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今年の穢れ、払います 1

新年あけましておめでとうございます。

毎度、更新が遅れてしまいすいません。

本編とは別のSSを投稿しました。本編を楽しみにしてくださっていたみなさんには、申し訳ございません。

今回の番外編を楽しんでいただけたら幸いです。

今年もよろしくお願いします。

新年を迎えた日本。人々は、元日から始まって近所の神社、お寺に行き初詣をする。

神社や寺には大勢の参拝客が訪れる。それはたくさん。そして。そんな人々の相手をするのがお寺に勤める職員達だ。

だが、職員だけが仕事をしているわけではない。ある期間だけ手伝いをするバイトの人達もいる。


「ありがとうございます!」

竜は、この元日から3日に掛けての期間バイトをすることになった。


自身の父から

「たまには働け!」

と言われてギリギリ滑り込みの形でバイトに入れたのだった。

していることは、御守り、御札、守護矢といった御守り系を販売する係だった。


「ありがとうございます!」

元気よく挨拶をして御守りを手渡す。

しかし、竜の声は普段に比べて高く、男の声というより女性に近かった。更に竜の表情は笑顔ではあるが、ひきつっていた。


どうしてこうなるのかな!?


そう竜は髪を腰まで伸ばした女性の顔だった。そして、来ている衣装は巫女さんが着る服装であった。

いわゆる女装だ。

白衣に緋袴。よく言われる巫女装束だ。

事の経緯はこう。


アルバイトにギリギリ入れたが仕事の殆どが分担されていた。

そんな中で御守り販売をするはずだった女性が急遽これなくなった。

しかし、御守り販売は女性が基本になっていた。そこで、中性的な顔立ちだった竜を女装させて人員として組み込むことにしたのだ。


そして現在。

「ありがとうございました!」

女装巫女 竜が誕生したのであった。


「リンちゃん。ごめんねえ」

「仕方ないですよ。千葉さん。働かせてもらえるだけでこちらはありがたいですから」

「悪いわね.給料の方は割り増しにしてあげるわね」

「すいません。ありがとうございます」

「それにしても」

千葉は竜を上から下へ観察するように見る。

「ど、どうしましたか」

「やっぱり。リンちゃんって女性?」

「男です!」

「私たちよりも巫女さんが似合うなんて」

「嬉しくないですよ!そんなの!」

自分は立派な男だ!女じゃない!

控室にいたならそう叫んでいただろう。


竜は気を引き締めて(?)仕事に戻ろうとした時

本堂の近くで騒ぎになっているのを見た。

「なんの騒ぎですか?」

そこに「あ~あ」と嫌そうな表情を浮かべた千葉さんがいた。

「よくこの時期になると現れるのよ。呑んだくれて参拝客に迷惑をかける連中が」

「どうして、表沙汰にならないんですか?」

竜は不思議に思った。しかし、答えはすぐに返ってきた。


「その呑んだくれのボス的な奴が、警察のお偉いさんの子息だからよ。親の権力を盾に好き放題。嫌になるわね。市民を守る警察の息子が市民に害を及ぼす存在だなんて」

千葉さんからは心底嫌だという思いが顔に現れていた。


それを見た竜は、

「新年最初の穢れを祓いますか」

と言って騒ぎの方へと歩き出した。


騒ぎの中心では、一人の女性と男性が口論と争いを起こしていた。


「離してください!?」

仁美は強引に掴まれた手を振りほどこうとする。

「いいじゃねぇか。ちょっとくらいよ」

しかし相手も強く握っているためか振りほどくことができないでいた。

仁美は今日友達と参拝に来ていた。

しかし、参拝を終えた帰りに目をつけられてしまったのだ。

相手は、金髪に染めた髪が特徴のナンパ男。

しかし問題は肩書にある。彼の父が警察のお偉いさんだということだ。

詳しくは知らないが警察の中でも有力な地位にいると聞く。そして、息子と同じようにあまりいい話を聞かない。彼の出世には黒い噂が絶えないと言われている。


「いい加減に離してください!」

「いいのか。そんなこと言ってよ。親父に頼んでもいいんだぜ」


そして男の上等文句。父親の名をダシにして脅す。それで殆どの人達が反抗するのを止めてしまうのだ。

その言葉に仁美は勢いを失ってしまう。

それを好機と見たのか男は仁美を自身に引き込もうとする。

しかし

「今年を寅年じゃないけど。虎の威を借りる狐とは、こういうことを言うのかな」

二人の間に割って入る形で一人の巫女が現れた。


(放っておけないな)

竜は、心の中でそう呟いた。


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