新たな段階へ
内容が短く、展開も急になっていますが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
これから先、修正と加筆をしていく予定です。
ちょくちょく、見直していただけると嬉しいです。
「楽しかったねー!」
「はい!」
「あそこで食べた和菓子は最高でした」
宿の部屋に戻った竜達は今日のタタラ国の観光を振り返っていた。
しかし、竜だけ
「皆元気だね」
横になり、ぐったりしていた。
「意外だったなあ。竜が、ばてるなんて」
「戦闘では、疲れなしなのにですが」
「驚きです」
三人の少女達は不思議そうに見る。
「一応言いますが、僕の場合は魔力がないんだよ。魔力を体力にプラスされることなんて不可能なんだから」
竜には、仁美達が持つような、能力、魔力はない。体一つで戦っている。
体力も人よりも異常に高い。しかし、それは、地球での基準。ここ異世界サフィーリアでは、低い。
「ですが、戦いでは、かなり動き回っていますよね」
レティシアが最もな疑問を口にした。
「レティシア様。一応言いますが、僕は、短期決戦型ですから。できれば、そうしたいんですが」
「戦っている相手が、相手だからね」
アーシャは、竜の戦いを経験者、武術を志す者として見ていて苦笑した。
「簡単に倒されてくれる相手じゃないからね」
同郷の勇者。魔法を使う者。どう見ても竜に不利な相手ばかりだ。さらに、強いとくる。
「ですが、今までは」
「こやつの場合、努力と根性で頑張ってきたもんじゃよ」
レティシアの疑問に答えるかたちで竜之心が現れた。
「努力と根性ですか」
「そうじゃ。こやつは、そうやって今までやってきたのじゃよ」
少女達は改めて自分達の愛する男が、苦境の中で戦う存在であるのかを認識した。
「じゃが、これから先に待っているであろう戦いでは、難しいじゃろう」
しかし、竜之心の次の言葉に少女達は驚く。
今まで、自分達の修行、これまでの戦いを振り返るとイメージが浮かばないのだ。
「竜は、騙し、騙しに体、技術、機転でここまで来た。じゃが、限界がきている。それは、一番解っているじゃろう。竜」
その言葉に肯定する竜。
「このまま行けば、いずれは、敗れ、終わる」
「そんな!!」
仁美は叫ぶ。
竜にとって敗れることは死を意味していた。
「じゃが。ここに来た」
区切る。
「ここなら。竜は変わる。新しい段階に」
「どういう意味ですか」
『刀じゃよ』
そう竜之心は言う。
『あの者が作り出す物。それがなんであれ、竜に力を貸す。じゃが、それを持てばいいというわけでもない。それは、使い手次第じゃ』
「使い手、次第」
復習するかのように呟く。
竜は、ここまでの旅を経て成長してきたと思っていた。
しかし、自分の限界を突きつけられた。
師によって。
それはとてもショックなことだった。
だが、次に言われた言葉。
使い手次第じゃ
この言葉が頭から離れない。
(自分のこれからは、どういう風にしていけばいいのだろう)
竜は、自問自答する。
しかし、結局、よく解らず、より混乱するのだけになってしまった。
刀鐵の鍛治場。
「できた・・・」
自分で打ち、作った物なのに他人の力作を見ている気分だ。
冷やされ、湯気をあげて現れた刀身に惚れ惚れしてしまう。
「すげえ」
自然と出る言葉。
光に反射するその刀身は太陽の輝きの如く直視するのが難しい。
しかし、そこから見える波紋は流れる川を思い起こさせる。
まさに芸術の一品。
「こいつは、すげえ」
俺はこの言葉しか繰り返していないように感じる。
「さて。最後の仕上げといくか」
職人としての自分に戻り、作業を開始した。
しかし、刀鐵は気づいていなかった。
自分の仕事場を覗く存在に。
そして、その存在が自分、そして竜達を大きく巻き込む渦を発生させる原因になるとは。
「何。それは本当か!?」
「はい。間違いありません!」
「己!俺の依頼を断っておきながら」
男の握る拳に力が入る。
「見ておれよ。刀鐵」
男は邪悪な笑みを浮かべ、高らかと笑った。
しかし。ここで男は気づいていなかった。
自分を見ていた存在に。
「ご報告します」
「何!?それは本当か」
「はい。間違いないです」
「急いで知らせを!これ以上の犠牲者を出すな」
「は!」
命令に従いこの場を去っていく。
それを見送る間もなく自分も身仕度を整える。
「これ以上は見過ごせません!兄上」
次の日の朝。
「ヒカゲ様!お連れの方!」
竜達は、女将の正常じゃない声で起こされた。
「どうしたんですか!?こんな朝に!?」
竜は素早く起きると自分の剣と刀を探した。
しかし
(しまった。刀鐵のところだ)
持っていないことに気づいた。
「どうしたんですか」
警戒しながらドアごしで聞いた。
「それが、ヒカゲ様達に、将軍様が謁見をと申していまして」
竜に僅かに残っていた眠気が一瞬にして消えた。
だが、そんなこと以上の衝撃が竜を襲った。
謁見をした相手から次のように言われた。
「鍛治師、刀鐵が襲撃され、あなたの御刀が盗まれました」




