決着
今回は、短めです。
楽しんでいただけたら幸いです。
6/3。
あまりにも短めでしたので、戦いの部分を加筆しました。
改めて楽しんでいただけると嬉しいです。
小太刀をサイゾウにむける。
サイゾウの胸辺りからは出血している。
「なんだ。その小太刀は」
「これは、いわば〝とっておき〟」
「切り札って奴か。おもしれぇ。やっぱこうでなくちゃな」
サイゾウは獰猛な笑みを浮かべ、槍を構える。
竜も小太刀と日本刀を構える。
「なあ。日陰」
唐突にサイゾウが竜に話し掛けてきた。殺し合いを演じている相手に気さくな感じに。
「なんだ」
「俺よ。お前がなんでそこまで強いのか。解った気がするぜ」
嘘っぱちではない。サイゾウの本音である。
「僕からも一つ聞いてもいいか」
「なんだ?」
「僕は、どうもそこまでお前が悪い奴には見えない」
剣を交えていく中で竜は何かを感じた。それが何なのかは解らないが。
「それに、どこか似ている」
「冗談いうな。だが、俺も思ったぜ」
苦笑を浮かべる。
「何を」
「こんな楽しい戦いを繰り広げる奴をこんな他人の都合で死なせることによ」
そこに浮かんだ笑みは、子供のように無邪気さがあった。
これがサイゾウの本来の笑みではないかと竜は思った。
「話しは、終い。決着をつけるぜ」
「ああ」
無言になり、両者は構える。
そして、両者は中心で交差した。
サイゾウは槍を向けたまま突進する。
竜は、腰の鞘に二本とも納め、抜刀術の構えで突っ込む。
両者の動きは互角。
「シャッ!」
槍を突く。この戦いの中で最も早い速度で。
竜はそれに反応した。
右に体をずらして回避、そのまま懐へと迫る。
サイゾウは読んでいた。そして、刃のついていない。槍の後ろを竜へと振るった。逆手持ちの刀を振ったかのように。
狙うは竜のこめかみ。最も頭で薄い骨の部分に。
竜は、刀を抜いた。
しかしそれは、刃でなく、鞘を持ち、抜き上げるようにして。
甲高い音が鳴り、竜は柄でサイゾウの二撃目を受け、押し込む。
その場で転換運動をする回転ドアの様に。
回転時に小太刀を抜刀。
遠心力の加わった一撃がサイゾウの脇腹を切り裂く。
「ぐ・あぁ!?」
二人がすれ違う。
片方は、地面へと崩れ落ちていく。
そして、片方は、勝利の宣言、戦いの終わりを告げるかの如く、周囲に響くほどの音を鳴らして鞘へと武器を納めた。




