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国を出る

題名とは内容が違う気がします。しかし、楽しんでいただけたら嬉しいです。

「すぐに、この国を出ましょう」

竜は全員に言った。

彼女達は竜の言葉に驚くことはなかった。


「僕達は、この国で目立ち過ぎました」

人拐いとの一件により竜達のことが注目されかけていた。


「このままいると」

「ガトーから手が回ってくるかもしれない、と」

仁美の言葉に竜は頷く。

レティシアもアーシャも竜の思っていることに険しい表情をする。

「この国もガトー帝国から離れているとは言えません。なので、この国を出ようと思います」

竜の言葉に全員が賛成した。

その後の竜達の行動は早かった。

旅に必要な物資、お金、等を今日の内に揃えた。

そして、その日の午後には、竜達は国を出ていった。


その次の日になって人拐いの件が話題になった。

だが、当事者達がいなかったために大きな話題にはならなかったが、セエルでは噂となった。


騎士とも渡り合える者達を一人で倒した無名の剣士と人拐いを返り討ちにした少女達がいる、と。


竜達がこの噂を聞くことになるのはまだ先になる。



「でも、よかったのですか?」

レティシアが心配するように竜を見て聞いてくる。

「何がですか?」

「こんなに早く出てしまってヒカゲ様の傷は、癒えてはいません

でしょう?」


竜の傷は癒えていない。

いや、まだ治らないと言うほうが正しい。戦いが終わったあの時も仁美達が必死に治療してくれた。

精霊の力により傷は塞がってはいるが完治はしていない。精霊の話によれば、激しい動きをすれば傷が開くと言われていた。


(動きが制限されたのは痛いな。けど…)


「大丈夫です。激しい動きをしなければ問題はありませんから」

心配する彼女達に平気だ、ということをアピールする竜。

それでも彼女達はそんな彼を心配する表情を見せるのだった。


その日は野宿となった。

枯れ木、枯れ草などを集め、焚き火を起こし、そこに集まった。


『のう。竜よ。お前さんはもう寝なさい』

「だけど、見張りを…」

『いいから寝ろ。傷だらけのお前さんがやったって彼女達を困らせるだけじゃあ』

竜之心に押しきられ、竜は先に寝た。この時竜は日頃の疲れが一気に出たのかぐっすりと寝たのだった。


『全く。世話のやける孫じゃ』

竜が寝たのを確かめため息を吐く。

現在、竜之心は小太刀から霊体を出現させていた。


『さて、彼女達と話をしようかの』

竜之心は仁美達が集まっているところに向かった。


「竜之心様」

仁美が最初に自分の存在に気づいた。

『おお。すまんがお邪魔させてもらえるかのう』

「かまいません」

『ありがとう』

よっころしょっと腰を下ろす。

『暁さんとはこれで何回目かのう』

「もう慣れるくらいには会っているよ」

『そうか』

そんな言葉に笑みが浮かんだ。


『ところで、にぎやかでいいところ悪いんじゃが、三人に聞きたいことがあるんじゃ』

「なんでしょうか」

『わしの子孫に関してじゃ』

「この前の戦いのことですね」

仁美が察して言う。

戦いというのは、セエルでのことだ。

レティシアとアーシャも同じようなことを考えていた。

『あやつは、強い。それはお前さん達も充分に理解しているの』

頷く三人。

竜の実力はずっとそばにいた三人が充分に知っている。

『じゃが、それでも、無敵ではない』

竜之心は重く呟く。

『この前の戦いの後のあやつを見たじゃろう』

仁美達はあの時を思い出す。

自分達に心配させないように笑う彼の傷だらけの姿。ほとんどがかすり傷ではあったが多くの傷を負ったのには変わらなかった。


『わしとて小太刀のつくも神ではあるが元は人間。親心というものは持っとる』

そう表情は子を思う親の表情になっていた。

『だからこそ。わしは思う。無茶をしないでほしいとのう。ま、戦う技術を叩き込んだ身なのにのう』


三人は竜之心の言葉にどう返せばいいのかわからなかった。

ただ、一つだけ言えることがあった。


「竜之心様。私達、強くなります!日陰さんが無茶をしないくらいに私達も強くなります!」

仁美の言葉に二人も頷く。


『ありがとう』


三人の言葉と思いに竜之心は一言、言った。


竜の知らないところで少女達は成長していく。その成長がこれから先、どのようになるのかはわからない。しかし、それが竜にとっていいことに繋がることは確かであろう。


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