サンガの里
11/9。加筆をしました。
12/4。村がどんなところにあるかについて加筆をしました。知識不足な所がありますのでおかしなところがあればご指摘をよろしくお願いします。
「それでは、聞きます。あなた方は僕達を、いや、レティシア様を殺そうとしたのですか」
「違う。たしかに俺達はお前達を監視していた。だが、殺す気なんかさらさら無かった!」
「遠距離から殺すことのできる弓矢を持っていたのにですか」
「っ」
その言葉に男は詰まった。
竜は念のために男達の武器を調べていた。
竜が持っているのと同じような剣に槍、族なのか打製石器を先にした手製のナイフがあった。しかし中でも目立ったのは弓と矢だった。その理由は全員が持っていたことだ。
「ヒカゲ様。サンガの一族は狩りを生業としています。そして主に使っているのは弓です。持っていても不思議ではありません」
レティシアの言葉によって考え込む。
「そこの姫さんの言った通りだ。俺達は殺す気はなかった」
「あなたはそうでも他の人達はどうですか。弓を引かない保証はありますか?あなた方を見た感じですと帝国には悪い印象を持っている。そんな人達がレティシア様のことに気づいていたんなら矢を放っていたはずですよね」
「く、そう、だな」
男は反論できなかった。
竜の言ったことが正論だったためだ。
実際に男達は竜達を監視していた早い段階からレティシアだと気づいていた。しかし、どうするか考えるよりも早く竜によって動きを封じられてしまった。だが、もし竜の行動が遅れていたらどうなっていたかは男自身にも予想できなかった。
「さて、それではどうしますか」
「竜。口封じで殺る」
アーシャは自身の刀に手を掛ける。
「そうですね。それも一つの手段ですね」
まんざらでもなく竜は頷いた。
現にもし彼らを逃がしたら自分達の居場所を守る交渉材料として自分達の情報を売るかも知れない。
「ですが、止めましょう」
だが、竜は止めた。
「どうして?」
首を傾げるアーシャ。
「これ以上、無関係な人達を殺して、僕の悪名が大きくなるのはごめんですから」
竜は苦笑交じりに言った。
(本当に御免被りたいよ)
これ以上はもたない。
正直な本音だった。
竜の言葉にアーシャは、そうだね。と言って刀から手を離した。
それを見ていた男達はほっと胸を撫で下ろす。
しかし、この人達をどうするか。
改めて彼らの事をどうするか思案する。
(第三者にお願いしますか)
「すまないが、そやつらはこっちが引き受けよう」
そこに男達と同じ防寒着を着た老人が歩みよっって来ていた。
背後からは老人を護衛するように二人の男が付いて来た。
「やっと現れた。と言った方がいいですか?」
「ほほう。やはり気づいていたか。侮れん小僧じゃな」
ホホホッと軽く笑う。
「族長!」
男は老人の姿を見るとそう呼んだ。
(族長。この人が)
(おじいちゃんと同じくらい)
『わしはもっと若いわい』
(年齢関係ないですよね。〝今は〟)
『ええい!いちいち細かい!』
小太刀から発せられた叫びが頭に響く。
(年、気にしてたんだ・・)
竜之心の珍しい叫びに竜は苦笑した。
「詫びというつもりなんじゃがわしらの里で泊まっていったらどうじゃろう?」
「族長!」
男が驚愕といった表情を浮かべる。
「どっちみち、わしらの命はこ奴らが握っておるのじゃ」
「く、」
その言葉に男は納得するしかなかった。
(どうやら納得してくれたみたいだな。しかしサンガの里。興味深い。でも・・・)
竜は、しばらく考えた結果族長と呼ばれた老人の言葉にあまえることにした。
サンガの里は山を少し登った先にあった。といっても山の頂上にあるというわけではなく、山が長い年月を経て形成した穴のような巨大な溝の中、凹地、カルデラに集落があった。
言うなれば、カルデラの中に村、もとい里があるのだ。
集落は石造りで突風にも耐えられるようになっている。そして、羊や馬と言った動物達を放牧している様子が小さいがよく見渡せた。
「すごいよ!日陰!穴の中に村がある!」
アーシャは興奮気味に言う。
竜としてもその光景には圧倒された。
(すごい!来て良かった!)
竜は、カメラがあれば撮りたいという心境だった。
「すごいですね」
「圧巻です」
仁美もレティシア二人もそれぞれの感想を述べた。
「ようこそ。皆様。サンガの里へ」
(さて。どんな事が待っているのやら)
「レティシア様は、僕の側に居て下さい」
「え!」
「レティシア様は事情はどうであれ、この里では好ましく思われては居ません。いざと言う時のために僕の側に」
「わ、分かりました」
そう言ってレティシアは竜の側に寄る。そんな彼女の表情はどこどこか恥ずかしげで頬を紅く染めていた。
そんな様子を見ていた仁美とアーシャは目を細め、羨ましそうに見ていた。
そして竜が彼女達(レティシアを除く)からの鋭い視線にさらされたのは言うまでなかった。




