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君と見る異世界物語  作者: 北岡卓斗
第三章 『聖騎士団』
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第100話 『大罪騎士団を統べる者』


「お前らは今ここで……ぶっ殺してやる!!!!」


 卓斗は黒刀を片手に、一気にハルの元へと走り出す。そして二人は同時に黒刀と剣を振りかざし、交えた瞬間に地面に大きなヒビが入る。


「貴様が黒のテラの所有者だという事は、前に会った時に見抜いていた。俺としては、貴様の黒のテラを最後に奪おうと思っていたんだがな」


「お前らなんかに、黒のテラは渡さねぇ。俺のも、他の人のもだ」


「さっきの『賢者』の時は失敗したが、貴様ら黒のテラの所有者は生け捕りにする」


 そう言うと、ハルは一気に交える剣を振り抜く。その瞬間、卓斗は弾き飛ばされ地面を勢い良く転がるが、直ぐに体勢を整える。


「『賢者』? お前まさか……ウィルさんに何かしたのか!!」


「あぁ、殺した。だが、その所為で『封印』の黒のテラは、また違う誰かに宿った様だ」


 ハルの言葉を聞いた瞬間、突然としてハルは卓斗の方へと引き寄せられる。


「ウィルさんを殺した……!? ふざけんじゃねぇぞ!!」


「ほう、今度は『引力』の力か……」


 ハルを引き寄せる卓斗は、タイミングを合わせて黒刀を振りかざす。だが、ハルもすかさず、左足で卓斗の黒刀を持つ腕を抑えると、右足で卓斗を蹴り飛ばす。


「ぐっ……!!」


 吹き飛ぶ卓斗が地面に落ちて転がるよりも速く、ハルは卓斗の元に移動し、黒白く光り出す剣を卓斗に向けて振り下ろす。

 卓斗も黒刀でそれを防ぐが、力に負けて一気に地面に叩きつけられる。その衝撃で、地面が大きく抉れ地面の欠けらが辺りに飛び散る。その欠けらは、物凄い勢いでヴァリ達の元へと飛んでいく。


「私に任せて」


 すると、遅れて到着したティアラが前に立ち、飛んでくる地面の欠けらに向けて手を翳す。すると、広範囲のバリアを張り防ぐ。


「流石、ティアラっスね!!」


「余裕振り撒いてる場合じゃないでしょ、ヴァリ」


 そう言葉にするティアラの視線の先には、四人の『大罪騎士団」』のメンバーがゆっくりと歩み寄っていた。


「俺らもさ、見てるだけだとつまんねぇからさ、お前ら相手してくれよ。面倒臭ぇけど」


「この間のお姉さんも居るんだね」


 ヴァリも『大罪騎士団』のメンバーとは一度会っている。その時は、ケプリにより欲を奪われた経験があった。


「ケプリも居るんスね。今回は前の様にはいかないっスよ」


「貴方の、欲は、もっと、欲しい。もう一度、私に、頂戴?」


 すると、ヴァリ達とファルフィール達の間に二人の人物が現れた。一人は真っ赤な髪色に腰辺りまでの長さでポニーテールの髪型。黒色ベースの騎士服で、肩から赤色のラインが入っていて、赤色のベルトを巻いている。

 頭には黒色のマリンキャップの様な帽子を被っていて、背中には太刀を携えている。真紅の瞳をした女性。

 もう一人は、筋肉質で屈強な体つきをしていて、金髪のソフトモヒカンの髪型。女性と同じ騎士服を着ていて、左袖の部分だけノースリーブの様になっている。ズボンは膝上までの半ズボンでピチッとしている。碧眼でダンディな顔付きの男性だ。


