剣姫の訪問
久しぶりの投稿と新しい登場人物を登場させました。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
「さて。稽古に・・・「行かせません」
布団から出ようとした竜を仁美が押さえつける。
「ぐっ!?」
傷にさわる。痛い。
「まあ。竜も少しはゆっくりしてな」
二人の様子を見ていたアーシャとレティシアは苦笑を浮かべながら言う。
サイゾウとの一件から2日が経過。竜は傷の手当ても兼ねて旅館で療養中の身。
『竜よ。たまには尻に敷かれとれ。休める時に休めるのは必要なことじゃ』
実体を出した竜之心は笑う。
「竜さん。お願いですから寝ててください。いいですね!」
「は、はい」
仁美に気迫に呑まれ、頷くしか竜にはなかった。
あの時。竜が傷だらけになって運ばれてきた時には仁美達の様子は尋常ではなかった。
涙を流しながら回復魔法を掛けたり、包帯を巻いたりと甲斐甲斐しく竜を介護した。
竜が目を覚ました時には三人が抱きついた時には竜之心ですら驚いたほどであった。
「これが、未来の正妻」
「アーシャさん。何か言いましたか」
「いいえ。何でもありません」
仁美から放たれている言葉に表せない気迫に気おされてしまうアーシャ。
『わしの婆さん。そっくりじゃのう』
「師匠の」
『いや。怖かった。怖かった。わしが勝手に無茶したら、飯を一週間は抜きしよった事があった。あの時の気迫にそっくりじゃ。竜よ。先は心配なさそうだな。早死にせずに済むぞ。いいストッパーじゃ』
「はははは」
竜は乾いた笑い声をあげるしかなかった。
そこへ
ドアを叩く音。
アーシャがドアを開けた。
ドアの前には女将がいた。
「あの〜すみません。お城の方がいらしておられていますが」
女将が言伝を伝えてきてくれたらしい。
「わかりました。ちょっと待ってください。・・・・竜。どうする?」
「顔を出そうかな。そろそろこの前の一件の話し合いをしなきゃいけないから」
竜は了承した。
ヤススケとの依頼に関する話し合いを竜が寝込んでしまったために止まっていたのだ。
「ですが、」
反対の意見を仁美が口にする。
竜が完全に回復していないために動かしたくなかったのだ。
「大丈夫。戦うわけじゃないんだから」
竜は仁美の頭に手を置き、撫でる。
「わかりました。ですが、何かあれば、私〝達〟が出ます」
仁美の言葉に二人も頷く。
「すみません。女将さん。十分後にそちらに向かいますとお伝えください」
女将さんは承りました、と言って部屋を出ていった。
「さてと、話しを済ませて、ゆっくりしたいものだな」
竜はそう呟きながら身支度をする。
しかし。この時の竜は知るよしもなかった。
これから起こることがただの依頼で済まない出来事に発展してしまうことに。
相手を待たせている応接間へと竜。
そして竜が応接間に通され、
「ヤススケ様。お待たせし「お待ちしておりました。ヒカゲ・リン様」
竜はその場で固まり、言葉を発せられなかった。
そこにはヤススケが正座をして待っていた。だが、護衛以外に竜がこれまでこの国でお会いしたことのない少女もそこにいた。
黒い艶がある髪を後ろに結び、馬の尻尾様。
表情は凛々しく、アーシャのように活発な雰囲気があるがヤススケの縁のある者なのか、仁美と似た御淑やかさもある。
服装はヤススケと同じ動きやすい服装で、女の子の服装を着させれば、町の男達が振り向くほどの華になるだろう。
(ただの少女じゃないな)
竜は彼女の横に置かれている刀に目がいった。
気配にも隙はない。
「すまないね。病み上がりなのに」
「いいですよ。待たせていたのは、こちらでしたから」
座布団に腰を下ろす、竜は傷のために正座ができないので、とヤススケ達に了解をとると、ヤススケは了承した。
「さて、さっきから気になっていると思うけど「お兄様」
彼の言葉を例の少女が遮った。
妹のなのか
この時竜は彼女がヤススケの妹であることを知る。
「御紹介を受けました。ヤススケの妹、チヅルと申します」
少女は竜に挨拶をした。
少女チヅルの紹介が終わり
「それで、この前の件で相談をしたいのですが」
「その前に君に聞きたい事があるんだ」
ヤススケは別の話題を切り出してきた。
そう言ってヤススケはチヅルを見、次に竜を見た。
「ヒカゲ・リン。どうか、私の妹をもらい受けくれないだろうか」
真剣な表情でヤススケは切り出した。
「・・・・・え」
ヒロインにするか、しないかは検討中です。




