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少し、理解できない部分があるかもしれませんが、楽しんでいただけたら嬉しいです。


主人公が圧勝したのかは、微妙な感じがしています。

「それでは、いきます」

静かに竜は告げる。そこには、底の見えない凄みがあった。


男は、神経を集中させて竜の動きを観察する。


竜が真っ正面から男に接近していく。

男はその動きを逃さなかった。

得意の突きを放つ。

「何!?」

しかし、再び、竜にその刃は通らず、すり抜けていき、竜の像が歪んで消えた。


「!」

男は右脇腹に痛みを感じた。

見ると傷は浅かったが出血していた。そして背後に気配を感じ振り向く。

そこには血糊の付いた刀の刀身を振るい血糊を払う竜の姿があった。


「本当なら殺そうと考えていました。しかし、あなたには、現状をこの国の騎士に話してもらうために生かしておくことにします」

「余裕だな。そんな事でいいのか」

「あなたの技は、僕なりに見切りましたので」

「ずいぶんな自信だな!」

男が地を蹴り、竜に剣を振るう。

それを竜は左手の剣で受け流す。


「地よ。礫のなりて、敵を打て」

男が呟き、転がっていた土や、小石が弾丸のように竜を襲う。

しかし、竜は慌てることなく刀と剣、驚異的な移動速度で斬り、受け流し、避けていった。


「くそ!」

男は、ここに来て悪態をつく。

(とんでもねぇ奴だ)

男は、竜に多少感動していた。

同じ、剣を鍛えてきた者として竜の技量に感服したのだ。

そして、仕事をしていく以上に沸き起こる感情があった。


戦いたい。

こいつと全力で戦いたい。

そして、勝ちたい。


「いくぞぉ!」

ギィン!ガギ!

剣と剣がぶつかり合う。


(まただ…)


再び、男の剣が竜の身体を通り抜けてしまった。

そして、さらには、剣が次第に、竜の剣とぶつからないようになってもいた。

「これがお前の能力か」

「いえ。能力では、ありません。言うなれば、〝技術〟です」

男は、ここに来て驚愕した。

「嘘つくな!どう見ても能力でしか説明できないぞ」

能力じゃなければ自分の見てきた現象は何だ。


「簡単なことですよ。残像が残るくらいに高速移動しているんですよ」

何でもないと言うかの如く竜は説明した。

「そんな馬鹿な!」

残像を残して移動。

「そんなこと、〝剣聖〟クラスじゃないか」

(剣聖…)

竜はその単語が気になった。

しかし、今は、戦闘中のため後回しにした。


「それは、それは、ですが、僕の技術は、大したことではありませんよ」

「うるせぇ!」

突きを放つ。

竜はそれを左手の剣で弾く。

すかさず、右手の刀を上段から振るう。

男はそれを見て直ぐ様、刀身を横に前へと出す。

刀を受け止めるためだ。

だが、それはかなわなかった。


「な……に…」

振りおろされる刀が男が構えていた剣の刀身をすり抜けていったのだ。

次の瞬間には左肩に硬い何かを打ち付けられ、激痛にうめきながら意識を失うのであった。


「ふう。きつい戦いだった」

深く息を吐いて、鞘に戻す。

男に一撃を入れ、勝利を納めた竜はひとまず安堵するのだった。


「ま、まてぇ!」

そんな竜の安堵を消すかのように人拐いの男が叫ぶ。


「何ですか。まだいたんですか」

竜は、忘れてた。と思った。


「よ、よく勝てたな。だが、お前は終わりだ」

男は、なぜか勝ち誇る。


「お前がこいつらとやっている間に俺の仲間がお前の女共を捕らえに行った。もうすぐ、ここに俺の仲間がくる。お前は、そこでおとなしくしていな」

男の表情はまさに勝ち誇っていた。

人質さえいればこっちのもの。

男は、そう思っていた。


「わかってないですね」

竜は動じることなくため息を吐く。

「何?」

「思い出してください。この前、あなたの仲間の何人かが〝誰に〟やられたのかを」

言葉を聞いた男は、その直後。表情がわなわなと震えだし、その顔が青白くなっていった。

理由は、竜の背後にあった。


「終わりましたか?」

男の変化を無視して竜は宿の入口の方を見る。


「うん。竜の方に比べたら大したことなかったよ」

三人を代表するようにアーシャがにこやかに笑っていたのだった。そして、その後ろで仁美とレティシアも笑顔で竜の方を見ていた。

三人の少女達に竜も笑うのだった。


自分の思惑が見事に崩れた男はその場に崩れ、気絶した。


男達との戦いは、竜達の圧勝で幕を閉じたのであった。



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