「――卿等が『大罪騎士団』とやらか」


「へぇ、可愛いboyも居るのね」


「アスナ国王女とサム!! 来てくれたんスね!!」


 その場に現れたのは、卓斗達の後を追ってマッドフッド国へと向かっていた、ガガファスローレン国の国王女アスナ・グリュンデューテと、その側近であるサムだった。


「知ってる奴が来たんだけど」


「ファルフィールお兄ちゃん、あの女の人知ってるの?」


「ガガファスローレン国の国王女で、『戦女神』と称される程の戦闘能力に長けた女だ。面倒臭ぇのが来たぞ」


 アスナが背中に携える太刀の柄を掴むと、鞘が徐々に透明になっていき、やがて消えると、アスナは太刀を構える。

 真っ黒な刃に峰の部分には赤色のラインが入っていて、卍の形をした鍔が付いている。


「丁度、卿等と戦ってみたいと思っていた所だ」


 すると、アスナの隣にエティアが立ち、ファルフィール達を見つめながら話しかける。


「来て頂いてありがとうございます、アスナさん。ですが、貴方達だけに任せる訳にもいきません。私の大切な国を……何よりも大事な民達を……私も本気で戦う!!」


 すると、エティアの首飾りが白く光り出し、そこから一人の人物が現れた。


「――あー、久々の外の空気だな。って事は、お嬢は大分と怒ってんのか?」


 その人物は、黒髪で肩までの長さでオールバックの髪型。白いシャツの様な物を着ていて、その上には黒色のジャケットの様な物を羽織っている。

 ライダースの様な黒色のズボンを履いていて、赤色の瞳をした男性だ。


「桃髪のお姉さん、それって召喚体だよね? 人の形をした魔獣……人型魔獣。存在は知ってるけど、まさか扱う人に出会えるとは思ってなかったね」


「あ? って事は、あいつは自分の中に魔獣を飼ってるって事か? 気持ち悪ぃな」


 ヴァルキリアの言葉を聞いたファルフィールは、吐く動作をして嫌悪感を見せる。


「この子は魔獣だとしても、大切な私の家族なの。ケンキって名前だってちゃんとある。馬鹿にした事、許さない」


「へっ、お嬢が怒ってんのを見るのも、たまにはいいな。しゃあねぇ、いっちょやるか」


 人型魔獣のケンキはエティアの肩に手を置くと、二人を白い光が包み込む。

 そして、白い光が消えていくとケンキの姿は消え、エティアの姿が変貌していた。


 綺麗な桃髪だった髪色は黒髪になり、一つに結んだお下げで肩の前に掛けている。

 瞳の色は変わらず赤色の瞳をしているが、若干のタレ目だった目は、ややつり目になり、凛々しい顔立ちになっていた。

 手には白色の大剣を持ち、華奢な体つきにも関わらず、楽々と持っていた。


「ほう、それが召喚体との合体というものか。初めて目にするな。だが、卿は戦闘は好まないのでは無かったか?」


「私の国が壊され、民達が殺されたとなれば話は別です。アスナさんこそ、余裕を持ち過ぎるのは禁物ですよ。陛下が言っていた様に、この人達は得体も知れない能力者達ですから」


