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最後の難関

新しい勇者を登場させてみました。

文章表現は上手く書けているか不安ですが、読んでくださっている方々が楽しんでいただけたら嬉しいです。


竜達がセエルを出て一週間が経とうとしていた。

「ここまでは順調ですね」

「そうですね」

仁美とレティシアの言葉に竜もそう思い始めていた。

これまでの道中で怪しい集団や人物、盗賊といった者達に遭遇することは無かった。

竜達に安らぎの旅が訪れていた。


「これで、帝国からは脱出した、と考えていいのかしら?」

「はい。ここから先は山が続いていて山さえ越えれば中央都市国まで後僅かになります」

アーシャの問いにレティシアが答える。

レティシアは、平民の出ではあるが王位継承権を持っていた少女。外交での自分が動く時に備え、教育を受けていた。そのためレティシアの持っている知識は竜達にとって重要なものになっている。


「じゃあ。山を越えれば、」

「はい。ほぼ、大丈夫でしょう」

周囲の空気が明るくなった。


「それでは最後の難関を超えましょう」

アーシャの言葉に全員が頷いた。

竜達の歩きに気合いが入る。

最後の難関。それは〝山〟。

竜達にとってこの山での道中が最後の試練になった。

しかしそれ以上に問題が起こった。

山を越えるための物資を揃えるために立ち寄る予定であった山の麓にある街の入口に検問が敷かれていたのだ。


それは、竜達が街に向かっている数日前の出来事であった。

ガート帝国 王室。


「まだ、捕まらないのか!」

室内に声が響く。

声の主は現ダート帝国王 茂木 賢斗だ。

「も、申し訳ありません。何ぶん消息が掴めないもので」

「っ」

舌打ちする衝動を押さえる。

「なら。あいつを呼べ」

賢斗の言葉に宰相は目を見張った。

「し、しかし!あの方は」

「かまわない。それに手は、打ってある」

確信があった。あいつを動かせる。

賢斗には絶対にという自信があった。

「分かりました」

宰相は部屋を出た。

それから数分が経過して宰相が一人を連れて部屋に入って来た。

その一人は賢斗と同じ年齢で腰には剣を差し、黒色のローブを羽織っている少年であった。

「メザキ・トオル様をお連れしました」

「ご苦労、下がれ」

宰相は部屋を退室した。

「よく来てくれた。目崎君」

目崎・(メザキ・トオル)

竜、仁美達と同じ召喚されたクラスメートの一人だ。

「何故、僕を呼んだ。あの件は断ったはずだ」

公の声には怒りが含んでいた。

「まあ。そう言わずに飲み物はどうかな?」

「結構だ。で、なんだ今度は」

「じゃあ手短に言おう。日陰・竜を探し出せ」


「断る」


公は即答した。

自分の答えは決まっていた。


「何故だ。どうして断る。俺達に復讐をしようとして挙げ句に仁美さんとレティシア姫を拐った犯罪者を君は野放しにしておくのか」

よくもぬけぬけと。

「じゃあ。こちらも言うよ。君がそれを言うのか」

「どういうことかな」

「神無月さんと日陰君。二人のことに君は言い知れぬ感情を抱いていた。僕は、心を読むとかそんな事はできない。だけど、僕は、〝見ていた〟」

公の能力。それは、自分の知り合い、触った物がどこにいるのかを知る、見ることができるのが公の能力。

皆からは〝千里眼〟と呼ばれている。


「覗きか。趣味が悪いな」

「むやみやたらに使用しないさ」

そう、これまでも下心でこの能力を使ったことがない。

「日陰は僕達を妬んでいた」

「それは君の方だ」

「心外だな。この俺がどうして無能の弱陰を妬む理由がある?」

「神無月さんとレティシア姫さ」

「っ」

「君は二人をどうしても自分のものにしたかった」

「それで君は何が言いたい」

「これまで日陰君のことを何もして来なかった。けど、僕は彼に酷い仕打ちをして来た人間だ」

そうだ。毎日酷い仕打ちを受けていたのを庇うことなく知らん振りをしていた。

「贖罪のつもりか」

「そうだ。これが僕のせめての罪滅ぼしだ」


彼らをこれ以上苦しませない。

「そうか。仕方ない」

賢斗は公に近づいていき耳元で小さな声で耳打ちをした。

「なんだと!?」

公はここにきて初めて驚愕の表情を浮かべた。

「悪い話ではないだろう」

賢斗は笑みを浮かべ、話をする。

「お前。どうして」

「俺をあまく見ていたようだ」

賢斗の勝ち誇る表情を見た公は歯を食い縛り、賢斗に斬りかかろうとする自分自身を抑えた。

「条件だ。こちらの条件をのんでくれたらいい。そうすれば何もしない」

「くそっ」

「さあ。決めたまえ」


(日陰君。ごめんなさい!)

非力な自分を呪いたくなった。

結局、この男に自分は手を貸さなければならない。

「分かった。君の条件を受けよう」


公は悔しさ、罪悪感を堪えて賢斗の申し出を受けるのであった。


(ははっ。これで逃げられないぞ。日陰)

賢斗は頭の中で竜が兵士達に捕らえられる様子を想像していた。そして、自分が仁美達を救った英雄となった姿も想像しているのだった。


公の能力によって竜達の居場所。そして次にどこに向かっているかを把握した賢斗は竜達が向かう数日前に検問所を建てたのだった。


「検問ですか」

竜は列に並んでその先を眺める。

「そんな。私がこの街に来たことはありますが入口に検問なんてありませんでしたよ」

レティシアは驚くように検問場所を見ていた。

「どうやら。私達のことを狙っているみたいね」

検問がどれくらい掛かるかを見てきてくれた彼女の表情はあまり良くはなかった。

「アーシャさん。どういうことですか」

「ここは、ガトー帝国の末端の領土。検問をしているのはガトー帝国の兵士達だったわ」

「つまり、狙いは」

「私はどうかわからないけど竜達というのは間違いないわ」


山を越える前に竜達に試練が舞い降りて来たのだった。


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