買い物
久しぶりの投稿ですが、ちょっと短めです。
ヒロイン達の服装をちゃんと表情できているか不安です。
ですが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
「それじゃあ。行こっかー!」
刀鐵の家を後にしてからアーシャが切り出した。
「どこへ?」
「服屋さん」
竜の質問にアーシャは、当然、ここへ、という顔で答えた。
「だって!ここは江戸時代だよ!着るしかないよ!」
「えっと。江戸時代ではないんですが」
「そんなことはいいの!皆!早く!早く!」
アーシャは竜達を先導した。
「ここって」
「そうだよ。竜」
竜は目の前にある看板と店の中を見る。
「着物屋さん」
そう。アーシャが連れてってくれた店は着物屋さんだった。
「せっかく。日本に近い国があったんだよ。買って損はないと思うんだ」
「そう、だね」
竜の声には戸惑いがあった。
正直な感想として自分も欲しい。だが、値段が問題だ。
値が張る。
そう思った。
「値段は問題ないよ!」
竜の考えを見透かすように言うとアーシャは竜を店の中へと連れ込むのであった。
「なんでも、夫婦、結婚予定、カップルには1人、半値なんだって!」
「!」
アーシャの言葉に竜は動揺する。
一応竜とアーシャ達は恋人同士。しかし、女子に対して免疫がなかった竜にはアーシャの言葉は刺激があった。
「もう!紅くして!ほら!行くよー!」
「わ、わわッ!」
アーシャに引き摺られる感じで竜は店の中へと入っていくのだった。
それから一時間後。
「見て!見て!どう!」
店を出て、その場でクルクルと回るアーシャ。
竜はそんな彼女と仁美達を見る。
花だ。
竜は少女達を見て思った。
そして彼女達を一言で言い表すのがその言葉だった。
まずはアーシャ。
アーシャは自分の髪の色に合わせた紅色の浴衣だ。
紅い椿の精と表現するのが正しいほど似合っている。
クルクルと回る様は枝から離れ、地面へとクルクルと回りながら落ちていく椿の花だ。
「はい。凄く綺麗ですよ」
竜の言葉にご満悦なアーシャ。
「あ、あの。ヒカゲ様。私はどうでしょうか」
自信無さげなレティシア。
彼女の着物は、水色の生地に花が刺繍されたものだ。
レティシア本人の持つ黄色い髪と着物の色がバランスよくお互いを引き立てている。
それは、雨の中で風情と鮮やかさを持つ紫陽花のよう。
「綺麗ですよ。レティシアももっと自信を持っていいですよ」
「あ、ありがとうございます!」
竜の言葉に自信無さげだった表情から明るい表情に変わる。
「それで、仁美は?」
「もうそろそろだと思うよ。御勘定を済ませているところだから」
しばらくして
「お待たせしました」
仁美が暖簾をくぐって出てきた。
「「「!!」」」
彼女の登場に竜達は驚く。
「ど、どうしました?」
「こ、これは」
「凄いわね」
「綺麗です。ヒトミさん」
現れた仁美は浴衣とはいえ存在感があった。
黒い艶のある髪は後ろにまとめられ、桜の花の装飾された簪が煌びやかにする。
そして、浴衣は、生地の色は紫色、そして桜、菊、といった花が織り込まれている。
黒髪と紫の浴衣は彼女の美しさとどこかで隠れていた妖艶な雰囲気を引き出していた。
「流石に、負けるわね」
「はい」
アーシャとレティシアは言い表せない敗北感を感じていた。
「ど、どうでしょう?」
そんな事に気づかない仁美は竜に聞いてきた。
「き、綺麗ですよ。仁美さんも」
ぎこちなく答える竜。
(仁美さん。化けるもんだなあ)
竜は仁美の新たな魅力に見惚れたのだった。
「さあ!こんなとこで突っ立っていないで行くよ!!デートの続き!続き!」
アーシャは、投げやりな感じで先導する。
勿論、竜の手を引っ張りエスコートする。
「ちょ、ちょっとアーシャ」
バランスを崩しかける竜。
その時丁度竜とアーシャの顔が近づいた。
「仁美に見惚れて、惚けていた人に言われたくありませーん」
耳元で囁く。
「これくらいはさせてもらわないと」
意趣返しの如く竜を振り回してやる、と密かに思う。
竜は自覚があるので言い返せず、流されるかたちでついていく。
そんな二人に慌てて追いかける仁美とレティシア。
女性陣達の買い物はまだ、始まったばかりだった。
竜は彼女達に振り回される感じではあったが、これでもいいかな、と思ったのだった。




