追跡者は紅髪
新しいヒロインを出して見ました。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
ご意見、ご感想をお待ちしています。
加筆とヒロインの言葉使いを少し修正しました。
次の日。竜は仁美達に部屋から一歩も出ないでほしいとお願いをした。
理由は、昨日から自分達をつけてきた存在に対処するためだ。
「それじゃあ。行ってきます」
「大丈夫でしょうか」
「気配から見て昨日の人達とは違うみたいです。それにむけてくるのも殺気といったものではなくて好奇心に似た感じがしましたから・・・」
言葉を区切る。
「・・・ですが、相手は高い実力を持っています」
そう、これが竜達が警戒している主な理由だった。
気配から敵とは言わないが気配から実力が高いと感じたからだ。
それは竜も含めて昨日の男達との戦いを終えた後に気づいたのだ。それまで気づいていなかった竜達は男達にむけていたとはいえ失態であった。
「二人は、ここを出ないで下さい」
「「わかりました」」
二人の言葉を聞き、竜は部屋を出た。
その後ろ姿を見送る少女達の顔は不安でいっぱいといった感じだ。
しかし、彼女達は、少年の無事を祈り、耐える。
再び目の前のドアを開く彼の姿を思い浮かべて。
(さて、どう出るか)
宿から出たらさっそく竜は昨日と同じように市場や街の中を散策することにした。
散策を開始してから数分。
(きたか)
獲物がかかった。
こちらを悟られないようにつけてくる気配が背後に現れたからだ。気配の消し方はなかなかだ。常人なら追跡に気づくことは一生ないだろう。
竜は暫く様子を見るために散策を続けた。
そして、人気が少なくなった街路で立ち止まり
「いい加減に出て来たらどうなんですか?」
「あはは、やっぱりばれてたか」
明るくはつらつとした声で一人の女性が現れた。
女子だったことには竜は驚いた。それも美がつくほどの少女だったからもある。
女性と言っても竜や仁美達と何ら差のない女の子だった。しかしその体つきは二人に負け時劣らずのプロポーションで竜に印象を与えていた。
しかしその姿を見てすぐに彼女が冒険者だ、と思わせる姿であった。
そして、何よりも竜の目がいったのは真っ赤と言うにふさわしい髪であった。
赤、いや、紅。まさにその色だった。
そして、何よりもその髪とともに顔もその髪にふさわしくなるように造られたかのように美しく、合っていた。
人は見かけによらない・・・か。
そんな言葉が頭に浮かんだ。
しかし、気を取り直し、
「あなたは何故、僕をつけていたのですか?」
竜は紅髪の少女に問う。
「単刀直入に聞くね」
「あなたは素直につけていたことを認めていましたのでね。こちらも、素直に、」
「そっか!面白いこと言うよね!君!」
彼女はなんらあくびれることなく笑う。
「で、理由は?」
「う~ん。理由はね。昨日見た市場での君達の光景かな」
「市場、と言うことは」
「うん。襲われるまでずっと見てた」
「それは、随分と」
ここまでくると呆れるな。と竜は思った。
「しかし、僕達は普通に買い物をしていただけですが」
「二人の女の子に密かに手を出そうとしていた男達を撃退しておいて?」
なるほど。
「見ていたんですね」
「バッチリ!」
侮れない人だ。
「あ、あれ?ここでだと、動揺する流れなんだけどなあ」
「ずっと見ていたと、言っていました。つまり、僕の行動も見ていた。さっきのは、事実確認ですよ」
「ふぅ~ん。私は誘導されたってわけね」
紅髪の少女は、嬉しそうに呟く。
「それで、僕達をつけていた目的は?」
「うん。話す前に一つ、お願いがあるんだ」
「お願い」
少女は、笑顔を引っ込め、真剣な表情をつくる。
そして、自らの腰に差してある得物を抜いた。
「私と立ち合ってほしいの」
一拍置いて。
「断る、と言えば」
「それでも、あなたに剣をむける」
ゆっくりとした動作で刃が顔を出した。
彼女の持つ剣の刀身が輝く。
「珍しいですね」
「何が?」
「この国やその他の訪れてきた村にいる人達は全員、剣を使用していました。あなたのように刀を使う人は初めて見ました」
彼女が今持っているのは竜の持っている得物の一つ刀だった。
「そうだね。けど、私の剣術は元々、〝日本刀〟を使った剣なんだ」
これには竜は驚く。
「日本刀ですか」
「ええ。そう。そして、初めて〝驚いた〟ね」
なかなかの洞察力。こっちは悟られない程度の動揺だったのに。
竜は感心した。
そして、
「じゃあ。あなたは、僕に関して気づいてはいませんか」
「まさに、そのとおり。地球という別の世界から来た勇者様」
勇者という言葉に驚きかけるが堪える。
「ご明察と言いたいですが、僕は、〝勇者様〟じゃないですよ」
「ダート帝国で勇者召喚されたって聞いたんだけど、その中で帝国に反旗をひるがえした勇者達が討伐されたって話を噂で聞いたんだけど」
「情報が早いですね」
「今朝の新聞に帝国の新国王誕生と一緒に出てたわ」
(なるほど)
「ねえ。これくらい答えてあげたんだから私の願いも聞いてくれないかな」
「そうですね。わかりました。それに女性の頼みを無下にはできません」
そう言って竜は構えた。
「ありがとう!」
少女は嬉々とした表情で刀を構えた。
その構えは鞘から刀は出ていたが抜刀の構えだ。
「参る!」
「いざ」
それが合図となり、二人は動いた。
少女は一気に竜との距離を詰めてきた。
(早い、)
そして、刀を抜刀。
竜に刃が迫る。
竜は刀の刀身を少しだけ鞘から出して受ける。
ギィン!!
