アルト・カリバーン
お久しぶりです。
久々に話を投稿しました。
楽しんでいただけたら幸いです。
改めて名乗られた名前に竜は頭の中で反芻する。
(アルト・カリバーン。アヴァロン聖王国第一継承者だって。嘘や出まかせにしては大きく出たものだ。だけど改めて見て感じるこの雰囲気、そして俺の一撃をああも避ける動き。そして何よりも一番は最後に俺の一撃を受け止めたあの剣。あれはダート帝国で見た聖剣と同じ輝き、いやそれ以上の輝きを感じさせていた)
アルトの右手に握られている剣に目が行く。
刀身は白く輝きを放ち、そこから放たれるオーラというべき気はどこか温かさを感じさせる。
ダート帝国では感じられなかったそのオーラに当てられた竜は、これが聖剣を使う者の本来の姿なのかもしれないと思った。
「君の警戒する気持ちは理解できるよ。でもどうか信じてほしい。僕にはどうしても君達の力が必要なんだ。この世界のバランスを保つ為に」
「この世界のバランス?」
「君達は知りたいはずだよね。何故、君達が勇者召喚されたのか。そして、帝国が何故、そんな事をしようしたのか。僕はそれを知っている」
「大変、魅力的な情報ですね。だけど、それが真実だとは限らない。僕達を誘き寄せる罠の可能性だってありますよね」
「最もだ。ならば、せめて話だけでも聞いてほしい」
そういうとアルトは手にしていた聖剣を鞘に納めると竜に向かって投げた。
「!」
竜はそれを受け取った。
手に圧し掛かるような重み。
(これが聖剣の重み)
「どういう事ですか」
「話を聞いてほしいんだ」
「随分と思い切った行動をしますね」
「これくらいしないとね」
微笑むアルト。
「だけど、あなたは聖剣を一声で呼び戻せる。さっきのように」
先ほどの一部始終を思い出す。
「確かに。だけど、君にはその”小太刀”があるだろう。スキルの力を切り裂くことができるその小太刀を」
「!?」
これには竜は一番驚愕した。自分の師匠が宿る小太刀。その能力を知っているのは一緒に旅をしている彼女達だけだ。そして、その力の一端を見た事がある者は皆倒されている。
「帝国の動向を探る為に色々な事をしていたからね。特に君達の動向については一番注視していたのさ。勿論、戦闘中にもね」
「どうしてそこまで」
「中央都市で行われた議会によってね。『ダート帝国の勇者召還とその目的と動向を調査、及び情報共有をする』と議会で決まってね」
「なんですかそれは!?中央都市で議会があったんですか。だけど俺達はそんな情報一つも耳に入って来ていない。帝国を抜け出してからも 」
「それは仕方ないよ。この議会は緊急だった。帝国が独断で行った召還だったからね。しかも、"この世界において最も行ってはいけない"禁忌の一つ『勇者召還』だからね。中央都市での議会は急遽行われ、かつ極秘裏に進められたからね。知らないのは無理はないよ」
それはリンにとって初耳だった。
「ちょっと待って下さい。勇者召還が世界の禁忌?一体どういうことですか」
「ごめんね。それは話が長くなるから今は言えない。でもこれだけは言える。勇者召還は、この世界においては大罪にも等しいことなんだ」
アルトの言葉にリンは内心驚いていた。
極秘裏に中央都市で帝国について議論がされていたこと、勇者召還がこの世界では禁忌とされていたこと、情報が一気に頭の中に入って来てしまい混乱しそうになる。
「わかりました。あなたの誠意に関しては今のところは信用します」
「ありがとう」
「しかし、もし不振な行動や言動をしたら」
「その時は全力で掛かって来ればいいよ」
アルトはリンの言葉を笑顔で返した。
それはリンに勝てるからなのか信用しているからなのかはわからない。
ただ、喰えない奴だとリンは思うのであった。
『こりゃ、面白い奴が現れたのう』
腰に刺さった小太刀から竜乃心はアルトを見て関心していた。




