家族会議?
久しぶりの投稿です。
内容は、一時の区切りという形にしたつもりです。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
「どうしましょう」
今までにないほどに悩む竜。
ヤススケ達が帰った後、布団に戻って横になっていた。そして、チヅルの婚約の申し込みに考えさせられていた。
『お前さん。モテとるのう』
竜之心も感心しきっていた。
『しかし。彼女の境遇を考えると、お受けしてもよいのではないかのう』
『師匠』
『わかっておる。お前さんは他の勇者どもと違って現実主義者じゃ。三人と結ばれることすら、心の奥底で、悩んでおるんじゃからのう』
「・・・・・・」
そう。僕は今だに悩んでいる。
彼女達と結ばれ、家庭を作っていく。
それは、男達、人達が羨ましいことになるだろう。
でも、いいのか。と悩む。
こっちの世界では問題はないことは知っている。
でも、僕は考える。これでいいのかと。
『まあ。悩んでもしょうがないじゃろう。だから、未来の妻達と相談しない』
「未来の妻達?」
首を傾げる竜の目の前で竜之心が実体化。
襖をバァーンと開ける。
「キャァ!?」
「ワッ!?」
「ヒャァ」
三人の少女達が前に倒れてきた。
「皆」
「ヘヘ。ごめんね」
「すいません。日陰さん。
「すいません。アーシャさんが」
「ちょっと!?私のせいだけにしないでよ!?レティシア」
「ですが、言い出しっぺはアーシャさんです」
「仁美まで!?」
微笑ましい光景だ。と竜は思う。
しかし。
「皆は、どう思う」
「どうって言われてもねえ」
アーシャは苦笑を浮かべる。
残りの二人も同じ感じだった。
「僕もねえ」
「微妙な表情だね」
「僕は、好色な男なのか。お人好しなのかって思うよ」
「両方じゃないかな」
「率直に言うね」
「でも、私達の知る男の中では、最良」
「そうですね。ヤススケ様の判断は最善だったでしょう」
「レティシア。それは、政治的、人的に」
「両方です」
レティシアもアーシャに負けない率直な言葉だ。
「これもか」
『良かったのう竜。愛されておって』
「ありがとうございます」
本当だ。と心の底から思った。
「それで、皆の意見は」
「私達は、構いません」
「悩まなかったんですか」
仁美の率直な答えに思わず竜は普段の敬語を口にしていた。
あれ。もっと反対の声が出ると思ったのに。
「これでも結構悩みましたよ」
仁美は竜の心を読んだかのように喋る。
「これ以上増やされたら、困りますし」
仁美は頬を紅潮させ、竜から目をそらす。
初めて見せる仁美の嫉妬というか我が儘な気持ちとその姿にドキッとする。
結ばれた者同士とはいえ自分の知らない彼女の姿を見ることができて良かった。と思ったのは別の話しである。
「それで、どうしましょう」
「オーケーしちゃえば。お兄さんとお父さんのお墨付きだし」
「お墨付きって」
「言い方はどうかと思いますが、事実ですし」
「実力行使ですけど」
チヅルの行動力を思い出して苦笑する。
「でも、僕はやらないといけないことがある」
「中央都市ですか」
「うん」
「ですが、中央都市に行かなくてもいいんじゃないんですか」
そう。ヤススケの妹、チヅルと結ばれればタタラ国の庇護を得られる。
後ろ楯を得られるのだ。
「でも、帝国が心配だ」
その言葉だけで場の空気が重くなる。
帝国は竜達にとって色々な意味で縁のある国なのだ。
「皆には言うかどうか迷っていたけどこの際言おうと思う」
皆の視線が竜に注がれる。
「僕は、帝国と決着を着けようと思っている。それが終わった後に皆と暮らそうと思う」
これまでのことを考えると帝国は僕達のことを放っておかないわけがない。
茂木が何をしてくるのかわからない。
悪ければ国に戦争を吹っ掛ける可能性だってある。
「でも。決着ってどうやって?」
「アーシャの言うとおり。でも、決着って言っても国相手にはしないよ。〝あっち〟が諦めるまでさ」
「気が遠くなる話だね」
アーシャは竜の話しに呆れた。
「僕は、同郷の者を手にかけていく。これからも。そんな僕に皆は着いてきてくれる?」
「勿論です。そんな事を承知の上で私達は日陰さんに着いて来たのですから」
仁美は三人を代表して答える。
残りの二人も頷く。
こうして竜達は、お互いの仲と覚悟を再認識するのであった。
ダート帝国。
部屋の一室。
「またしても失敗か」
茂木は報告を聞いて噛む力を強める。
必死になって怒りと憎悪を抑える。
次々と失敗する竜の抹殺に茂木は怒りを通り越し、言葉で表せない感情を持つようになっていた。
「仕方ない。彼女達を殺すかもしれないが、あいつを送るか」
茂木としても使いたくはなかった。
しかし。
「あいつを野放しにすることは許さない!この俺が!」
追い詰められた茂木はついにきった。
使いたくはなかった切り札の一つを。
この決断が竜達の旅にどう影響していくのかは送り込む茂木自身もわからなかった。
ただ、一つだけわかっていることがあった。
あいつを動かすとろくなことが起きないという結果だった。




