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通りすがりのサンタクロース

クリスマスの時期に起きた出来事を書いて見ました。

楽しんでいただけたら嬉しいです。


今年、最後の投稿になります。


皆様。よいお年を。

クリスマス。

それは、キリストの誕生日。子供達にとってはサンタクロースがプレゼントを届けに来る日。と認識は様々だ。

だが、神無月 仁美にとってはちょっと違う。

彼女にとっては劇的な日と言ってもいいだろう。

これから語るのは彼女の話である。


冬が降る街。

私は一人で歩いていた。

白い息を吐きながら。

雪の積もった雪の道をサクッ!サクッ!と音を鳴らしながら歩いていく。

防寒着を着ていても冷える風が体に当たって身を冷やす。

(早く。帰らないと)

私はテストへ向けての勉強をいつもより長くしていたために遅れてしまった。

そう。それが、私にとっての、不運であり、幸運でした。


「おい。姉ちゃん。こんな夜中にどうしたよ」

「一人じゃ寂しいだろう。俺達と一緒に帰ろうぜ」


ガラの悪い男達に絡まれてしまったのだ。


「おい!こいつ。噂に聞く。神無月の嬢ちゃんだぜ!」

「マジかよ!そいつはラッキーだぜ!」

「こりゃ。サンタからのプレゼントだぜ」


ふざけないで!


叫びたかった。でも、私は恐怖で逃げることができなかった。


そして、私は男達に連れてかれ、地面に倒された。

「きゃぁ!」

これから私は彼らに酷いことをさせられる。

恐怖で私は目を瞑った。それが、私にできる唯一の抵抗に思えた。


「こんな大切な日に。こんな寒い日。あなた達は何をやっているんですか?」

そこに私が聞いたことのない男性の声が耳に入ってきた。

私を押し倒し、拘束していた男達の数人が立ち上がって声のする方を見た。

視界が開いたため私も彼らと同じように声の主を見ました。でも、電灯の明かりが相手の顔を隠して見えなかった。だけど、シルエットから見て私と大して変わらない身長、声もどこか幼かった。


「なんだてめぇ」

「いえ。いえ。少し見過ごすことができなかったので」

対する相手はガンを飛ばしてきた相手に丁寧な口調でやんわりと答える。

この状況ですごい冷静さだ。


「なんだと」

「彼女には申し訳ないのですが、あなた方の行動は録画させていただきました」

そういって彼は右手に持つスマホを見せびらかすように掲げる。

男達の表情が引き攣った。


「おい。悪いことわいわねぇ。それを消してくれたら見逃してやる」

「なんだったら、お前も加わるか」

挙句にそんなことを言う。

しかし


「ふざけないで下さい」

静かに、だが声には怒りがにじんでいた。

そしてゆっくりと彼ら近づいていく。

「お前達の証拠を得るために彼女には怖い思いをさせた。これ以上のことはさせられないな」

はっきりと告げた。


「ふざけんじゃねぇ!」

怒気丸出しの拳が彼に飛ぶ。そして彼の頬に男の拳が入った。

私は叫んでいた。見ていられなかった。

それから他の人達も彼を痛めつけ始めた。

それが数秒続いて。

「けっ、かっこつけやがって」

「ああ!いいサンドバックになったぜ」

「さて、こっちも発散するか」

次は私だった。もう。絶望しか浮かばなかった。


「まったく。よってたかってやってくれますね」


私も彼らも驚愕して声の方を向いた。

そこには服の埃を払う動作をする彼の姿があった。


「さて、やられたらやりかえさないと「くたばれ!」

殴りかかった男の拳を今度はなんの苦難もなく。片手掴んだ。

そして掴んだ手をひねった。

「いでででで!!??」

痛みに崩れる相手。

「父さんに殺される」

そう言って彼は崩れた彼を放り出す。

それがきっかけになったのか他の人達が彼に襲い掛かった。

しかし、それはただの蹂躙だった。


襲われる少年にとっては


私を襲った彼らの攻撃は彼の流れるような動きに防がれたり、受け流されていった。

そしてどうやったのか彼らを投げていく。

どこにそんな力があるんだろう。


「く、くそ!?」

「逃げろ!?」


そして彼らはさっきまでの勢いはどこへいったのか、一目散に逃げていった。

残されたのは私と彼だけ。


「大丈夫ですか?」

「!」

声を掛けられただけなのに心臓が跳ねた。

「は、はい!?だ、大丈夫です!?」

私は慌てて立ち上がる。

だけど、足に力が入らず崩れる。

でも私が倒れる寸前に手首を掴み、立たせてくれた。

そして勢いそのままに彼の胸の方へ倒れてしまった。

「だ、大丈夫ですか!?」

「は、はい!?ありがとうございます」

緊張してしまう。なぜかドキドキする。

慌てて離れる。

「す、すいません!」

助けてもらった身なのに拒絶する行動を起こしてしまった。

そして距離が離れた時にチラッと見えた彼の瞳はとても優しく見えた。


「い、いえ大丈夫ですよ!?」

逆に気をつかわせてしまった。

しかし、彼は気にすることなく逆にホッとしたようだ。

その様子に私もホッとする。


「災難でしたね。せっかくのクリスマスだというのに」

「いえ。あなたのお陰で酷い目に逢わずにすみました。本当にありがとうございます」

「そうですか。良かった」

そう言って彼は私に背を向け、歩き始めた。

「あ、あの!」

私は呼び止めていた。


「あなたは、一体。せめてお名前だけでも」


彼は振り返り


「では、クリスマスにちなんで、通りすがりのサンタクロースとでも名乗っておきましょう」


そう言って彼は私の前から姿を消した。


私にはさっきまでの出来事が夢だったのでは、と思った。

でも、私にははっきりと解ったことがある。


私を助けてくれた彼は、私にとってのサンタクロースだったのだと。

そしてそれが私にとっての初恋だったのだと。



「へぇ〜。そんなことがあったんだ」

「格好いいですね。その殿方は」

「はい。素晴らしい殿方です」

私は風呂場で三人にその話をした。

風呂で皆と話をしていく中で思い出話に華を咲かせていく中で私はこの話をすることになったのだ。


「でもいいの。そんな話をされちゃあ竜は嫉妬しちゃうんじゃないのぅ」

「なんでそうなるんですか!?私は踏ん切りは着いています!」

アーシャのからかいに過剰に反応してしまう私。

それから、私は彼女達のからかいにいちいち反応してしまうのでした。

ですが、もしまた会えるのだったらお礼の言葉を送ってあげたいと思いました。


ところ変わって

男湯。


『のう。竜。さっきの彼女の〝話〟』

『師匠。追及しないで下さい』

湯船に浸かり、恥ずかしがる竜。

竜乃心はさっきまでの仁美の話を壁越しから聞いていた。

そして、話を聞いていく内に顔を紅潮させていく竜の反応に思った。


『運命っていうのはこういう時に言うのかのう』



クリスマスなのにクリスマスらしさがない。と感じるかもしれませんが、楽しんでいただけたら嬉しいです。

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