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交渉

交渉の様子は想像できたでしょうか。少し不安なところはありますが楽しんでいただけたら嬉しいです。

「お前がここの族長か」

「そうだ。族長ダリムだ」

帝国の兵士にダリムは答える。

「今回は、お前達との交渉に来た」

「わかっている。こちらも一緒だ」

「では、我々の代表がここにくる。それまで待っていろ」

そう言って兵士は自分達の場所まで戻っていった。


「へ。見下しやがって」

ダリムはそうやって悪態をつく。

「しかし、大丈夫なのか。ダリム」

「心配するな。こっちにはあいつらが欲しがっているもんを持っているんだ。心配することはねえ」

「でもよ。万が一の時は・・」

「バカ野郎!そんな時は、自分で考えろ!」

びくびくする彼にダリムは怒鳴った。


(万が一の時は逃げればいい・・)


そうやってダリムは考えていた。

しかし、ダリムはこの交渉に勝算があると思っていた。そして、どんな事があっても自分はどうにかなるとも考えていた。

ダリムは野心家だった。サンガの族の中では特に強かった。

そして、現在ダリムはその野心を爆発させている。


(俺は、やれる)


そう心の中で呟いているのだった。

(俺はこんな所じゃ終わらねえ)


変わって帝国側。

「向こう側は交渉に応じるようです」

「わかった。お前は戻って準備しろ」

「はっ」

テントから兵士は出ていった。

「ち、交渉なんかめんどくせえじゃねえか。とっと消しちまおうぜ。こんな所」

「まあ。待て。向こうの言い分を聞いてもいいじゃないか。それにただ、消すのは勿体ない。女や食料といったものは残しておくべきだ」

「へへっ。女か。悪くはねえな」

「じゃあ。行くぞ」

花田と高田はテントから出て交渉の場へと向かった。



「さて、俺が代表の高田だ」

「族長のダリムだ」


現在、二人は設置された場所で交渉を開始させていた。


「こっちは、お前達の帝国の忠誠を望む。そして、この里の所有権を我々に渡せ」

花田が要件を口にする。

高田は交渉にはむいていないため花田がすることになっていた。

「忠誠はいい。だが、そっちは俺達に何を与えるんだ」

「帝国の加護を与えよう。お前にはそれ相応の権限を与える」

「いや。それ以上の要求をするぜ」

「貴様!族風情がぁ!?」

兵士の激昂を花田は止める。

「随分とでかい口をたたきますね。帝国を舐めているんですか」

「こっちにはそれ相応の交渉材料があるんだよ」

「なんだ。その材料ってのは、女か」

「女は、女でも、只の女じゃねえ。お前達が血眼になって探している。姫様達だ」

「「!」」

二人がここに来て初めて驚きの表情を浮かべた。

「それは、本当ですかな」

「ああ。あの家に閉じ込めてある」

前の族長が住んでいた家を示す。


「で、そちらの要求は、俺達に加護と爵位を、そして、ここの所有権を俺達の名義にしてほしい」

ダリムは要求した。

この土地の所有権、爵位、帝国の加護。彼は絶対的な権力を欲した。


「ふん!でけぇ口を叩くやつだ」

ここにきて高田が口を開いた。

その目ではダリムを見下すように見ていた。

(こいつ。ガキのくせに)

勇者は、自分達よりも年齢は低い、ダリム達から見たらひよっこだ。

だが、勇者は年齢とは似合わず恐ろしい能力を持っている。大人など一ひねりにできる程の力を。

「しかし、なかなかいい交渉する手札ですよ」

花田は淡々と言う。

「それに、彼は嘘はついていないようですよ」

「お前の能力か」

花田の能力は透視。壁をすり抜けて向こう側を見ることができるのだ。


「そうですね。捕らえられてはいないようですが家の中に閉じ込められているようですよ」

「へ!ちょうどいい。おい。族長」

「なんだ。いいぜ。てめえの条件受けるぜ」

「本当か!」

「ああ。いいよな。花田」

「いいぞ」

花田の了解を受けた。そして、高田に耳打ちした。

それを聞いた高田はニヤリと笑った。


「わかった。ならすぐにあいつらを」

「まあ待て。俺達は一旦、ここを離れるぜ」

「どうしてだ」

「警戒されると面倒だからな。暴れられても困るからな。お前らが連れてくるのを遠くから見ているぜ」

「待て。信用の問題としてそっちから誰か監視を兼ねて残していけ」

「わかった。おい。部隊長」

「は!」

「お前が残れ」

「わかりました」

そうして二人はその場から離れた。


「おい!あいつらをこっちに連れてこい!急げ!」

ダリムは指示をとばす。


そんな声を聞いていた高田達の表情は笑っていた。

「バカな奴だ」

「ああ。そうだな。おい。指令は」

「すでに配置されています」

兵士が答える。

花田は順調だ、と思った。

そして、これから始まる事に対して不気味な笑みを浮かべた。


「今日。この日。この世界から一つの部族が滅ぶ」



「おい!さっさと歩かないか」

男達に連れられていく竜達。

全員が縄で縛られている。


「そんな事言いましても引っ張られたら逆に歩きづらいですよ」

「うるせぇ!黙ってろ!」

そうしている間にダリムのいる交渉の場に着いた。


「どうだ。俺の言った通り、交渉は上手くいったぜ」

ざまあみろ、と竜を見る。

「交渉相手はいませんが」

「もうじきくるぜ。お前達を迎えにな」

それを聞いた竜の表情が緊張する。

「悪いことは言いません。早く逃げてください」

「へっ、交渉材料が何をほざく」

「あなたは、騙されているんですよ!」

「黙れ!いちいちうるせぇぞ!」

ダリムが竜を殴ろうと動いた。


「放てぇ!」

それと同時にどこからか号令が轟いた。


そして、サンガの里に矢の雨が降り注いだ。


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