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武器の気持ち

今回は短めです。

武器の存在意義に関して自分なりの解釈を書いてみました。理解できたでしょうか。


楽しんでいただけたら嬉しいです。

「お前。随分と使い込んでいたんだな。折れてはいるが〝こいつら〟からは嬉しいと感じている」

「こいつら?」

「目の前にいるだろ。そう感じている本人達が」

「それは」

竜は折れた剣と刀を指差す。


「そうだ。この二本の剣のことだ。俺は微弱ってわけじゃないが武器の気持ちがわかるんだ。能力みたいなものさ」

「それでその二本は」

「ああ。こいつらから伝わってきたのは、さっき言った嬉しさ、そして、感謝、だが、最後の気持ちが問題だ」

「最後の気持ち?」

「そうだ。こいつらは、〝生まれ変わりたい〟と言っている」

「生まれ変わりたい、ですか」

「そうだ。新しい姿になりたいみたいだ。お前ともう一度戦うために」

刀鐵の話に竜達は驚く。

特に竜は驚いた。

自分の剣と刀がそんな風に思っていたことに。

(お前達は、僕ともう一度戦いたいんだ。僕のために)

二振りを見る。


「もし再び、一緒に戦えるなら、刀鐵さん。お願いします。もう一度、この二本を振らせてください」

「いいだろ。俺もこんなに愛されている剣士を見たのは久しぶりだ。武器は持ち主を選ぶ。よく言ったもんだ。いい仕事、させて貰うぜ」

刀鐵はドンッと自分の胸を叩いた。


「すいませんがトウテツ様。一つ聞いてもいいでしょうか」

「何だい?お嬢ちゃん」

刀鐵に質問したのはレティシアだった。

「トウテツ様のお話を聞いていますと、武器を作ってあげる方を選んでいるように思われるのですが」

「ほう。お嬢ちゃん。俺の話を聞いていただけで俺の商売スタイルに気づいたか」

「申し訳ございません!無礼なことを」

「なあに。いいってことよ。むしろ事実だからな。だが、これまでの客で気づいた奴は、お嬢ちゃんが初めてだ」

刀鐵は関心した面持ちでレティシアを見た。


「質問に質問で答えるのは悪いが、お前達に聞きたいことがある。武器とは、なんだ?」

刀鐵の問いに竜達は返答に間ができた。


「命を奪う道具。それと同時に自分の身を守る道具」

竜が皆を代表するようにその問いに答える。

「概ね正解だ。そうだ。武器を命を奪う物。人殺しの道具だ」

はっきりと告げられる武器の存在意義。

「だが、それでも人殺しだけが武器の役目じゃねえ。自分の身を守るための護身という役目もある。観賞用としての役目がある。要は、使い方だ。お前」

突然、竜を指さす。

「は、はい!」

「お前。何人殺した」

その言葉に竜の心は鋭い刃に貫かれたような気がした。

「数え切れないほどです」

正直に答えた。

「それは、なんのためだ」

斬り込むように問われる。

「最初の頃は自分の身を。ですが今は、自分の大切な人達を守るために命を奪ってきました」

これには嘘、偽りなどない。

「そうだな。お前は、いや、お前達はそういう奴らだ。誰かのために剣をとり、命を奪う。守るために。剣が語ってくる。お前達の戦いの軌跡をな」

再び刀鐵は二本に視線をむける。

「しかし。お前。随分と変わった奴だよな」

再び、竜を見る。


「どういうことですか?」

「そっちのお嬢さん達からは魔力を感じるがお前からは全くと言っていいほど感じていないんだよ」

「そうですか」

竜としては驚くようなことではなかった。

竜にとって能力、魔力がない、ということは当たり前であった。


「ま。珍しいなと思ったまでさ。さてさて、今日はこのくらいにしておこう。仕事にかかるからな。この二本は預かるぞ」

「では、お願いします」

「ああ。そうだ。お嬢さん達のも作らせて貰うぜ。安心しな」

刀鐵の言葉に仁美達は礼をした。


「しかし。対した野郎だぜ。あいつ」

竜達が去った後の刀鐵は竜から預かった二本を見て呟いていた。

「能力がないっていうのに勇者と互角に渡り合うなんてな」

二本が語り掛けてきたのは竜がどんな思いで戦い、どんな奴と戦ってきたのかだった。


「そんな奴の武器を作るんだ。半端なもんは作れないぜ」

刀鐵は笑みを浮かべる。そしてその目は職人の目に変わっていた。



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