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刀鍛冶、刀鐵

久しぶりの投稿です。

楽しんでいただけたら嬉しいです。

「さあ。行こうか」

「服屋へ」

「鍛冶屋へですよ。アーシャさん」

アーシャの言葉を仁美が嗜める。

「だって!せっかくの和風の国だよ!買いたいし、着たいよ」

「着るって何をですか?」

「浴衣だよ!ゆ・か・た!」

「ユカタ?」

疎いレティシアの頭上には?が浮かぶ。

「あー。レティシアは解らないか。でも大丈夫!すぐにわかるから」

笑顔で答えるアーシャ。


「ねえ!いいでしょう。竜」

上目遣いで見てくる彼女に竜の鼓動は早くなる。

滅多に見せない彼女の行動は不意打ちに等しい威力があるのだ。


「わ、わかりました。後でお店を探しましょう」

竜の返答にわぁーい!とはしゃぐ。


「おい!また出たんだってよ!辻斬り」

「ああ。今朝、この近くの川で切られた死体があったんだってよ」

「こぇーなあ」


耳に入ってきたその話に。

「物騒な話だなぁ」

竜は、夜には気をつけようと思った。




「ねえ。どこにいるの?その刀鐵っていう人」

「うーん。こっちみたいだけど」

「ここは随分とすごいですね」

レティシアは自分が見ている目の前に広がる光景に驚いている。


「さあ!さあ!武器の材料はここだ!ここだ!」

「なんだと!そりゃなんでも高いだろ!」

周囲から聞こえる商談の声。

カンッ!キンッ!カンッ!キンッ!

鉄を打つ音。

この場からは武器が造られる音、商談の声が鳴り止まない。


「ここが鍛治街」

鍛治街。それはタタラ国の名物というべき場所と言っても過言でもない。

ここは日本刀から槍、鎖鎌と多種多様な武器を造る鍛治師が多く集まっているのだ。

「女将のシノさんの話じゃあ。武器を造るためだけに他国から来る人がいるくらいらしいです」

「これを見れば納得だね」

「さあ。目的の人の店に急ぎましょう」


「ここが」

「うん。ここだね」

竜達の前には小さな民家がある。裏からは黒い煙があがっている。

「ここが刀鍛冶、刀鐵のお家」

「訪ねてみましょう」

そう言って竜が戸の取ってに手をかけようとした


「!」

咄嗟に後ろに跳んだ。

バーンッ!という勢いとともに刃が振り下ろされた。

竜は後ろに跳んだのが早かったために回避することができた。

「やるな」

「そちらも」


お互いの周囲が緊張が走る。


「すまなかった」

相手が竜達に謝罪の言葉を口にした。

「最近になって俺の周りにはうざったいくらいにちょっかいを出す奴らが多くてな」

「僕達は警戒しないんですか」

「お前達がここに来ることは気配でわかってた。それにお前達の空気っていうか、気配は最近になってやって来る奴らと違って穏やかだったんだ」

「では何故攻撃を」

「不意打ちって可能性もあるからな。俺が攻撃をしてお前がどう出てくるのかを確かめたんだ」

「では、判定は?」

「合格。お前達は安全っていう結論が出た」

彼の言葉に竜はホッと胸を撫で下ろす。

「しかし。女をそんなに連れまわしているわりには、身なりがな」

刀鐵は竜を上から下まで見る。

「権力者じゃありませんよ」

「だな。女達はお前にぞっこんのようだしな。まあ。入りな」

そう言って家の中へと入っていった。

竜達もそれに続くように家の中へと入っていくのだった。


「それで、どういう件で俺のところに来たんだ?」

「まずはこの紙を。そこには紹介していただいた人の名前があります」

竜はそう言って紙を刀鐵に渡した。

刀鐵は受け取り

「なるほどな。サンガの族長のじいさん。地位を譲ったか」

紙の内容を読む。


「あの。刀鐵さんってあの族長さんとどういう関係なんですか?」

「修行時代からの付き合いさ」

「修行時代といいますと」

「先代、刀鐵からの付き合いってことさ」

「刀鐵っていうのは俺達の師弟、つまり、後継者に与えられる名前なんだ。師から弟子、その弟子が師となり、次の弟子へ、まあこんな感じにな」

自分を指差す。

「なるほど」

「それで、俺を訪ねて来た理由っていうのは」

刀鐵は竜の腰へと目がいく。

「察しの通りです」

「あの族長の推薦だ。悪い奴じゃねえだろう。良いだろ!お前達の剣。俺が打ってやるよ」

「ありがとうございます」

刀鐵の言葉に竜達は頭を下げた。



「そう言えば。どうして僕達に斬りかかったんですか?」

「何。お前達が来る前の依頼人がふざけたことを抜かしたから怒ったんだ。それからそいつに頼まれたチンピラどもが来るようになったんだ」

「だからあの時」

「いや。悪かったな」

「いえ。当然だと思いますよ」

警戒するのは当然だ。


「しかし。随分とお前、やるな」

「いえ。大したことではありません」

「そう言う奴ほど大した奴なのさ。ところで、お前の持っている二本の剣。見せてみろ」

竜は剣と刀を外して刀鐵に渡した。

刀鐵は受け取り、折れた二本を抜き、鑑定するように眺め始めた。


その場に緊迫した空気が漂い始める。

竜は彼の言葉を待ち続けた。


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