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政略結婚の難しさ

久しぶりの投稿ですが、短めです。

これからも楽しんでいただけたら嬉しいです。


文章の修正や加筆をしていく予定でいます。

チヅルと自分の名前を呼んで行儀よくお辞儀する彼女。

それは位の高いとこの娘なのだと実感させる。

もらってくれと頼み頭を下げるヤススケ。

二人を竜はどう反応して、どう返事をしていいのか混乱する。


「どういう、ことでしょうか」

「まあ。そうですね。突然、妹を娶ってくれって言われると」

顔を上げて苦笑をするヤススケ。


「ちょっと!?どういうことですかぁ!?」

襖がバァーンという音を上げて開けられ、そこには仁美を先頭に立つ、竜の将来の妻達。


「突然の訪問、及び、突然の発言に申し訳ございません。私が、チヅルと申します」

チヅルは動じることなく仁美達に頭を下げる。

その姿に毒気を抜かれる仁美達。


さすが。将軍の娘さん。


竜は彼女の対応に舌を巻く。


「ヤススケ様。彼女達もここから同伴でいいでしょうか。彼女達は一応」

「解っています。それも解っていて申し込んでいるのです」

「何かわけありのようですね」

「はい。今日はその話をするために来たのです」


「私の妹は、ある有力な武家に嫁入りする予定でした」

「でした?とは、」

「相手の武家が、」

「悪い奴だと」

「簡単に言えばそうです」


ヤススケの調べでは、チヅルの嫁ぐ先の父親は人格者だが、その相手である息子の方は駄目らしい。

妹が不幸な未来を辿る。そう確信するほどに。


「それで、僕、いえ、私に声が掛かったんですか」

「ああ。君になら託せると思ってな」

「ちょっと、ちょっと。いきなりで話しが見えないよ」

アーシャは我慢ならずになったのか割って入った。

自分達という女性がいるのに目の前で縁談話をされて黙っていられない。


「あなた方がいるというのは重々承知している」

「ヤススケ様。御言葉を返すようですが、私は現在、三人の女性と将来、所帯を持つ人間です。周囲から見ればあまりいい印象を抱きません。チヅル様から見ても」

三人の所帯という部分に仁美達は頬を染め、嬉しそうな表情を浮かべた。

背後だったため竜には見えなかったが。


「いや。これまでの行動。共に兄上を止めて下さった。私から見て十分に人としてしっかりしていると思う。それに、多くの女性を妻とする。これは、上に立つ者としてはよくあること。むしろ、三人全員に慕われているあなたは、人柄がいいと思う」


逆に好評にされて言い返せない。


「あなたは、よろしいのですか。目の前で着実に進められていますが」

本人が目の前にいるために竜は聞きたくなった。

もしかしたら彼女にも思いを寄せる人がいるかもしれない。

いるならその人に彼女を預けるべきだと。


「いえ。私は、構いません。むしろあなたのような人に貰われたほうが私にとって何よりの幸せになると思います」

「・・・・・」

竜は驚きで固まる。

しかし、と言いかけた竜

「私は・・

彼女の次に発した言葉によって封じられた。


「私は、ヒカゲ様がこの国に来てから、ヒカゲ様のことを見ておりました。そして初めて見てからお慕いしておりました」


「え・・・」

言葉に詰まる。

どういうこと。彼女は何を言っているんだ。


初めて


初めて見てから?


呑み込みづらい竜に


「つまり。こういうことなんだ」

ヤススケもヤススケで妹の発言に苦笑を浮かべている。彼にとっても驚くことであったらしい。


「妹は、君に〝一目惚れ〟をしたらしいんだ」


日陰 竜。異世界サフィーリアにて人生初めての一目惚れを経験した。


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