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話されるその後

竜の目の前には嬉しそうに無事を喜んでいる神無月仁美がいた。


「神・・無月、さん」

竜は自分でも驚く程動揺していて出す声に戸惑いがあった。

「良かったです!目が覚めて」

「あ、ありがとうございます。神無月さん、」

竜は礼を言うとベッドから下りようと動こうとした。

「な、何やっているんですか!?」

慌てて仁美は竜の両肩を掴み動きを押さえた。

「急いで、出ないと」

「どうしてですか!」

「こんな所をクラスの人達に見られたら何を言われるかわからない。それに神無月さんも皆から何を言われるかわかりません」


クラスでも憧れの的であり、竜の周囲で聞いた話では、城でも仁美は人気者になっているらしい。

そんな彼女と二人っきりでいる。

これが知られれば、どんな事態になるのか想像するのは誰であろうと簡単だ。

それを防ぐために竜は急いで部屋から出ようとした。

しかし

「いけません!」

突然、大声で仁美が叫び、竜を止めたのだ。

これに竜は仁美の声に驚く。


「いけません。動いては……」

「でも…」

「もし、日陰さんが気にしているのであれば心配ありません」

「え、」

「それに私のためだと言うのでしたらなおさらここから動かずに、しっかりと手当てを受けていってください」

きっぱりと言われた竜には返す言葉がなかった。


「それに日陰さん。あの模擬戦からもう2日は経っています」

「2日も!」

なんてことだ!

「はい、高田さんが放った技によって日陰さんは一時的に心臓が止まりかけていました。それにこれまでの訓練や戦いで蓄積されてきたダメージや疲れの影響で熱を出したりと治療するのが大変でした」

一気に言われた言葉に竜は驚いた。

自分が死にかけた事、2日も寝込んでいた。

この事実に竜の思考は混乱する。フリーズする自信があるほどに。


「そうだったんですか。すいません。御手数をかけました」

「そんな律儀に…私達は同じクラスの生徒です。そんな畏まらなくても」

「すいません。助けてくれた人には礼儀をというのが家で叩き込まれたものでして」

「いい家ですね」

本当だ。感謝しきれないよ。


「ありがとうございます」

「それで体の方は…」

「大丈夫です。骨や臓器等には異常もないですから。でも、魔法ってすごいですね」

「はい、私もいつもながら驚かされてばっかりです。でも今はこれがあって良かったと思っています」

「僕の治療は?」

「私がやりました」

「え、他の人達は?」

竜は彼女の言っている事が理解できなかった。

「いえ。私一人でやりました」

治療って一人でできるものだったか。

「私。魔力は城でトップなんですよ」

微笑みを浮かべながらとんでもないことを言う彼女。

「でも、どうして」

「それは他の人達があなたに何をしでかすかわからなかったからです」

「わからなかった?」

「はい」

「どういう意味ですか」

「それは模擬戦が終わった後になります」

そう言って仁美は竜に語り始めた。竜が敗れ、死の淵をさ迷い始めた頃に起きた事を。


模擬戦終了。

竜が地面に倒れた瞬間。高田は勝利のポーズのつもりか右拳を高々と挙げた。

周囲からは歓声が響いた。


「待ちなさい!」


歓声を断ち切る叫びが訓練場に響き渡った。

声の主は神無月仁美だった。

仁美は素早い動きで竜の側にいくと両手を出した。

すると手から淡い光が輝きその光が竜を包み出した。

仁美の持つ治癒魔法だ。魔力がクラスでもトップの彼女は切断された腕を繋げてしまう程の治癒力があった。


「おい!何をするんだ!神無月さん!」

高田は彼女の行動に驚く。

「何をするんだ!ですって、それをあなたが言うんですか!」

仁美は高田を睨んだ。

高田はそんな彼女に後ろに二、三歩下がった。

「良かった。心拍数が落ち着いてきた」

仁美は竜の鼓動や心拍が正常になった事に安堵した。


「もう少しで日陰さんが死ぬ所だったんですよ!あなたは何を考えているんですか!」

その言葉に周囲からざわめきが起きる。

「な、何を言っているんだ。これは模擬戦。殺すような事がないじゃないか」

「いいえ。今私が日陰さんの体を触ってみた所、心臓が止まっていました」

さらに周りがざわめく。

「な、何を証拠に」

「証拠にというよりもあなたの放った技を受けてまだ数分も経過していないのに私が駆けつけた時には心臓が停止していました」

「で、でたらめだぁ!」

高田は叫んだ。

「それにあれは模擬戦に使うような技ではありません。作った高田さんなら十分に理解していたはずです」

仁美は高田を追及する。

「そ、それは作ったはいいけど実戦で打てるかどうか」

「それで同じクラスメイトの日陰さんで試した、と」

この言葉をきっかけに高田を見るみんなの視線が少し変わり始めた。

「それだけではありません。高田さん。この勝負日陰さんの勝ちです」

「な!?」

高田はここにきて驚愕する。

「正確には高田さんの〝反則敗け〟ですが」

「何を反則したって言うんだ」

高田の問いに仁美は高田の取り巻き達を示した。

「あそこにいる彼が日陰さんに雷属性の魔法を放つのを見ていました。証拠として私が契約している精霊が承認です」

その言葉を最後にその場に雷を纏った男性が現れた。

『我が主が仰るように私は模擬戦が始まった時から見ていた。そして、私は模擬戦とは別の方向から放たれる雷属性の魔法を感じていた』

「そんなの誰が信じるもんか!」

取り巻き達は叫んだ。

「じゃあもう一人承認を呼びます」

今度は水色の髪と水色のドレスが特徴の美女が現れた。

彼女の登場に周囲が驚いている。

『では、御見せしましょう。ここで起きた真実を』

そう言うと彼女の手から水が溢れ出る。そして、それは空中で集まり巨大な液晶画面を創り出した。そしてその画面には高田の取り巻き達が日陰にむかって魔法を放った光景がはっきりと映っていた。

高田達は何も言えないでいた。


「話は終わりです。騎士の皆さん。悪いんですが日陰さんを回復させたいので運んでいただけますか?」

仁美はそんな高田達を無視し、騎士達に願い出る。

騎士達は仁美のお願いを聞き日陰を担ぐ。

その後を追うように仁美は歩き出した。


一部始終を見ていたクラスメイト達はあまりの展開についていけずにいた。

しかし、そんな中で人知れず歯を食い縛り、日陰達がいなくなった方向を見ている者が一人いた。

その表情は怒り、嫉妬等が混ざりあったような表情をしていた。しかし、それに気づいた人は誰一人としていなかった。


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