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山間部での出来事

ちょっと遅めの投稿になってしまいました。

すいません。。

山のことに関して上手く書けたか不安ですが楽しんでいただけたら嬉しいです。

「ふぅん。そんな事があったんだ」

「はい」

公達と別れた竜は途中でアーシャ達と合流したのだった。

その後にお互いの近況報告をし合った。竜はアーシャと竜之心に公達との間で起きたことを伝えた。

「でも竜は本当にお人好しだよねぇ。自分の事を利用した二人を許すなんてね」

「許してはいませんよ。アーシャさん」

否定を口にする。

「それに僕は本当は殺す気でいましたからね。かれらを」

小さく出た殺気にアーシャはひきつった。

(すごい殺気)

自分には見せたことがない彼を見た気がした。

それは仁美達も同じでアーシャと同じようにひきつった表情をしていた。しかしその表情は悲しそうな表情も交じっていた。

それは彼に対する同情によるものであった。


『しかし竜よ。それでその二人はどうなるんじゃ』

「何処かでひっそりと暮らすらしいですよ」

『まったく。人の孫の人生を犠牲にしよって。少しは言いたいことが頭の中に何百通りも出てくるわい!』

憤慨する竜之心。

そんな彼に竜は嬉しい気持ちにいた。そして、自分を心配してくれている彼女達に感謝した。


「ありがとうございます。さて、それでは行きますか」

『そうじゃのう』

竜之心の小太刀を腰に差す。

アーシャ達が用意した荷物の一つを持ち歩き出した。

「うん!」

「はい!」

「行きましょう!」

仁美達もそれに答え、それぞれの荷物を持ち歩き出した。

竜達は最後の難関となった山を越えるために歩き出す。



ダート帝国。王の部屋。


「いいかい。頼んでも」

茂木は自分の前で立つ彼に問う。

「へっ!いいぜ。やってやるぜ」

答える彼。その表情は笑っている。

「お前のパシリみたいなるのはしゃくだが、」

「パシリじゃないよ。これは取引だよ。正当な、ね」

女性陣を虜にする笑みを浮かべる。

「まあいい。あんたは神無月とあの姫を手に入れたい。俺は、あの腰抜けを殺したい。それでいいな」

「ああ。かまわない」

「へ。じゃあ行くぜ。それと、ついでの依頼ってのは」

「ああ。お前の好きなようにしろ」

茂木の言葉に高田は笑いながら部屋を出ていった。

一人になった茂木は笑いを押さえていた。しかし、声は漏れていてその雰囲気は不気味である。


「もうすぐだ。もうすぐだ」

部屋で一人、ブツブツと呟いているのだった。



「結構登ったわねえ」

アーシャが額の汗を拭い周囲を見る。

「さっきまで森林が広がっていましたのに」

レティシアも回りの景色を見て言う。

「そうですね。山間部まで来たみたいですね」

鬱蒼と茂った森ではなく石や岩が目立っている。

「それに寒くもなって来ました」

ビュウと吹く風は肌を鳥肌にさせるくらいにさせていた。

山は地上に近いほど暖かいが逆に遠ければ寒い。

「厚着にしましょう」

竜はアーシャ達が揃えてくれた防寒着を上から羽織った。

見た目は、上から羽織ったのでジャンバーみたいになっていた。


「それじゃあ行きましょう」

着替えると再び歩き出した。


山を登り始めて二時間あまり。

「つ、疲れ、ましたっ」

レティシアが岩に腰を下ろしねをあげた。

「私も限界、だよ」

「わ、私もです」

後の二人も限界のようだった。

「そうですね。ここで休憩しましょう」

荷物を置き竜も腰を下ろした。

「竜は大丈夫なの?」

アーシャは尋ねた。竜を見るとまったく息切れをしていなかったのだ。

「ええ。まったく」

「すごい体力ね。私も体力には自信があったんだけど」

「私もレティシアと一緒に修業をして体力はついていると思ったのですが」

「ですが皆さんも普通だったらこんなところにまで休憩を入れずに登れるのはすごい方ですよ」

実際に彼らは休憩をせずに山の半分を登っているのだから女性陣の体力が高いのは当たり前だ。しかし、そんな女性陣よりも竜の体力の方が異常なのだ。


「楽しい話を続けたいんですが」

声を出しながらゆっくりと腰を上げ、中腰になる。

そして手を柄に掛ける。

一瞬の元で竜はその場から消えた。


「何!?」

竜達を伺っていた者は双眼鏡をもう一度覗き込んだ。

(あの少年。一体、何処へ!?)

「ここですよ」

「っ!?」

背後から声がして振り返ろうしたができなかった。両肩に剣と刀の刃が置かれていたからだ。

(俺の背後をとるとは)

「帝国の刺客ですか。随分とお早いお着きですね」

(帝国の刺客?何を言っているんだ)

「答えて下さい。黙りは肯定と受け取りますよ」

刃が首筋に付く。

「ち、違っう。俺、達は帝国の者じゃない」

「その保証は」

少年はまだ信用してくれないらしい。当然だ。


「監視している仲間を全員出す。お前達の前で」

「それじゃあ信用は足りませんが、全員に今いる位置に武器を置いてから来るように言って下さい。さもなくば・・・」


「殺ります」


少年から発せられたとは思えない殺気のこもった声が背後から響いた。

その声に男は戦慄した。


(何て少年だ。こんな殺気を放つなんて)


それからしばらくして仁美達がいる場所に男を含めた十人がやって来た。


「それでこの人達が?」

「僕達を見ていた人達ですよ」

竜の言葉に従って来たリーダーの男を含めた十人は膝をついて座らされている。

男達の服装は竜達と同じ防寒着を着てはいたが鹿か、毛の厚い動物から作られた物を着用していた。

地球で言うところのイヌイットみたいな服装をもう少し涼しげにしたような格好だ。

「この人達は・・」

「レティシア。知っているの」

「はい。会ったことはありませんが、この山で住んでいる部族。サンガの者達だと」

「サンガ?」

「はい。この山に集落を持ち、生活をしている部族です。何回か帝国に来て交易をしたりしています」

さすがは帝国の王妃を務めていたわけじゃない。

竜は改めて関心させられた。


「それでは何故僕達を監視していたのですか?疲れているところを突いて身ぐるみを剥がそうと」

「それはない!」

「じゃあ。何故?」

「それは・・」

急に口ごもる。


「それはあんたが一番知っているんじゃないか。レティシア・ダート・ミュエル」

男はレティシアを睨んだ。

レティシアの城での呼び名。そして王妃らしくない格好をしているのにレティシアだと見抜く男。

(相当できるな。この人)

情報通といい、他の男達とは違い気配も強い方だ。


分析をしながら竜はレティシアを見る。

「レティシア様」

そんな彼女の方も言いにくそうだった。

しかし

「ダート帝国は、陰でサンガの一族の土地を手に入れようとしているんです」

ゆっくりと短い言葉で説明した。


どうやら。楽しい登山はここまでのようだな。


竜は、これから起こるであろう事態に重いため息を吐き、雲一つもない美しい青空を眺めるのだった。


さて、どう出るか。



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