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例外者

今回は、ヒロイン一人の心情を書いてみました。

上手く書けた不安ですが、楽しんでいただけたら嬉しいです。


一旦、検問の列から離れた竜達は話し合いを開始した。


『さてとのう。わしはまずに思うのはどうやってわしらのことが知ることができたのかということじゃな』

今回は竜之心も参加している。


「私には心当たりがあります」

「心当たりって何?仁美」

アーシャは仁美に聞いた。

「私達、クラスメートの中で私達のことを見つけ出すことができる人がいるんです」

「そんな人いましたか?」

「日陰さんはみなさんとは距離を置いていました。それに本人もみなさんとは距離を置いていました」

「誰なんですか?」

「目崎さん。目崎・公です」

「あの。眼鏡を掛けていた」

「はい」

竜は彼のことは知っていた。

地球でいじめられていた頃でも時たまに話してくる人であった。当時としては珍しいクラスメートだった。しかし、いじめを見てみぬ振りをしていた一人ではある。

正確には興味がないといった感じであった。


「もしかして」

「はい。察しのとおりです。私達のことを先回りできるのは彼の能力によるものかと」

「何?その能力って」

「知り合いや自分が触れた物がどこに行っても知ることができる、と言った能力です。みなさんは千里眼と呼んでいました」

「千里眼ですか」

正に追跡調査にはぴったりの能力だ。逃げている自分達にとっては戦う能力よりも厄介である。


「ダート帝国の城には僕達の物がいくつかありますからね」

つまり、彼には自分達の行動は筒抜けなのだ。

しかし、それでも竜達は街に入らねばならない。

思案する中

「ねえ。私は大丈夫かな」

アーシャが名乗り出た。

アーシャの方を見て竜は閃いた。

「そうか。目崎さんの能力は知り合いと自分が触れた物。どれにも属さないアーシャさんは唯一の例外だ」


(希望が出てきた)

『それでは決まりじゃのう』

竜之心が締めくくった。


検問所。

「よし。入れ!」

兵士の言葉にアーシャは検問所を出て街に入った。


『成功したようじゃのう』

「緊張しましたよ」

街に入ったアーシャは胸を撫で下ろす。

『さて、わしらは早く調達をしなくてはの』

「はい」

二人は早速店を探すために歩き出した。


「上手く行ったみたいです」

精霊からの言葉を聞いた仁美は二人に成功したことを伝えた。

「良かったです」

レティシアは安心して大きく息を吐いた。

「さあ。僕達は次の行動に移りましょう」

「「はい」」


竜達三人は街の外れにある林の中を進んでいった。

今回の作戦は、公の能力に引っ掛からないアーシャに物資の調達を。竜達三人は、街から外れた森を通って遠回りをする。そして途中で折り合うという作戦だった。


「これだけあればいいかしら?」

『ふむ。いいじゃろう』

バックにたくさんの買った物を詰めたアーシャはフウーッと息を吐く。

『お疲れ様じゃな』

腰に差している竜之心はアーシャを労う。

「ありがとう。おじいちゃん」

腰に差した小太刀に言葉を言う。

アーシャは竜からもしもの時に備えて竜之心を渡しておいたのだ。

「それにしても竜はすごいね」

『どうしたんじゃ?いきなり』

「うん。ここまで一緒に旅をしていて思ったんだ。すごいって」

アーシャは初めて竜と勝負したことを思い出す。

自分と同等の速度についてきて、なおかつ自分を倒した。

しかも、こっちの世界に来て何の能力も加護も手にしていなく、不憫な生活を余儀なくされていた。しかし、自分の先祖に出会い修業をしたとはいえ己の身体能力を極限にまで高めて自分達、能力持ちと互角以上の戦闘能力を手にしたことには驚き以外の何者でもなかった。

アーシャは竜を見て思った。

すごい。と

さらに、彼と戦っている中で自分を見据える竜の強い瞳にアーシャはドキッとした。

そして何より彼の性格にも惹かれた。

それほどの実力を持ちながらひけらかすことなく、誰かのためにその実力を振るう。

その姿は、正に勇者だ。


「本当に格好いいよね」

『わしの子孫のことか?』

「!」

竜之心の言葉に一瞬心臓が止まりかけた。

どうやら自然と口から言葉が出ていたようだ。

聞かれたことの恥ずかしさのためなのか頬に熱を感じ、心臓の鼓動が早く脈打つ。

『あやつも罪な奴じゃ。こんな美人さん達の気も気づかないとは』

「えーと、達っていうのは」

アーシャは恥ずかしさも忘れて竜之心に聞き返していた。

『後の二人に決まっておるじゃろう』

やっぱり。とアーシャは思った。

まだ、知り合って少ししか経っていないが仁美やレティシアが竜を見る表情は恋する乙女の顔だった。

アーシャでも理解するほどに。

しかし、それを思い出すと何故かイライラする感じがした。そして、焦り出してもいる感じもする。

(何?この感じ…私ってもしかして…)

『嫉妬かの?』

「だから!おじいちゃん!他人の心情を読まないでよ!」

『すまんのう。じゃが、わしとしては自分の子孫であり、弟子には幸せになって欲しいという願望はあるんじゃ』

「おじいちゃん」

その声は子の将来を思う親の声だった。


『ま、お前達は若い。これから先はゆっくりと行きなさい。そして、アーシャよ。お前さんの今の感情もゆっくりと向き合って行きなさい。答えを出すのはそれからでも遅くはない』


竜之心の言葉を聞いたアーシャは自分の胸の内に沸く感情を少しだけであるが理解した。そして、これから先のために向き合って行こうとも思った。


「悩んでいるなんて私らしくないわ!さあ!さっさと街を出るわよ!」

高らかに叫びアーシャは街の出口へと一歩前進するのだった。


「ここまでは順調ですね」

「そうですね」

「ですがアーシャさん達は大丈夫でしょうか」

「大丈夫ですよ。師匠もついています。それにアーシャさんの腕なら問題ないでしょう」


森の奥へと進んでいく三人。

ここまでの道中で帝国の追っ手や街にいた兵士らしき者は現れてはいなかった。


(それでも警戒を解いちゃいけない)

竜は集中して周囲を警戒した。


「伏せて!」

竜は叫んだ。

仁美達も言葉を聞いてその場に伏せたするとバンッ!という音が竜達の少し離れた場所で鳴った。


「やっと見つけました。次は外しませんよ」

竜の耳に聞き覚えのある声が入ってきた。

次の瞬間。竜は反射的にその場から跳躍した。

するとさっきまで竜が伏せていた場所に火の玉が命中し、その場を焼いた。


(危ない!)

着地して周囲を見る。


「上手く避けましたね」


竜が声のする方を見た。

そこには地球では彼のトレードマークというべき眼鏡を掛け、魔法使いらしい黒いローブを纏った目崎・公が竜を見据えていた。


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