表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/95

チートなクラスメイト達とクラスメイト達の闇

次の日。

竜達は、騎士団の監視の元でモンスターの討伐に出た。討伐といっても帝国を囲んでいる城壁の外にある森でモンスターと戦うといったものだ。

そして、相手はゲームの定番とでも言うべきスライムやゴブリンだ。


「おらっ!!」

「くらえっ!」

魔法を打ち出しモンスターへとぶつけていく。

そして、攻撃が当たりモンスターが倒されていく。


「やったぁーーーッ!」

「楽勝!楽勝!」

といった具合にクラスメイト達は自分達が持つチートと言うべきステータスと力を思う存分に振るっていた。

スライムとゴブリン達は討伐というより殲滅と言っていいレベルに彼らの餌食になっていた。その姿におもわず同情したくなる程にだ。

自分達の手で倒されていくモンスター達に生徒達は歓喜している。

その中でも特に目立っていたのがクラスの人気者で、イケメンの茂木 賢斗モトギ・ケントだ。


「フ、はぁーーーッ!!」

気合いとともに剣を一閃。

それだけでゴブリン十体が上半身と下半身が分かれて大量の血を出して息絶えていく。

その瞬間の後には辺りからくる歓声を彼は一身に浴びる。特に女子から。

茂木は元いた地球でもスポーツ万能で勉強も多少できるまさに優等生の代表と言っていい程の存在だった。そして、こっちの世界でもその才能を開花させていた。

彼の能力は、聖属性の魔法だ。

この属性は極めて珍しい属性の一つで持つ者は歴史に名を刻まれると言われている程。そして、彼の力はこれだけではなかった。召喚された数日後に彼はこの帝国が持つ聖剣と呼ばれる武具に選ばれたのだ。まさにおとぎ話の主人公、ファンタジー小説の選ばれた主人公に相応しい人物になったのだ。

しかし、凄かったのは彼だけではなかった。

彼程凄まじくはなかったがそれでも凄いと言える人はクラスメイトにはいた。


弓道のエース。神無月 仁美カンナヅキ・ヒトミ

長く美しい黒髪と華奢で細いプロポーションが特徴的な大和撫子と言う言葉が相応しい美少女だ。

地球でも茂木と同じくらいの秀才であった。

彼女の能力は茂木が持つ聖を除いた属性を全て使えるといったものだ。この世界で生き物が持つ属性は最大でも二つが限界であった。そのため彼女の能力も希少な部類に入る。そして、彼女はその能力を得意であった弓道の腕と組み合わせてクラスの中でも最も応用のある戦闘能力を手にするに至る。


そして三人目は茂木と同じくらいにモテている広崎 隼人ヒロサキ・ハヤトだ。

彼の場合は、茂木とは違うが他国からではあったが聖属性の武器を贈られることになっている。そして、彼の能力は聖属性の次に珍しい光属性を持っていたことだ。この属性は聖属性にもっとも近い属性と言われ成長すれば聖属性になれるものだった。そのため、聖属性の武器を与えられた。聖属性ではないが可能性のある能力であったためだ。

そして、その他の人達も三人に負けない程の能力を持っていた。

召喚された生徒達は皆、選らばれし者だった。


しかし、たった一人だけ別がいた。

今、一人だけでゴブリンと接戦をしている竜だ。

竜の力はこの世界の冒険者とまったく変わらないものであった。

いや、冒険者よりも下だった。

その理由は、魔力はおろか、能力ですら持っていなかったのだから。

そのため他の人達が楽勝に倒している中ただ一人だけゴブリンと互角の戦いをしなければならなかった。


「う、く、」

ゴブリンの振るう棍棒を紙一重に避けていく。そして、直ぐ様、訓練の時に支給された剣を横凪ぎに振るう。

剣はゴブリンの腹を切り裂きゴブリンに致命傷を与えた。

ゴブリンが致命傷に怯む。

竜はすかさず追撃。

腰を沈め右足の踏み込みと同時にゴブリンの心臓辺りに突き刺した。

体重を乗せた一撃は見事に体を貫きゴブリンの命を奪った。

貫く感触を竜は味わう。さらに彼にこの世界が紛れもない現実であることを思い知らせた。

そんな思考をすぐに頭の片隅に置く。考えていると、命を奪ったことに対する罪悪感に苛まされるためだ。

竜は、急いで剣を引き抜こうとした。

その瞬間。突然光ったかと思うと謎の一撃が飛んできた。竜は直ぐ様力任せに剣を引き抜き後方へ跳んだ。しかし、衝撃は竜の体を襲い、勢いよく地面に叩きつけられてしまった。


