竜、剣を振るう
戦闘シーンを上手く書けたか心配ですが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
宿を出てから竜は叫ぶ。
「出てきたらどうですか」
その言葉を合図に物陰からぞろぞろと男達が現れた。
竜はその男達に見覚えがあった。
「あなたはいつかの」
「へ、見つけたぞ。ガキ」
それは仁美達を売り物にしようとして襲い、返り討ちに逢った男だった。
後ろには竜が見覚えのある男達もいた。
「兵士に連行されたのでは?」
「へ、あんな奴らから逃げるなんざぞうさもないんだよ!」
逃げたのか。
(逆にすごい)
「では、謝罪に来てくれたのですか?」
「誰がてめえなんかにあやまっかよ!」
「それは、残念です」
本当に残念そうに言う。
「では、今日は?」
竜の問いに男は笑みを浮かべる。
「この前の礼をしにきたのさ」
そして、腕に覚えのありそうな男達が現れた。
その数、四人。
「この人達はな。この国の騎士とも互角に闘える腕の持ち主達だ」
得意気に言う。
「それで、これは一体?」
あたかも理解できないといった感じに言う竜。
「頭が悪いようだな。教えてやるよ」
「てめえを殺すためだよ!」
男は竜に言葉をぶつけた。
竜は男の言葉に静かに問う。
「何故ですか?」
「この俺をコケにしやがったからな」
「それだけですか」
呆れたくなる。
「おかげで俺のメンツは丸潰れだぁ!」
「ならば、他人の力ではなくご自分の力でくればいいでしょう」
「なんだと」
「ご自分でやるからこそ本当のメンツと言うのを取り戻せるのだと僕は思いますが」
男は怒りの表情で竜を見ている。
竜の言葉はどうやら、彼をさらに怒らせてしまったようだ。
「うるせぇ!覚悟しやがれ!」
それが合図となり、雇われた男達が剣や刀を抜いて斬りかかってきた。
竜は、一人、一人の一撃、一撃を避けていく。
しかし、相手は男が言うだけあり、今の攻防で竜の実力を察したのか容易に斬りかからなくなった。
さぐりあいの攻防。
1つの動きが命取りとなる。
膠着状態から数秒後。
「だりゃぁ!」
一人が動く。
男が持つのはバスターソード。叩ききるが主体の剣だ。
力任せの一撃が迫る。
竜は横に動いて避け、腰に差した刀に手をかけ、抜かぬまま鞘の部分を持ち、男の首下からアッパーをするように突き上げた。
「グハァ!?」
男は吹き飛び、地面に倒れる。気絶だ。
(まず、一人)
次々とくる刃を竜は一太刀も受けることなく避ける。
「これならどうだ」
一人が剣をフェンシングのように素早い突きは繰り出してきた。
(早い)
竜は刀を抜き、突きをさばく。
迫る刀身に刀の切っ先を当て、軌道をずらして避ける。
「俺の突きをこうまでさばいたのは、お前が初めてだ」
「それは、どうも」
「調子に乗るなぁ!」
再びくる突き。
「調子には乗っていません」
刀で突きを弾く。
「慢心は、…」
弾くと同時に刃を反す。
「油断の」
一気に懐に入り、
「元…ですから」
男の腹に剣道で言う胴が決まる。
「ぐふぅ!?」
男は腹を押さえ込み倒れた。
(後、三人…)
三人目は、さっきまでの男達と同じで戦闘スタイルが同じであった。
そのため、勝負はすぐに着いた。
男の一撃を避けた竜の一撃が男の肩を直撃して終わったのだ。
(四人目は……!)
背後からの殺気に身体が動いた。
次に右頬に熱い痛みが走った。
そして、次に鉄臭い液体が頬をつたって垂れるのを感じた。
「背後からの一撃。なかなか」
「余裕だな。だが、あれを避けるとはな」
男は構える。
そして、その構えと、その得物から戦闘スタイルを察する。
「フェンシング」
「ガキのくせによく知っているな。こいつは、この国にある道場で教わった剣術だ」
この国。
竜は興味を持った。
「セエルの剣術」
(でも…)
「冥土の土産に教えてやる。こいつは、この国に召還された勇者が持っていた剣術だ。そして、こんなでも俺は道場だと敵無しだったんだ」
「成る程。勇者の…どうりで」
竜は小さく呟く。そして、納得がいった。
この国に召還された勇者は自分達と同じ世界の人。そして、その人が心得ていたのがフェンシング。大人だったのか学生だったのかわからない。
(突き主体の人が多いわけか。さっきの人も突きから来てたし)
「けど…」
そして
「ならば、こっちも本気でいかせてもらいます」
最後の一振り。剣を抜いた。
二刀流。
竜が現在、自分で思う本気の戦闘スタイル。
「いきます」
竜は、そう言って構えた。




