特別話 一幕 『IF THE STORY―JAPAN―1』
君と見る異世界物語を書き始めて一年が経ちましたので、短編ですが特別話を書きました!!
もしもの物語の日本編です。本編とは何の関係もありません!!
どうか、これからもよろしくお願いします!!
――秋。季節は夏を終え、冬を迎える段階である秋を迎えていた。
気温は少し肌寒くはなって来たが、夏の暑い日々を過ごし、涼しいと感じている者も居る。その逆もまた然り。
ここは、東京都のとある高校。夏休みも終わり、久々に再開した友達などと楽しく会話をしている高校生が多勢いる中、宿題を終わらせる事が出来ずに絶望に包まれる者も数名。
そんなこんなで、二学期がスタートしたのだ。
「やべぇ……宿題が終わらねぇ……何でやっとかなかったんだよ、俺……」
そうブツブツと言葉にして、真ん中の列の一番前の席で机に上体を預けて負のオーラを放っているのは、この高校に通う一年生、越智卓斗だ。
彼は、夏休みを謳歌し過ぎて宿題の存在を忘れていた。というより、最終日である昨日に宿題をしていない事に気が付いた。
丸一日を使って大急ぎで宿題をしたものの、三分のニ程度しか終わらせる事が出来なかった。すると、
「どうかしたの?」
そんな卓斗を見ていた女子生徒が、卓斗の席の隣に座って声を掛けた。茶髪でお団子ヘアの可愛らしい女の子だ。
「あー……宿題終わってねぇんだよ……」
「もう、だから夏休み入る前に言ったのに。卓斗くん、バイトと遊びばっかだろうから、宿題もちゃんとするんだよって」
「はい……俺が悪かったです……あっ!! そうだ、三葉!! 数学のやつ写させてくれよ!!」
卓斗が突然として立ち上がり大きな声を出すと、三葉と呼ばれた女子生徒は驚いた表情を見せる。
「だ、駄目だよ!! ちゃんとして来なかった卓斗くんが悪いんだよ!!」
「いいじゃんかよぉ、三葉のケチ」
卓斗は不貞腐れて席に座ると、再び机に上体を預けて現実逃避しようとする。
誰しもが経験はあるだろうが、夏休みの宿題が終わってなくて、学校で終わらせなければいけない時こそ、やる気が出てこない。
「――おはー、あれ? 卓斗くん、どしたの?」
「おはよう、李衣。卓斗くん宿題して来なくてね……」
教室に遅れて入って来たのは、三葉の幼馴染である天宮李衣だ。教室には既に肌寒さからかブレザーを羽織る者と、まだ大丈夫だとカッターシャツのままの者、カッターシャツの上にカーディガンを着る者と三者三様だった。
寒さに弱い三葉は、ブレザーを羽織っているが、李衣はまだピンク色のカーディガンを着ていた。
「やっぱり? 卓斗くんらはそんな気がしてたんだよねー。悠利くんも絶対にして来てないでしょ。蓮くんは絶対してると思うけど」
そう言って李衣が教室を見渡すと、悠利の姿は無く、窓際の一番後ろの席で神谷蓮が必死に宿題をしているのが視界に映った。
李衣は、まさかあの神谷蓮が宿題をして来なかったのか、と驚きと興味を持ち、冷やかしに行こうと蓮の元へと歩み寄る。
「おはー、蓮くん」
「おはよ、天宮さん」
書く手を止めないまま、挨拶を交わした蓮は、李衣が自分を冷やかしに来たのだと、即座に悟り口を開いた。
「ちなみに言っておくけど、これは僕の分じゃないからね。僕はしっかりと最初の一週間で終わらせてるから」
「へぇ、もしかしてその宿題……」
「そう、御子柴の」
蓮は何故か、御子柴悠利の宿題を必死に書いていた。当の本人は何処かへと行っていて不在で、それでは蓮があまりにも可哀相に見えた。
「何で、蓮くんが悠利くんの宿題を?」
「あの男は本当に酷い奴だよ。合コンに参加するかしないかをネタに宿題をやらせてるんだよ」
蓮は悠利が開く事になった合コンに行かない為に、仕方がなく宿題をやっていた。
「ふーん、それで悠利くんは?」
「さぁね。今頃、どっかで女の子と話してるんじゃないかな」
――三階にある三年生の教室に悠利は向かっていた。自分のしなかった宿題を蓮に押し付け、それでも気分良く歩いている悠利。すると、
「あら、悠利くん。おはよう」
悠利に声を掛けて来た女子生徒は、橙色の髪色をした大人びた女性だった。
「あ、若菜先輩、おはよーっす。あれ、今日は一緒じゃないんですか?」
その女性は、清水若菜。この高校の生徒会長であり、マドンナ的存在だ。
「いつも一緒って訳でも無いけど。多分、屋上に居ると思うわ。それより、悠利くんはどうして三年の教室に?」
「あー、ちょっと合コンの段取りで」
「そう……あんまり、女の子を泣かせる様な行動は慎むのよ?」
「大丈夫っすよ!! 泣いてくれる様な側に居る女の子も居ないんで!! じゃ!!」
悠利はそう言うと、教室の方へと入っていく。若菜はその背中を見届けると、微笑ましい表情ではにかんだ。
――屋上では、一人の男子生徒が朝のホームルームをサボろうと赴いて居た。
「何とか若菜にバレずに来れたけど、絶対ここに居るって分かってるよな……あいつ……」
その男子生徒の名は、芹沢春。生徒会長であり、マドンナ的存在の若菜とは、恋人の関係だ。
そんな事もあり、周りの男子生徒には僻まれている。それで、時折屋上に来ては授業をサボっていた。
屋上は誰も居ない空間で、風が気持ちよく、芹沢春にとって憩いの場となっていた。この日も、そうなる筈だった。だが、
「ん? げっ……先客いんじゃんかよ……しかも、イヤホンから音楽ダダ漏れだしよ……」
春の視界に映ったのは、一人の女子生徒だった。黒髪でショートヘア、イヤホンで音楽を聴きながら、冷んやりとした風を浴びている。
彼女の名前は楠本繭歌。三葉、李衣とは幼馴染だ。彼女もまた、騒がしい教室よりも、こういった静かな場所を好む。
――そんな彼らの、もしもの日常が始まろうとしていた。
不定期にもしもの物語を更新していこうと思ってます。
二年目に向けて、これからも書き続けるので
どうかよろしくお願いします!!