絶望
私、リディア・ハインリッヒ・アーノルドは今日信じられない言葉を聞いたわ。
「リディア・ハインリッヒ・アーノルド!俺はお前との婚約を破棄するぞ!」
突然突きつけられた婚約者のエルク・カスター・クレイグ王子からの一方的な婚約破棄。はい?私何かしました?
「何か言い分はあるか?」
「言い分も何も…私に何か落ち度がございましたか⁉︎」
「落ち度?落ち度だと‼︎貴様が何をしたのか分かっているのか!」
ええ⁉︎本当に何かしましたか⁉︎私には全く身に覚えがございませんが?
何故⁉︎
「貴様はこの私と親しくしていた平民のメイを虐めていたのだろう!」
そう言うと王子の背後から栗色の髪のタレ目の美少女が出てきた。
…………………誰?
「王子…その方は?」
「今更何を白バックれる!貴様が虐めていた相手だろう⁉︎」
「いや、本当に誰ですか?」
全く見た事も喋った事もございませんが?
「うう…エルク様、助けてください…あの方が私を…」
「ほら見ろ!この大嘘つきめ!」
「だから誰!」
本当に誰ですか⁉︎知らないんですけど⁉︎そもそも何で私を知ってるんですか?
まぁそれは兎も角…
「私は何もしてませんが?」
「誰が貴様の嘘を信じるか!この書類を見ろ!」
ばさっと目の前に投げられる書類。拾い上げて固まる。
何これ…賄賂?勝手に使い込まれた国庫の額?
いやいや!知らないですし!
「これを見てまだ言うか?」
「だからこんなもの知りませんし、メイ様ともご愛したことございませんが⁉︎」
本当に知らないんですって!しかしそう言う前に私は地面に抑え込まれていた。
「ひい!エルク様!あの方、今私を殺してやるって目をしてました!」
「何だと…おい、マルク」
マルク・フォード。王国騎士団の団長兼王子の護衛騎士。その方が私を全力で組み伏せている。
「何を為さるの…!」
「動くな…この売国奴」
そう言って抜き身の剣を私の眼前に引き出す。まさか…
「いやっ⁉︎止めて!止めてよエルク!」
「メイを怖がらせるその目は不要だな?……マルク…やれ」
「御意」
ブシュ!と何か切れて液体が吹き出す音がする。熱くなる何も見えない目。やがてその熱さは痛みに変わる。
「い…ぎゃあぁぁぁぁぁぁ⁉︎」
「マルク、その魔女…元い生ゴミを捨てて来い。勿論、目はくり抜いてな」
「御意」
痛みが激しく襲う目に何かさらに突き刺さる。そしてグチョッ!という音と共に目が無くなる。
空になる眼腔。最早痛みなど無い。
私はそうして視力を失い、王国の外の魔の森へと捨てられた。




