真実
色々なことを書いてしまって文章がおかしいかもしれませんが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
10/17。修正と加筆をしました。
10/29。加筆しました。
「さあ。話していただきましょうか。どうして〝こんな〟ことをしたのかを」
竜はそう言って相手を見据えた。そして、手にはいつでも抜けれるように刀を持っている。
さらに竜の背後には仁美、レティシアがいた。
「それをする前に紹介したい人がいる」
声の主、目崎・公が口を開いた。
現在、竜達はアーシャ達と合流して無事に突破することに成功した。そして、しばらく歩いていると川辺に着き、時間も時間のために野営することにした。そして、竜が倒した公を手当てして現在、彼に対して尋問しているところであった。
公は現在、治療を受けて意識は回復しているが両手両足は縄と仁美の契約している水属性の精霊の魔法で形成された水の鎖によって身動きがとれない状態になっていた。
仁美とレティシアは緊張した面持ちで公を見ていた。
そして、こうなる数十分前の出来事を思い出していた。
「この人は殺していません」
竜が言った言葉に二人は今日、一日の中で一番驚愕した。
二人はその言葉の意味がわかっていなかった。
理由は二人が竜達の最後の一部始終を見ていたからだ。
竜が公の剣を弾き上げたと同時に斬りかかり、その後公は崩れるように倒れたその瞬間を。
二人はこの時竜がやったのだと思った。
しかし兵士が一人もいなくなった後の竜の行動に驚いた。
竜が公をおぶったのだ。
死体を弔うのか。と思った。
しかし、後に言われた公を殺してない発言。
二人は理解が追いつけないでいた。
そして、今に至る。
「その人は誰ですか。もし、帝国の手の者なら」
手に持つ刀に力がこもる。
「その人は帝国の手の者じゃありません」
「誰なんですか」
「僕の恋人です」
公の告げられた言葉に三人は沈黙してしまった。
どう返しいいかわからなかった。
「作り話ではないのですか」
「それでしたら遠慮なく僕の首を斬ってください」
「分かりました」
竜は公の願いを了承した。
罠の可能性もあったが公の表情は真剣そのものだった。そして言葉にはあの時自分を殺そうとしてきた時に見せた殺気と同等いや、それ以上の気迫がそこにあった。
竜の了承に公は「ありがとう」と礼を言った。
そして
「来てください。マリナさん」
公が女性の名を呟いた。
すると公の隣に魔法陣が出現した。
「これは、〝転移魔法〟!?」
レティシアは驚きの声をあげた。
魔法陣が輝きを増す、そして魔法陣の上に一人の女性が出現した。
彼女は純白のシスターの修道服に似た服を着ていた。
特徴的なのはその髪であった。色が水色だったのだ。整った顔立ちに腰まで届く長さの水色の髪。水色の瞳。
竜と仁美は見惚れていた。
しかし、レティシアだけは違った。
「あなたは、宮廷魔法士のマリナ・リリュース」
「お久しぶりです。レティシア様。ご無事でなによりです」
マリナは深々と頭を下げた。
「止めてください。今の私は姫ではありません」
レティシアは頭を下げ続けているマリナを起こす。
二人の様子から自分達には害意はないと竜は判断した。
「その人が」
「はい。僕の恋人です」
「婚約者でもあります。まだですが」
マリナが補足する。
仁美とレティシアは目を見張る。
しかし竜だけは動揺すら浮かべず冷静な表情をとっている。
「なるほど。そういうことですか」
「すごいですね。私達の様子から見てもう察したんですか?」
「簡単なことですよ」
「あの。ヒカゲ様。これは一体」
「レティシア様にもわかりやすく簡単に言いましょう」
そう言い竜は口を開いた。
「目崎さんはこれからの生活のために死んだんです」
「どういうことですか」
「簡単に言いますと、現在の帝国は一枚岩ではないんですよね」
「さすがですね。あの中で一番現実を見ていただけはありませんね」
公は感心するように頷く。
「何があったんですか」
「僕は、あなたをダンジョンに置き去りにして数日が経った頃にマリナさんに会いました」
話によると魔法を学ぼうとした時にマリナがその教師となったのが縁になったらしい。
「その頃ですね。自分が愚かじゃないかって思ったのは」
マリナとの仲が深まっていく中で自分の事に対して思うようになっていった。
「他の皆は自分の力と勇者の地位でやりたい放題になっていった。その姿を見ていた僕は見ていて恐ろしくなった」
その事は竜も仁美とレティシアから聞かされていた。
能力と権力を盾に自分の思い通りにやっていることを聞かされていた。
「そんな中であなたが現れた」
竜を見る。
「茂木から復讐しに来たと聞いた時、当たり前だと僕は思いました。僕達はあなたを見捨てた。当然の事だと、ですが…」
「あなたが来たのは二人を助けるためだった」
仁美とレティシアを見る。
「僕はあなたが二人を助けた後になって、僕は決意しました。マリナさんと共に逃げようと」
「ですが、私達が実行しようとした頃に帝国でクーデターが起こりました。勇者、モトギ・ケントの」