「ぐはぁ!?」

全身に痛みが広がる。肺の中の空気までもが奪われる。

(なんだ!?今のは)


「大丈夫かい。日陰君」

そんな竜に声を掛ける男子がいた。

茂木 賢斗だ。

さっきの輝きと攻撃は彼の放った聖属性の魔法の一つ〝セイントショット〟という技によるものだった。

しかし、竜には茂木がどんな技を繰り出してゴブリンを消滅させて、自分を吹き飛ばしたのかはどうでもよかった。

しかし、そんなこと以上に気になることがあったためだ。

それは茂木が竜にむけている表情だった。

その顔は笑ってはいるが見下しているようであったからだ。そして何よりも問題なのは彼の放った一撃。あれは明らかに威力が高く一歩間違えれば日陰がゴブリンごとセイントショットの餌食になる所だった。


(狙っていたな)

竜はこの瞬間、確信した。

茂木はクラスの中で最も魔法の扱いが一番に早くできるようになった天才だ。そんな彼が魔法の威力をコントロールできないなどあり得ない。

だから竜は理解した。自分をさりげなく彼が狙っていたのだと。


「助けてくれてありがとうございます。でも、あのゴブリンは茂木さんの力を使わなくても死んでいましたよ」

言っていることがちょっと皮肉だ。


「何言ってんだ。あいつ。バカじゃねぇか」

「お前なんかが倒せるわけねえだろ!」

「つか、茂木がいたから倒せたんだろ!」

竜の言葉に周りからは非難の声が飛ぶ。女子からは、茂木に対して失礼な態度をとったと見えて茂木を援護するように罵声を飛ばしてきた。


「止めよう皆。そんな事は、彼がああ言うことは理解できる」

茂木はやんわりと皆を静止させる。


「日陰君は、皆と違って、〝どうしようもない〟無能だ。これまでまったく成果を出せてない。そして、今日ようやく初めての手柄を取るチャンスが巡ってきたんだ。俺の手助けがあったけど彼はゴブリンを〝倒せたんだ〟。ここは、彼の手柄にしておこうじゃないか」


茂木の言葉に周囲は、茂木に賞賛を贈った。

対して竜に対しては侮蔑やゴミを見るような視線を飛ばしていた。


茂木の庇いは、竜にまったくプラスになっていなかった。

むしろ、より竜の立場が悪くなったと言っていい。

他の人達からは見たら、茂木の手助けがあったからこそ倒せたというのにまるで竜が一人で倒した事になっているのだから。


そして、それを茂木が竜に手柄を譲る。


この行為は友好的に見えるがまったくの真逆。


人からは、〝竜が茂木の手柄を横取とした〟と認識されてしまうのだ。


茂木が竜を助けた。


この一件で茂木の評価は急上昇。

竜の評価どころか立場は、最悪と言っていい程になった。

(悪知恵。どうして、こういうことにしか使わないのかな)

竜は染々と思った。


今日は、これで終了した。

しかし、これで確実に竜の立場は悪くなったのであった。

そんな中で皆とは違った感じに竜を見ている者がいた。


それに気づいたのは本人を除いて一人もいなかった。


竜はそんな皆を見て自分の今後とは別の事を考えていた。

(皆が、力に溺れ始めている)

自分は力がないから確信はない。

けど

自分達の能力をフルに使い、ゴブリン、スライムといったモンスター達を倒していく。

しかし、実際に倒している。そして命を奪っている。

だが、誰もが躊躇していない。むしろ積極的にモンスターを倒している。

しかも、笑顔で。

彼らがゲーム感覚でいる。


竜は自分をこうまでして陥れているクラスメート達の今後が不安になるのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