素材調達.02
路地裏を抜けると明るい表通りに出た。っと…髪の色をそのままにしていた。
ウィッグを被り、しっかりと調整する。
よしよし、さてと…
「先ずは門を抜けるか」
そう、門を抜けるのが一番だ。私はいつも出掛けるときはこっそりだっさたが、今回は流石に無理だ。
何故か?それは今回は素材調達。つまり、その事を申請しないとならない。が、私は本来はここには居ない人物。
なので今回も用意しておきました。テッテレー。偽造パス。
これを使えば通れる。ま、当たり前だな。
暫く歩いていると八百屋のおじさんが話しかけてくる。
「お、嬢ちゃん見たことのない顔だな!なんか果物買ってくかい?」
「じゃあそことそれとそれを」
匂いで好物のフルーツを選ぶと指定した。おじさんははいよっと笑顔で麻袋に詰めて渡してくれた。私は少し多めに払うとお釣りを渡される前にそこを退いた。
さて…と。
私は選んだ果物の中でリンゴを取り出すと齧りながら門へと進む。
と、そこで久しぶりに聞きたくない声が聞こえた。
「か、鍛冶屋⁉︎」
そう、以前ズタボロにしたあの憲兵が居た。
なんで気付くんだよボケ。
「どちら様で?」
取り敢えずここでしばくのはあれだし、誤魔化して逃げるか。
「お、お前だろ!マスハナ・キキョウ‼︎」
「私、メルと申しますが?」
「う、嘘つけ!その帽子を外せ!どうせ盲目…だ…ろ?」
帽子を剥ぎ取るものの、そこには二つの目。義眼をさっき嵌めただろ?
おかげで固まってるのなんの。
「え?目?え?」
「人違いでしたよね?では」
私はそう言ってその場を離れた。が…
「え?でも…何処へ行くんだ?」
「何でそんな事を言わなくてはならないのですか?」
「…この町の名簿で君は見た事が無い」
「最近引っ越しましたので」
一々細かい奴だ。と言うか早く行きたいからどっか行ってくれ。
「…何処にお住まいで?」
「…『転移」
「な⁉︎」
面倒だ。騒がれそうだが、これで門前まで行った方が楽だろう。
何故最初からこれを使わずに門を通ろうとしてるのかと言うと、前述した通りフルトーを討伐した後、正式に町の中に入れる為だ。しっかりとその辺はしておかないと後々面倒だ。
商人に少しは回せるし、仲間のチンピラ達を集めてパーティーも出来るし、良いことの方が多い気がする。
なのでわざわざ門を通るのだ。
本来なら面倒だから転移で行きたいところだが、仕方がない。
暫く歩くとようやく門が見えてきた。あの憲兵…絶対今度あったらウチのを嗾けてやる。
「はい、パスです」
「…確認した、どうぞ」
門番が何か言う前に偽造パスを見せる。あっさりと通してもらえる。
さっそく向かうか。