その件は竜達も知っていた。
「彼と、その妻となった第二王妃様が王と女王になり、帝国は変わりました。召還された勇者達による横暴。そして、重い重税。帝国は傾きつつあります」
悲痛な声で語るマリナ。
「お義父様達はどうなってしまったのですか」
「先代の王と王妃様、そして第一王妃様は、別荘のある館に追いやられてしまいました」
「そんな」
「ならば何故、あなたは恋人である目崎さんのところにいるのですか」
なぜ一緒にいないのか、と竜は思った。
「私もヒカゲ様の思っているとおり忠義のために動こうとしました。ですが、私には、忠義というものはありませんでした。第一王妃様に説得されて私は国を出て、今ここにいます」
「ですが、国を出る必要があったんですか。そばにいても、まして、勇者の肩書きを持つ目崎さんがいたのに」
「僕は、茂木さんに反発していたんですよ」
「どうしてですか」
「罪滅ぼしですよ」
公は竜を見る。
「ダンジョンで君を見捨てた瞬間。僕は深い罪悪感で一杯になった。僕はなんてことをしてしまったのだろうって。だけど、最恐ろしかったのは皆だった。誰もが君を見捨てたことにまったく動揺していなかった。むしろ、喜んでいる節さえあった。後ろめたさを感じていたのが何人居たかも怪しいほどだった。僕は初めて恐怖した。戦い以外で感じたのを。それから、しばらく経った頃だよ。茂木が僕のところに来たのは、その時に言われたんだ。「日蔭の居場所を探せ」って。僕は驚いたよ。そして、能力を使った。すると日蔭さんの反応があるじゃないかって」
語り続ける。
「でも、言えなかった。目の前に立つ彼を見て、あの時の彼は、君を殺す気の表情をしていた。それはもう恐ろしいほどに。だから僕は、せめての罪滅ぼしになろうと協力を拒んだ。彼が王になった後も、でも…」
「でも?」
「ついにあいつは、マリナさんに手を出してきたんだ」
公の言葉に怒りが交ざった。
「人質ですか」
仁美の言葉に頷く。
「茂木は、マリナさんを秘かに狙っていたんだ」
「それで、今回に繋がるんですね」
頷く二人。
「それでは、」
レティシアはようやく気づいた。
公達の行動の意味が。
「そうです。二人は、自分達の将来のために自分達を殺したんですよ」
城では身動きがとれない二人。
そんな中で飛び込んできた竜の討伐。
その戦いで死んだことにすれば自分達は逃れられると。
「ふざけてるんですか!」
ここに来て初めて仁美が叫んだ。叫んだというより怒鳴った。
突如のことに竜も含め、全員が驚きの表情を浮かべている。
「あなた方は、どれだけ、彼を、日蔭さんを利用して!苦しめば気が済むんですかぁ!」
その場に仁美の言葉がこだまする。
「神無月さんの言いたいことはわかっています。僕達は自分達の幸せのために再び彼を苦境に立たせた」
「ヒカゲ様には大変な迷惑を掛けてしまいました。本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです!」
悲痛な声で二人は言った。
二人はどんな罰も受ける覚悟であった。
しかし、
「マリナさんは、それだけじゃないですよね」
突然、竜が穏やかに呟いた。
竜の言葉にマリナはさらに動揺した。
その様子に
「マリナさんは、僕達を勇者召還したことを悔いていたんだ」
公が言葉をついだ。
「自分が、僕達を召還してしまったからですね」
「さすがです。でもどうして」
「簡単なことです。僕達を召還した魔法。それは生半可なものじゃない。よっぽどの腕を持つ魔法士じゃないと無理です。そして、さっき見せた転移魔法。宮廷魔法士だということ。結びつけるのは簡単です」
それほどの実力があれば、片道の召喚とはいえ召喚することはできたはずだ。
そう。この人が竜達をこのサフィーリアに召還したのだ。
「申し訳ございませんでしたっ!!」
マリナはついに堪えきれなくなり、その場に崩れ、土下座をし、泣きじゃくりながら謝罪してきた。
「顔を上げてください」
しかしそんな彼女に怒りの籠った罵声といったものはこなかった。むしろ優しい声が彼女にかけられた。
「で、ですがっ!?」
「確かにあなたの行った勇者召還によって僕達の人生は狂いました。僕なんて目茶苦茶ですよ。こっちに来てから酷い目に逢わされるわ、ダンジョンに置き去りにされるはで、もう精神が壊れるほどですよ。ですが…」
マリナに竜は諭すように呟いていく。
「ですがその分、大切なものが手に入りました」
そう言って左右にいる彼女達を見る。
「そして、自分の行きたいと思う道が見えました」
「ですが、許す、許さないは別です」
きっぱりと告げた。
「だけど、もし、償う気があるのなら、幸せになってください」
「「!?」」
二人は驚いていた。しかし、竜の言葉の意味を知ると二人はその場に泣き崩れていった。
公までも周りを気にせずに泣いていた。
そんな二人に竜は優しく手を置いたのだった。
(僕はやっぱりあまいのかな)
二人を見て竜は苦笑を浮かべた。
真実は、こんな感じでした。
いかがだったでしょうか。
今後も、修正と説明を詳しく書いていく予定でいます。