という金属がぶつかる音が響いた。
竜は受けると同時に後方に下がる。
「よく受けたね」
「ひやひやしましたよ」
「そんな風に見えないけど」
「見間違いですよ!」
「そういう事にしとくね!」
再び、構え直す。
「やぁっ!」
再び、少女は地を蹴り竜との距離を詰めてくる。
しかし、竜に近いた瞬間。
竜の視界から消えた。
「!」
竜はその場で跳躍。
その直後。
ブンッ!という空気を切り裂く音が鳴る。
少女が横凪ぎに振るった音だ。
「もらったぁ!」
空中から落下してくる竜を迎撃しようと切り上げる。
竜はここにきて完全に刀を抜いた。
そして抜けた状態のまま少女の刀を受けた。
少女はその直後に驚いた。
理由は竜の行動にあったからだ。
刀がぶつかり合った瞬間に竜がその場で前方宙返りをしたのだ。
ぶつかった剣と剣を足場のように利用して。
回転をした竜はそのまま少女の隣に着地。
「!?」
少女はその場から消えるように移動した。
(なんて動きを)
少女は竜の動きに驚いた。
「やるね」
「早いですね。動きが」
「でしょう。でもね。早いだけじゃないんだよ!」
その瞬間、竜にむかって炎の球が放たれた。
それを横に動いて避ける。
「魔法ですか」
「そ、炎に特化してるんだけどね!」
今度は、炎を球ではなく、火炎放射にしてきた。
「うわっと!?」
慌てて回避する竜。
「炎の攻撃には自信ありんだ」
少女は得意気に胸を張る。
言うだけある。
「とんでもない人ですね」
竜は冷や汗ものだった。
なんの能力も持たない竜にとって能力持ちの相手はきつかった。
しかし
「でも、このままだと街が火事になってしまうので終わりにしましょう」
竜は鞘にまだ、納まっていた剣を抜いた。
「剣と刀の二刀流。面白いね!君!」
「参ります」
「!」
今度は少女が驚く番になった。
驚いている間もなく少女は刀を振り向き様に横に振り抜く。
その瞬間、竜の剣とぶつかった。
「く、」
「はっ!」
竜は止まらず片方の剣を右切り上げに振るった。
しかし、その攻撃は少女の展開した魔方陣によって阻まれた。
「どう?」
「すごいですね。でも、」
再び竜は少女の視界から消えた。
(どういう移動しているのっ)
少女は竜の尋常じゃない速度に驚いた。
少女も竜と同程度の速度で移動できる。しかし、彼女の場合は特定の距離に対しての移動法。竜の場合はどんな所、どんな距離でもその速度を維持して動ける。
少女が短距離走に特化しているなら、竜の場合は長距離走に特化しているといった感じだ。
「じゃあ。これならどう?」
炎が彼女を包み、彼女を中心。炎の円が形成された。
「この炎の陣。〝火祭り〟。突破できるかな!」
炎が彼女を守る。
まさに炎の結界である。
少女は勝利を確信した。
その時、少女から見て真正面を炎を突き破る一つの影が現れた。
「来ると思ったわ!」
少女が影の方へ手を突きだす。
炎が一斉に襲いかかる。
しかし、ここにきて影が炎とぶつかる前に消えた。
「え!?」
「すごかったですよ。けど」
竜の声が少女の頭上から響く。
少女が声のする頭上に顔を上げた瞬間。
少女の頭に手刀が打ち込まれた。
少女はその衝撃により意識を失った。
竜は着地と同時に少女をキャッチした。
「ふぅー。危ない勝負だった」
炎の影響で所々、服が焦げている。
服が多少の被害に遭ったが竜は勝利を手にするのであった。




