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新たな目的地

久しぶりの投稿です。楽しんでいただけたら嬉しいです。

「くそ!くそ!」

部屋の中で悔しさと憎らしさが入り交じる声が鳴く。

(日陰め)

茂木・賢斗は机の上で拳を握る。

ググッ。

相当な力を入れたためか拳の中から血が滲み出始めていく。

「チッ」

手を見て舌打ちする。そして自分の手に回復魔法をかける。血は止まり、傷も消えた。

(くそ!またしても)

茂木はサンガの里での敗北はすでに聞いていた。そして自分達の仲間、クラスメートが倒されたことも知った。


「くそ!」

机を叩く。

(また、殺られたのか)

怒りが込み上げてくる。

しかし茂木が感じている怒りの理由は、クラスメートを殺されたことに対して、といった都合のいいものではない。

(使えない奴等だ)

役にたたなかった彼ら、高田達の成果に怒りを抱いていたのだ。

茂木にとってクラスメートは使える道具とでしか思っていなかった。

(くそ。たかが能力の無い無能にどれだけ手こずっているんだ。どうせ神無月さん達をこき使ったに違いない)

茂木はまだ竜に力がないと思っていた。そして竜が仁美達をこき使って高田達を殺してきたと推測していた。

「彼女達に手を汚させて。許さないぞ」

茂木の考えは自分の都合で固められた願望であった。

(絶対救ってみせる。そうすれば神無月さん達もきっと)

再び茂木は自分が竜を倒して仁美達を助け彼女達が振り向いてくれる妄想にふけった。


コン。コン。

「誰だ」

「王様。宰相のバーテルです」

「入れ」

「失礼します」

バーテルはドアを開けて部屋に入ってくる。

バーテル・ロイ。五十代に入るか入らないかの風貌で宰相の地位にいる者にしては少しガッチリとした体駆をしている。それはかつて彼が帝国の騎士として数多の修羅場を潜ってきたのとこれまで鍛えてきた恩恵であった。

「どうした」

「はい。サンガの者達は今まで暮らしていた場所から消えました。つきましては「ほおっておけ!あんな奴らのことは忘れろ。それよりも現在の状況はどうだ」

バーテルの言葉を遮って次の事に話題を変えさせた。

「はい。国民は勇者の死に不安が宿り始めています。それと」

「なんだ」

バーテルは非常に言いにくそうな感じでいる。

「その。最近の勇者がたの所業が目に余るものだと詰所で国民からの意見の嵐が来ていると報告がありまして」

「それをどうにかするのがお前達の役割だろ!」

「しかし」

「もういい!国民には、勇者は日々の戦いで精神的に参っているんだ、と言っておけ」

「それはあまりにも無理が」

「今はそれで引っ張れ。こっちはそんな場合じゃないんだぞ」

そうだ。どうでもいい。今は、弱陰、日陰だ。

「それで奴は何処に向かうと思う」

「里での戦に出兵した兵士からの報告によると反逆者ヒカゲ・リンは勇者達との戦いで主要武器を失ったとのことです」

「それが」

「私の考えですが、武器を得るために途中の国で立ち寄ると思います」

「そんなの途中の村で買えばいい話だろ」

「いえ。中央都市に向かう道中には、王の故郷の武器〝ニホントウ〟を造る国タタラ国があります」

「なんだと!」

「おそらくですが、彼も人であり、一人の剣士、優秀な剣を求めるのは自然の摂理、剣士の本能だと思います」

「わかった。それだったら〝あいつ〟を呼んでこい。ちょうどあいつもそこに向かおうとしているみたいだからな」

バーテルは少し驚く。

「あの方をですか」

「そうだ」

バーテルはその場で数秒黙っていたが「わかりました」と答え、部屋を出ていった。

再び一人になった茂木は

「今度こそ仕留めてやる。日陰」

憎しみを滲ませて言葉を呟くのだった。


「タタラ国?」

「そう」

「そこで竜の武器を造って貰うの?」

「正確には皆の武器もだけどね」

族長が渡してくれた一枚の紙。

そこには竜達に相応しい武器が手に入る。という内容とともに一人の名前が書かれていた。

(その人に会えばって言っていたけど)


「本当!じゃあ楽しみだなぁー!」

竜の考えとは別に彼の言葉にはしゃぐアーシャ。

そんな彼女の様子に自然と笑みが浮かぶ一同。

(まあ。行けばわかるかな)

着いてから考えることにしようと竜は決める。

(そして、そこで、僕の武器を)

竜は自分の腰に差している二本の剣と刀を目を向ける。

高田との死闘で折れ、粉々になってしまった愛剣と愛刀。

根本の部分が残っていたので捨てるのに抵抗があったので鞘に納めている。

だが、もう武器としての役割はない。

今までともに戦い、自分を戦いの中で守ってきてくれた存在。

その二振りがもう振るうことのできないことに寂しさを感じていた。

(愛着が湧くってこういう気持ちだったんだな)

しかし、自分達が新たなスタートを始めたように自分の持つ武器にも新たなスタートがきたんだ。


そう思い、竜は次の国に向けて、期待と覚悟を胸に秘めたのだった。


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