決着
決着です。
決着の案は色々とありましたが、今回はこれに決めました。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
少し、個人的には、グロいシーンとは判断に迷いますが、それに近いシーンがいくつか書いてありますのでご了承下さい。
竜から見て、剣が砕け散る様はスローモーションに見えた。
砕け散った剣の欠片が光に反射して煌めく。
こんな事態だというのに自分と今までともに戦ってきた相棒の最後は、とても美しいと思った。
しかし、その直後には
「でりゃぁ!」
「グハァ!」
高田の蹴りによって視界は一変。
地面に叩きつけられる。そして、山の傾斜によって転がっていく。
石、岩といったものに全身が強打されていく。
「が、・・はっ!・・・・ゲホッ!」
全身が痛む。
身体の中から鉄の味。血が混み上がってくる。
さらには、あばら骨辺りからは特に激痛がしている。
(く、くそ!?まさか、剣が・・)
今だに手にしている鍔本から数センチしかなくなった愛剣を見る。
「!」
その場から転がる。
直後には高田の拳がさっきまで倒れていた場所に炸裂してクレーターを作り出していた。
「よお!まだ、動けたのか。どうだ?ご自慢の剣が壊れた感想わよ」
「・・・・」
折れた剣を鞘に戻し、唯一、左手に握られている刀を構える。
「まだ、そいつが残っていたな。次はそいつを壊すか」
拳を構える。
竜は高田の動きに集中する。
(意識しろ!呼吸一つも見逃すな!)
「く!」
首を傾け避ける。
そして懐に入り、左凪ぎ。
これもやはり防がれる。
「無駄なんだよ!」
駿足の脚力で後方に跳んで距離をとる。
全身が悲鳴をあげる。
(もってくれ!)
駿足は、高速移動を可能にするが、それはあくまで万全な状態であったならの話だ。全身がボロボロの竜には負担でしかない。まして、ここは傾斜が多い山、登るのだけでも負担になる。
『竜!これ以上は無理じゃ!?』
竜之心の叫びが響く。
「ハァ・・・・ハァ・・・・・」
なんとか立ち上がる。
「おい!おい!大丈夫かよ!そんなんでよ!弱陰!」
「グァ!?」
腹に追撃の拳が入る。
ミシ!ミシ!という嫌な音が鳴るのがわかる。
手にしていた刀は落とし、坂を転がっていく。
(!・・・刀が)
しかし、刀は巨大な岩に当たって止まった。
距離的には遠いが、取りに行けない距離ではなかった。
しかし竜の身体に問題があった。
「ゲホぉ!?」
そして後から血を吐き出す。
「おい!汚ねえじゃねえかよ!」
嘲笑いながらその様子を眺める高田。
その表情は満面の笑顔だ。
「しかしよ。てめぇはバカだよな。何の力もないくせに歯向かいやがってよ。学校でもいつも思っていたぜ。誰にも従わないっていう目がよ!」
腹に蹴りを入れていく。
竜にはもう腹が痛むのかさえわからなかった。
(ち・・・力・がぁ!?)
「しかし。てめぇもここで終わりだ。だが、残念だったな」
「な・・・何・・が」
「神無月達だよ」
「!?」
「あいつらを連れていけば面白いショーが見れるんだぜ」
「ど・・・いう・・こ・・とだ」
「あいつらは、茂木の奴隷だ」
その言葉を聞いた瞬間、自分のことのように血の気が引いた。
(な・んだと!?)
「あいつは、あの女達を狂人のように探しているんだぜ!そして、捕まえたあかつきには、どうなるんだろうなあ!」
高笑いする高田。
「ま!ここで死ぬてめぇには関係ねえけど・・グァ!?」
ここに高田が笑いとは別の声をあげる。
「・・・・く!」
竜は渾身の力を込めて高田の左足の脹ら脛に砕けた剣を突き刺した。そして一気に引き抜き、転がりながら刀を拾う。
(くそ!?意識を疎かにしていた!?)
足をやられ、崩れる。
(ち!動けるのが限られちまった)
脹ら脛から出血していく。
(弱陰の分際で。・・・・!?)
叫ぼうとした言葉に詰まった。
(なんだ。あいつは)
高田はそう思ってしまった。
目の前の相手を見て。
その相手。竜は。
「高田さん。・・・・いや。高田」
さん付けから呼び捨て。
ここに来て竜はこれまで、いや、この異世界サフィーリアでは口にしたことがない。
無機質で、感情のこもらない声を出していた。
とても常に敬語の彼からは考えられないことだった。
「お前は、罪のない人を殺し、人の思いを踏みにじった。僕は、お前を・・・許さない」
(許さない。許すものか)
「そして。彼女達に手は出させない・・・・絶対に」
(彼女達は、僕が守る)
自然と口から言葉が出て、自然と決意が現れる。
「!」
高田は後退りした。
満身創痍だと言うのに竜のい言えない気迫に呑まれたのだ。
「て、てめぇ見てぇな無能なんかが!俺達に敵うわけがねえんだよ!」
叫ぶと魔力を上げる。
竜巻がより一層高田を包む。
その様は竜巻の鎧。
対する竜は、刀を鞘に戻し、中腰に構える。
抜刀の構え。
(チャンスは、一度)
繰り出せるのは一撃。
たったの一撃。
(自分の全霊を打ち込む)
静かに高田を見据える。
両者は睨み合う。
しばらくの静寂が周囲を包む。
この様は、まさに城での模擬戦そのものであった。
あの時は、不正の介入があったが今はない。
まさに、真の決着を着ける時。
そして、両者同時に地を蹴り、衝突する。
竜の最高速度の抜刀が高田の竜巻にぶつかる。
ガギィン!ギギギッッッ!!
競り合いが続く。
「ぬ!くっ!うおぉぉぉぉぉぉ!!」
刀に力がこもる。
そして。
バギィン!!
甲高い音とともに刀が耐えきれずに砕けた。
竜は力が空回りしてその場で回転。
高田は勝利と見て、会心の笑みを浮かべる。
「俺の勝ちだぁ!」
拳を繰り出した。
「グァ!?な・・・んだ・と!?」
驚愕の表情を浮かべた。
その理由は。
(何で鎧を着た俺が斬られているんだぁ!?)
高田の右脇腹から噴水の如く血が吹き出していた。
「な・・・に・・が」
混乱する中で高田は見た。
竜の右手に持つ折れた刀とは別に左手に逆手に持つ小太刀が握られていることに。
『孫が世話になったのう』
高田の耳に聞き慣れない老人の声が入る。
幻聴か?
と確かめる間もなく。
「だあぁぁぁぁぁぁ!!」
回転していた竜が高田の背後に回り込み。折れた刀を回転を利用した遠心力で高田の心臓に突き刺した。
「ぎゃぁぁ!?」
「ぐ!」
背中から刺さった。
「ぐ・・俺、が、こ・・んな・・・奴に・・」
高田は見事に心臓を刺され、絶命した。
「・・・・・・」
対する竜は完全に力を使い果たし、その場に崩れ落ち、動かなくなった。
竜と高田の決着はこうして幕を閉じた。
主人公は誰かのために力を発揮するものでしょう。
今回は、そういうことも入れてみました。
上手く書けているか不安ですが。




