年以上も経験を培ってるって言ったろ……!! 舐めて貰っちゃ、困るんだよ……!!」
メルカルトは地面を勢い良く蹴って、一気にグレコの元へと近付き、目にも止まらぬ速さで何発も何発も拳を振るう。
「オラオラオラオラァァァァ!!!!」
だが、グレコは目を瞑ったまま、メルカルトの攻撃を全て剣で防いでいく。
「(なっ……!? 見てもいねぇのに、防いでるだと……!? しかもこいつ、体の筋肉一つ使っちゃいねぇ……これが、神器の自動防御だってのか……?)」
「――自動防御に驚いている様だな。神器クラウ・ソラスは、持ち主を必ず守り、敵を必ず仕留める。この『神器』を持つ者は、無敵って事だ。それと、こいつの自動攻撃に俺の力を加えれば……」
「……っ!?」
グレコがそう言葉にした瞬間、メルカルトの両腕は、血を吹き出しながら切断され、地面に転がる。大量の血が切り落とされた腕から溢れ、辺りは一瞬にして血の海と化した。
「がっ……!?」
「お前の拳は、地を割り鉄をも砕くと言ったな? なら、俺の剣は地を斬り鉄をも斬る。お前のたかが強靭なだけの筋肉など、斬るに容易い」
神器クラウ・ソラスによる魂の吸収と、出血多量によりメルカルトの獣人化は解け、意識も朦朧とし始めていた。
「ハッ……!! ハッ……!! ぁうっ……」
「最早、威勢も何も無いな」
グレコはそう言うと、剣先をメルカルトの首元に当てがう。メルカルトは、声に出せないものの目でグレコを睨みつけた。
「さらばだ、獣人種族よ。今日、お前らは俺により滅亡する」
「ぅあ……ぁぁああああ――――」
メルカルトの声にならない叫び声を聞き届け、グレコというより、神器クラウ・ソラスがメルカルトの首を刎ねた。
「辺りに敵は居なくなった、鞘に戻れクラウ・ソラス」
すると、神器クラウ・ソラスはグレコの意思とは別に自動で鞘へと戻っていく。
「よし、俺もアカサキ達を追うか」
『最強』の肩書きを持つグレコ・ダンドールは、神器クラウ・ソラスの圧倒的な強さを見せつけ、勝利した。
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ヴァルディアの古城では、眠るナデュウとユニ、アラ、シエルの元に、『冥域』と呼ばれる場所から、『死神』ハフフェル・ゴーファイルが訪れていた。
「『冥域』? 初めて聞く場所……」
すると、ハフフェルの登場に混乱するユニに、母親であるシエル・レアコンティが口を開いた。
「『冥域』、死界へと繋がる唯一の場所で、死んだ者の魂が集まり、『冥域』の王が、魂を死界へと送る場所。存在は聞いていたけど、まさか『冥域』からの使者が来るとは思ってもいなかったわ」
「お母さんは、どうして『冥域』を知っているの?」
「昔、トワさん達が行った事あるって話を聞いただけよ。私は行った事がないけど、聞いた話では、生者が行ける場所じゃないって……」
すると、シエルの言葉に反応したハフフェルが、悪戯な笑みを浮かべて、
「ウフフフ、良く知ってるね。そう、『冥域』に生者は来てはならない。死んだ者が集う場所だからね。仮に、生者が来れたとしても私が殺すけどね。私は、アデュウ様に仕える『死神』だから、生者の侵入を許さない。でも、その名前は聞きたくなかったなぁ……あの、クソ女……!!」
「その、アデュウって……」
ユニからの問いに、ハフフェルは座っているベッドに眠るナデュウの方へと視線を向ける。
「さっきそこのアラが言った通り、アデュウ様はナデュウちゃんのお姉様だよ。アデュウ様は生まれた時から、死者の魂を引き寄せる力を持っていたの。その力を使って、死者の魂を死界へと送る為に『冥域』を作った。まぁ、引き寄せるって言っても、テラを宿した死者の魂しか引き寄せられないんだけどね。でも、アデュウ様が居なければ、死者の魂は悪の根源となるからね。そうならない為に、死界へと送ってるんだよ」
「そんな場所があるなんて……」
ユニの混乱とは別に、隣に立つアラは完全に動揺しきっていた。それは、ハフフェルの登場が理由の一つだった。
「ハフフェル、お前が何故このタイミングで現れた……!? ナデュウ様はまだ……」
ハフフェルはアラの言葉を遮る様に人差し指を振ると、
「ナデュウちゃんは特別だからね。死んでも死んでも、またナデュウちゃんとして生まれてくる。その魂は生まれ変わっても死界へは行かない。アデュウ様の手元で再び現世へと還る。けど、妹の死期は姉には感じれるんだよ。だからこうして、私がナデュウちゃんの様子を伺いに来たって事。その時のナデュウちゃんをアデュウ様に伝える為にね?」
「ふざけるな……!! 姉ならば、己の足で見に来いと伝えろ!! ナデュウ様の命をなんだと思っている!! ナデュウ様の代替わりをなんだと思っている!!」
「落ち着きなよ、アラ。死んでも居なくならないんだから、いいじゃん。先代は急に死んだからね、アデュウ様も悲しんでいたよ?」
ハフフェルとアラの言い合いに、疑問を抱いたユニも参加し始めた。
「ちょっと待って下さい!! ナデュウちゃんの容態は、私が近くに居れば大丈夫なんじゃないんですか!?」
「へぇ、貴方は『一角獣』をね……やっと、見つけたんだ。でも、残念だけど、ナデュウちゃんには死相が出ちゃってるんだよ。容態が大丈夫だとか関係無しにね? 意味わかる? ――この後に、何かが起こる」
ハフフェルがそう言葉にした瞬間、ヴァルディアの古城に聞き覚えのある声が響いた。
「――ユニ!! どこだ!! 助けに来たぞ!!」
「この声……先輩が近くに!!」
その声は正しく、ユニを助ける為にヴァルディアへと向かっていた卓斗の声だった。
「ほらほら、お客さんだよ? アデュウ様にはちゃんと伝えておくから、じゃあね」
すると、ハフフェルの座っていた場所の空間が歪み始める。
「待て、ハフフェル!! ナデュウ様はまだ!!」
アラの叫び声も虚しく、ハフフェルは悪戯な笑みを浮かべたまま、歪んだ空間の中へと消えていく。
「くそ……!! ナデュウ様は絶対に、死なせん……!!」
ユニ達の願いとは裏腹に、何も知らない卓斗達がヴァルディアへと到着した。