かむかむ連鎖
ヒツジアンサンブルの続きです。ネタができたので投稿しました。内容を著しく変える恐れがあります。ご了承ください。
かむかむかむかむ……
「もう止めろよ」
かむかむかむかむ……
「俺の羊毛、そんなに美味しいの?」
かむかむかむかむ……
「無視して悪かったよ。でももう眠いから相手してらんねーの」
かむかむかむかむ……
「ぐうぐう……」
ナイトオブザ・ヒツジ・デッド
ファーファベア国のお隣に位置する放牧地帯に、狂暴化するヒツジが現れた。感染した者はヒツジを襲うが、体を覆う羊毛が邪魔するということで、ひたすらかむかむカオスと化した。
ヒツジ達の存続の危機かもしれない。白羽の矢が立ったのはファーファベア国のヒツジ姫である。今日も今日とて、ヒツジのホワンと日向ぼっこをしていたら、古参のおじいヒツジが覚束ない足取りでやってきた。放牧地帯に向かって欲しいと頼むと、ホワンの第一声がそれを拒んだ。
「ダメです!」
ヒツジ姫と結婚したホワンが、目を三角にして怒鳴りつける。
「行く!」
対するヒツジ姫は口を三角にして反抗した。
「聞き分けのない悪いヒツジはどの子かな?」
「いたっ! ホワンに叩かれた~~!」
ホワンにお尻をペシリと叩かれ、モア姫は痛がった。
「ホワンさま、わしがモア姫に頼ったのです、叱るならわしを……」
「そういうことじゃ、なくて……」
ヒツジ達の言ってることは理に適っている。モア姫の羊毛を食すことができたとしたら、狂暴化したヒツジ達が浄化される可能性があるかもしれないと皆が噂する。それを素直に頷くことができないのは、愛するモア姫を危険な場所に向け、そのうえ他のヒツジ達に触らせることがどうしても嫌だった。
「モア、私は賛成できない。君は仮にもファーファベア国の姫なんだぞ」
「私の立場は、私がいちばん分かってるつもりだけど……私の羊毛が刈り取られても常にふっさふさなのは、ホワンが一番わかってることじゃない?」
お願いの仕草をして泣き落とそうとすれば、ホワンは長い溜息を零した。
「国王様と、王妃様に許可を頂いてくる……」
「ホワンがんばれ~」
「お願いしますじゃ」
二匹でお尻をふりふり可愛くお願いをされて、げっそりしながら場内の通路を歩いた。ヒツジ衛兵二匹に挨拶をしてから、豪華なお部屋へと通される。国王様と王妃様がテラスでほのぼの日向ぼっこをしていた。
放牧地帯での事件を話すと王妃さまは承諾してくれたが、娘ラブな国王陛下は断固拒否した。あきらめかけた頃、王妃がモア姫の意見を尊重しなさいと交渉してくれたので、共に行けることになった。
「いいかい、ホワン。モア姫に傷を付けないようにしてほしい。モア姫は可愛い可愛い私の娘だからね」
「はい、モアだけは必ず」
羊毛を食されるとは、義理の父には言えまい。
「あの子は先走る傾向にあるから心配だわ。ホワン、おバカなモア姫のことよろしくお願いしますね」
「は、はい。王妃さま」
そこが好きになったんだとは口を滑らせても言えない。
首を垂れて、テラスから出た。
ホワンは一人、ファーファベア国の書庫に赴く。
ほこりっぽいけど、本特有の匂いが好きだ。
モア姫と結婚する前から、趣味で頻繁に訪れていた気がする。
一階から二階へ上り、目当ての本を見つけると口で咥えて本を落とした。ぱらりと本をめくれば、ヒツジゾンビの絵物語がつづられている。思わず本を閉じてしまった。
「くそっ!」
なぜ狂暴化するのかわからない。
分かっているのは、どのウィルスが作用するのかを調査することと、それの対抗策を講じることだ。
「準備が必要か……」
その前に自分たちを保護するためのヒツジスーツを作るために、モア姫に羊毛を食してもらう。ビニール製のヒツジスーツでまずは近辺を調査することにした。