「卿に心配される筋合いは無いな。無論、相手に隙を見せる程、余も甘くない」


 すると、アスナとエティアが会話をしていると、その場にヴァリとティアラも並び立つ。


「エティアのその姿は、久々に見るっスね。なら、ヴァリも本気でいくしかないっスね」


 そう言うと、ヴァリは腰に携えていた二本の双剣、神器レーヴァテインを抜く。


「神器レーヴァテイン……それも、初めて目にするな。マッドフッド国とやらは、侮れん国の様だな」


「褒めて貰えるのは嬉しいっスけど、それはあの人達を倒してからにするっスよ」


「ヴァリ、斜め左上よ」


「りょーかいっス!!」


 ティアラがそう言葉にした瞬間、ヴァリは斜め左上の方向に太陽の神器レーヴァテインを振りかざす。

 その瞬間、目にも止まらぬ速さで飛んで来ていた斬撃を防ぎ、横方向に弾き飛ばす。


「わお、今の良く防いだね。結構全力を尽くして放ったんだけどなぁ」


 その光景を見たヴァルキリアは、驚いた表情を見せていた。人の視界には捉える事は不可能な程の速さで放った斬撃を、いとも簡単に弾かれたからだ。


「成る程、余が防ぐよりも速く反応するとはな」


「私も、目には見えなかったけど、肌で感じる事は出来た。ティアラの助言もあれば、何とか戦える」


 そして、アスナやエティア達と『大罪騎士団』がゆっくりと歩み寄って来る。


「貴方は、私が、戦う」


「ヴァリもケプリと戦いたいって思ってたっスよ」


「ヴァリと戦うなら、私もオマケに付いてるけどね」


 ヴァリとティアラが立つ前に、『強欲』を司る、ケプリ・アレギウスが立つ。


「僕の相手はお前か。気持ち悪い格好をしているね」


「私には分かる。youはその見た目でladyね。boyishなのはいいけど、ladyらしく手入れくらいしたらどうなの?」


 アスナの側近であるサムの前には、『憤怒』を司る、セルケト・ランイースが立つ。


「お姉さんは、私が相手だね。召喚体使いと戦えるのは楽しみだなぁ。直ぐにへばって殺されないでね?」


「今の私はいつもの私じゃ無い。マッドフッド国の民や、グランディア騎士団の為に、国王女として私は戦う」


 人型魔獣ケンキと合体したエティアの前には、『傲慢』を司る、ヴァルキリア・シンフェルドが立つ。


「っつう訳で、俺の相手はあんたかよ。くそ怠ぃな」


「余は楽しみにしているぞ。卿の能力とやらを」


 ガガファスローレン国の国王女であるアスナの前には、『怠惰』を司る、ファルフィール・オルルカスが立つ。


 『大罪騎士団』との激戦が再び始まろうとする最中、ハルと戦闘していた卓斗は地面に叩きつけられ、ハルはすかさず卓斗の腹部に向かって剣を突き刺そうとする。

 だが、卓斗は転がって避けると、すぐさま手を翳して『斥力』の力でハルを吹き飛ばす。

 勢い良く転がるハルは、器用に地面に手を置いて体を起こし、体勢を整える。


「手を翳してから捉えるまでが速いな」


「お前に会ったら、一つ聞きたい事があったんだ」


「俺に聞きたい事……か。世界の終焉については、一度話しているが?」


「そうじゃねぇ。お前は、芹沢春なのか?」


 卓斗がハルに対して聞きたい事は、ハルの正体が若菜の幼馴染であり恋人だった芹沢春なのかだ。

 その言葉を聞いたハルは、黙ったまま卓斗を見つめている。


「若菜さんの幼馴染で恋人だった芹沢春なのか?」


「ワカナか……久しい名前だな。何故、貴様がワカナを知っている?」


「やっぱり……芹沢春なのかよ……何で……何で、若菜さんを裏切る様な事してんだよ!! カジュスティン家の事だって……!!」


 卓斗が話している最中に、ハルは卓斗の目の前に瞬間移動して胸ぐらを掴む。


「貴様、ワカナとはどういう関係だ?」


「同じ日本からこの世界に来た仲間だ!! お前も日本人だろ……何で日本人であるお前が……この世界を終焉へと導こうとしてんだよ!!」


 卓斗が激昂して叫ぶと、ハルは卓斗の足を払って倒し、馬乗りになり剣先を卓斗の顔に向ける。


「ぐっ……」


「そうか、貴様も日本人だったのか。俺の計画を行う上で、黒のテラを所有する貴様との対立は避けれないと思っていたが、まさか日本人とはな。だが、貴様とお喋りする気は無い」


