特別話 一幕 『IF THE STORY―DIFFERENT WORLD―1』
君と見る異世界物語を書き始めて一年が経ちましたので、短編ですが特別話を書きました。
もしもの物語の異世界編です。本編とは何の関係もありませんので!!
どうかこれからもよろしくお願いします!!
――王都ヘルフェス王国。この世界の最大の国家であり、多くの騎士や魔法使いの住まう国。大きなこの国には、多くの一族が住んでいる。中には、世界中にまで名を轟かせる王族も住んでいた。
その中の一つ、王族カジュスティン家の第三王妃、エレナ・カジュスティンは、王都の外れにあるお花畑で、両手を広げて風を浴びていた。
綺麗な赤色の髪が靡き、スタイルも申し分無く、世間では絶世の美女などと呼ばれている。
「んー……」
「――エレナ、早く行くぞ」
気持ち良く風を浴びていたエレナに、ある人物が声を掛けた。エレナが声のする方へと振り向くと、そこには二人の女性がエレナを迎えに来ていた。
「セレスタにエシリアじゃない。ごめん、今行く」
一人は、王族ルシフェル家の王妃である、セレスタ・ルシフェルだ。金色の髪色に腰辺りまでの長さのロングヘアを一本に束ねてポニーテールにしている。エレナに劣らず、セレスタもクールで美しい顔立ちをしていた。
もう一人は、王族エイブリー家の王妃である、エシリア・エイブリーだ。薄い桃色の髪色で、肩上程の長さで毛先が緩くウェーブしている髪型。エシリアも、ふわっとした可愛らしい顔立ちだ。
「こんな所で何してたんですか?」
「まぁちょっとね。今日、いい夢見たのよね。凄く壮大で、悲しい瞬間もあったけど、凄くいい夢だったの」
「夢? それで、こんな所で思い出に浸っていた訳か」
「覚めたくなかったな、今日の夢は」
エレナは未だに、昨晩に見た夢の思い出に浸っていた。時折、こうして夢を鮮明に覚えている時があるが、今回の夢はそれとはまた違う夢だった。
とても長く感じ、まるで夢の方が現実世界と思えてしまう程の、壮大な夢だったのだ。
「どんな夢を見たんだ?」
「一人の男の子と私が出会うんだけど、その子と一緒に、世界の困難に立ち向かって行くって夢だった。私はその子の事が好きで、一緒に居るのが楽しかった。何気ない会話や、一緒に戦ったり、本当に壮大な夢だったわ」
「へぇ、良いですね!! 私もそんな夢を見てみたいです」
エレナの昨晩の夢の話をしながら、三人の王妃はある場所へと向かっていた。それは、副都と呼ばれる学校がある場所だ。
しばらく歩き、副都に到着すると、門の前にある一人の男性が立っていた。その男性は、苛立っている様子でエレナ達の方をジッと見つめている。
「――遅いぞ、貴様ら」
「すまない、兄上。少し寄り道をしていてな」
セレスタがその男性を兄上と呼んだ。この男性の名前は、王族ルシフェル家の王子である、オルヴァ・ルシフェル。
オルヴァは、セレスタの兄であり、副都の騎士学校の教官でもある。騎士学校は日本の学校とは少し違い、クラスは一つしかない。年齢に制限も無く、エレナ達と同じ歳で教官を務める者も中には居る。
「何時だと思ってる? いいか、次遅刻して来たら貴様ら全員、副都外周十周だからな」
「もう、オルヴァは細かいのよ。大してそんなに時間過ぎてないわよ」
エレナも幼い頃からオルヴァとは知り合っている。というのも、カジュスティン、ルシフェル、エイブリーの三王族は仲睦まじい関係だ。
「黙れ。いいから、さっさと教室に入れ」
口は悪いが、オルヴァは妹であるセレスタの面倒見は良く、その友達であるエレナやエシリアとも仲良かった。
教室に入ると、エレナ達以外にも数名の生徒が既に到着していた。だが、そこには男性の姿は無く、女性の姿しか見えなかった。
窓際の列の一番後ろの席には、誰とも喋らずに窓から景色を眺める女性、セラ・ノーエルの姿があった。
「おはよ、セラ」
「貴方達、遅れて登校なんて、流石王族ね」
「王族は関係ないでしょ。ていうか、今日私が見た夢で、セラが神器を手にしてたわよ」
「私が? どんな夢を見ていたの? 神器なんか所詮は神話の話だから、夢らしい夢ね」
この世界では、神器の存在は神話として有名だった。存在しないが、神が持っていたとされる五つの武器の事だ。
すると、教室の中に一人の男性が入って来る。この女性しか居ない教室では、目立って仕方が無いが、生徒達は何の反応も見せない。何故なら、その男性はこのクラスの担任だからだ。
「はい、席に座って。出席取るから」
担任の男性の名は、ディオス・グランヴァルト。この副都で教官を務める一人だ。ディオスは、教卓の前に立つと、出席を取り始める。
「エシリアちゃん、セレスタちゃん、エレナちゃん、セラちゃん……」
次々に名前が呼ばれ、返事をする訳でも無く、名前を言って姿を確認しているだけだ。
「レディカちゃん、イルビナちゃん、カルナちゃん、ミラ……」
レディカ・ヴァージアス、イルビナ・イリアーナ、カルナ・モーヴィス、ディオスの妹であるミラ・グランヴァルトの姿もあった。
「エリナちゃん、エイナちゃん。これで、全員居るね」
エリナ・カジュスティン、エイナ・カジュスティンは、エレナの姉だ。
この十名が、副都の騎士学校のクラス全員だ。
「早速だけど、今日はこのクラスに新たなメンバーが加わる事になった。じゃあ、入って来てくれるかな」
ディオスがそう話すと、廊下で待機していた一人の人物が教室に入って来る。その瞬間、クラスはどよめき始める。
「じゃあ、自己紹介して」
「はい……!! えーっと、新しく副都でお世話になる、タクトです。よろしくお願いします」
新たなメンバーとは、このクラスでたった一人だけとなる男性、タクトという少年だった。
不定期にもしもの物語を更新していこうと思ってます。
二年目に向けて、これからも書き続けるので
よろしくお願いします!!