 そう言葉にすると、卓斗の胸に手を当てがい透明のテラを纏わせる。


「俺が創り変えるこの世界に、人間は必要無い。貴様も無駄な抵抗をせずに、無力のまま世界が終わるのを見ていろ」


 その時、突然ハルの元にヒナが近付き、黒刀を振りかざす。ハルはすぐさま剣で防ぐが、その隙を突いた卓斗が『斥力』の力で吹き飛ばす。


「どうして……ハァ……ハァ……タクトがここに……?」


「マッドフッド国が襲われてるって聞いて駆け付けた。遅くなって悪ぃ……」


 すると、吹き飛ばされたハルが立ち上がると、服の汚れを手で払って取りながら、


「その状態でまだ動けたか。貴様の根性だけは褒めてやる」


「ヒナ……フューズさんは……?」


「お父さんは、私の為に死んだ……私が死なせたのも……同然ね……」


 ヒナからの言葉に、卓斗は一度冷静になっていた気持ちが、再び怒りで乱される。


「くそ……俺が来るのが、もう少し早かったら……ウィルさんも……フューズさんも……お前らは絶対に許さねぇ……!!」


 卓斗は立ち上がり、殺意をハルに向ける。だが、そんな卓斗達の気持ちを嘲笑うかの様に、ハルは不敵な笑みを浮かべていた。

 すると、ハルの元にコペルニクスが歩み寄って来る。


「ハルさん、私の手助けは必要でしょうか?」


「いや、暫くはいい。久々の戦闘で心が踊っている様だ。お前はそこで見ていろ」


「そうですか。油断は禁物なさらない様にして下さいね」


 コペルニクスの言葉を聞いてハルは不敵な笑みを浮かべると、卓斗とヒナの元へと走り出す。

 ハルは右に左にと剣を連続で振りかざし、卓斗はそれを黒刀で防いでいく。

 ハルは卓斗の黒刀を払い上げると、すかさず隙の生まれた腹部へと手を伸ばす。


「黒のテラ貰うぞ」


 だが、その瞬間に卓斗の腹部とハルの掌の間に、小さな黒色の玉が飛んで来る。


「――っ!!」


「チッ……」


 すると、黒色の玉は黒白く光り出し、その場で大爆発を起こす。卓斗とハルは吹き飛び、両方とも地面を勢い良く転がる。

 ハルはすかさず体勢を整えたが、卓斗はそのまま倒れたままだ。


「痛って……」


「ごめん、タクト……他に方法が無くて……」


「ヒナの仕業か……大丈夫だ、助かった」


「邪魔ばかり面倒だな、貴様」


 立ち上がった卓斗とヒナを強く睨み付け、ハルはどんどんと殺気を込めていく。

 そして、掌を卓斗達の方へと向けると、小さな黒い玉を創る。黒い玉には黒白い雷が纏い、轟音を轟かせる。


「これで貴様らを動けなくしてから黒のテラを奪ってやる」


 ハルはそう言葉にすると、黒白い雷を纏わせる小さな黒色の玉を放つ。地面を大きく抉りながら、段々と卓斗達の元に近付いていく。


「ヒナ!! 俺の後ろに居てろ!!」


 そう言ってヒナを背後に回すと、卓斗は黒色の玉に向かって手を翳す。そして、『斥力』の力を使って防ぐ。

 だが、黒色の玉の威力は凄まじく、『斥力』の力を使っても弾く事が出来ず、互いに押し合って激突する。


「ぐっ……!! 負けるか……!!」


「無駄な足掻きを」


 卓斗の放った『斥力』の力は段々と力負けし、押されていく。そして、黒色の玉が卓斗達の目の前まで迫った瞬間――、


「――っ!!」


 突然として、黒色の玉は無かったかの様に消える。弾かれた訳でも、何かの魔法で消された痕跡も無い。


「この感じ……」


 ハルは自分の掌を見つめながら、言葉を零した。違和感のある感覚。すると、卓斗とヒナの元に三人の新たな人物が駆け付けた。


「遅れてすまない、タクト。僕達も手助けするよ」


「私も同じくです」


「マッドフッド国をここまで追い詰めるとはのぅ。やはり、『大罪騎士団』とは、侮れん組織じゃの」


 遅れて駆け付けた三人は、龍精霊魔導師フィトス・クレヴァスと龍精霊セシファ、そしてエルヴァスタ皇帝国の皇帝陛下であるエルザヴェート・エルヴァスタだ。

 ハルの放った黒色の玉を無かった事にしたのは、龍精霊セシファの能力だ。

 相手としてのセシファの能力は、余りにも厄介だが、味方となると頼もしく感じる。


「エルザヴェートさん!! フィトスにセシファも……」


「休戦協定を結び同盟国である以上、妾にも戦う義務があるからのぅ。フィトスとセシファにも一緒に来て貰ったんじゃ」


 協力な助っ人の登場に、卓斗達の士気も上がっていく。だが、それでも『大罪騎士団』に勝てるという訳でも無い。


「エルザヴェートにセシファ、それから『重力』の黒のテラの所有者か。次から次へと……」


 ハルは新たに現れたエルザヴェート達を睨む。人数では完全に不利だが、ハルは悠々な態度を見せていた。


「エルザヴェートさん、あいつが『大罪騎士団』のリーダーのハルだ」


「ほう、この小僧がのぅ。ならば、其方をここで倒さねばならんの」


「何人増えようが同じだ。貴様らには絶望を味わらせてやる」


「ハルさん。流石にこの人数では大変でしょうから、私も参戦させて頂きますね」


 コペルニクスがハルの隣に立ち、エルザヴェート達を見つめながら不敵な笑みを浮かべていた。


「じゃあ、女性の方は僕とセシファが受け持つよ」


「無理すんなよ、フィトス」


「僕に心配は不要だよ、タクト。セシファと僕は最強のコンビだからね」


「なら大丈夫だな。エルザヴェートさん、俺らはハルを倒すぞ。世界を終焉なんかに導かせねぇ」



 ――『大罪騎士団』との、世界の終焉を賭けた本格的な攻防戦が始まる。






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