表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/95

遅くなってすいません。

遅くなった分少し長めです。


楽しんでいただけたら嬉しいです。

盗賊を撃退したり、モンスターを倒したり、修行をしたりと竜達は順調に旅を続けていた。


「次は街だといいですね」

「そうですね。もし街でしたらきっと、静かないいところだと思います」

「私は久しぶりにゆっくりとベッドで寝たいです」

レティシアも言う。

このところ竜達は森や川といったところで野宿をしてきていた。そろそろ全員が宿での暮らしが恋しくなっていた。

「次のところがどんなところに着くか楽しみだ」

竜は期待を膨らませながら歩き始めた。


「これは」

「すごいですね」

「私も初めて見ました」

『これは、これは』

竜達は驚き、竜乃心は関心して目の前の光景を見ていた。

そこには城壁の入り口に並ぶ行列があった。行列の列はそれほどではないが竜達が入るには一時間は掛かるくらいの長さがあった。

「まさか、街に着いたかと思えば、国に着くとは」

「はい。思いもしませんでした」

「私も驚きです」

竜達はいまだにこの大陸の地図を手にしていなかった。そのためガトー帝国から逃れるために滅茶苦茶に旅をしてきていたのだ。

「まあ。いいじゃないですか。国に着いたなんてラッキーじゃないですか。ここでならゆっくりできますよ」

「そうですね。久しぶりにゆっくりできそうです」

「私もです」

仁美もレティシアも久しぶりの休息になると思い笑顔を見せる。

それに釣られ竜も笑う。

そして、竜達は城壁の入り口に並ぶ列へと入った。

それから一時間後にようやく竜達の番になった。

竜達はここにきた目的、所持品等をチェックされた。

それからさらに十分後にようやく入ることを許された。


「つ、疲れ、ました…」

レティシアはフードを深く被った状態でげんなりしていた。

「そうでしたね。そろそろ宿を見つけましょう」

レティシアの状態を見て竜達は急いで宿を探すのだった。


「ふぅーーっ!生き返ります」

ベッドに腰かけ、水をぐっと飲み干すレティシア。

その姿からよっぽど疲れていたんだと感じさせていた。

「良かったですね」

隣のベッドで仁美も腰かけてレティシアの様子に安堵していた。

「ヒカゲ様?」

「この国の情報収集に行っています。私達は出ないようにと言ってました」

竜を探すレティシアに仁美が答えた。

「ヒカゲ様が」

「はい」

仁美達二人は帝国ではどう思われているのか不明ではあるが狙われる可能性は否定できない。なので仁美達二人はできる限り国、街では外出しないようにするという方針にしていた。


「レティシアさんは相変わらずヒカゲ様と呼ぶのですね」

レティシアはこれまで旅をしていく中で竜のことをヒカゲ様と呼んでいた。竜は様をつけなくてもいいと言ってきていた。

「ですが、今では一国の姫ではなくなった私のことをレティシア様と呼んでいます」

確かに、と仁美は思った。

これまで当たり前と思っていたが竜は自分達と共に旅をしてはいるが自分達に一歩退いていることに今になって気づいた。


「私達のことを一定の距離にいる日陰さんは私達が重りになっているのでしょうか」

『いやいや、それは違うぞ』

「竜乃心様!」

「お師匠様!」

『あやつはお前さん達をお荷物とは思っておらんよ。むしろ逆じゃ』

「逆ですか?」

『そうじゃ。あやつは、自分が頼りされたことに喜びを感じておるんじゃ』

「で、では、私達のことを敬語で話すのは」

『あれは、わしが教えに教えた女性に対する作法の表れじゃ。あやつ自身の性格も加わってより強くなってしまったがの』

苦笑交じりの竜之心。

彼が語るに女性に対する礼儀はしっかりさせたらしい。

それは仁美達にとってありがたいと思うと同時にちょっとした寂しさを与えた。


((なんだか。寂しいですね))

『ところで話が変わってしまうがお前さん達に聞きたいことがあるんじゃがいいかのう?』

「はい。何でしょうか?」

『お前さん達二人はあやつのことが好きなのか』

「「!」」

彼の発言に二人は驚きと同時に顔を赤くさせた。

『そのようじゃな』

竜乃心は楽しそうに呟く呟く。

『二人とももしあやつを狙うなら心してかかることことじゃ。わしが言ったとおりあやつはおとなしそうに見えて硬い。ちゃんと伝えなくては一生お前さん達の思いは実現しないじゃろう』

竜乃心の言葉を顔を赤くしながら二人は必死に耳を傾けていた。そんな二人を実体はないが温かい目で竜乃心は見ていた。


(まったく。罪造りな子孫じゃ)

竜乃心は、これからどうなるかわからない三人の関係と今後に苦笑を浮かべるのであった。

そんな三人(?)の会話の最中に竜がくしゃみをしたかどうかはさだかではない。


「ここは色々あるんだな」

竜の目の前には多くの屋台と店がお祭りのように並んで建てられていた。

「すごいな」

食べ物屋から武器屋まで色々な物が店を広げていた。


ここに来るまでに竜はは情報収集をしてきていた。

竜が集めた情報だと

ここは、同盟国 セエル。商業が盛んなことで有名な中央都市国の同盟国の一つだ。

国力は中ではあるが商業や貿易が盛んなため財力は同盟国で一、二を持つ。


「ここでなら色々と揃えられるな」

竜はこれからのこの国での生活にちょっと楽しみを感じていた。

そんな竜を呼び止める声があった。

「おい!兄ちゃん!買って行かないか?上手いぞ!」

串に刺して焼いた肉を見せる。


焼き鳥かな?


肉の香ばしい匂いが鼻を刺激して来る。


うん!いい香りだ。


「この肉は?」

「鶏さ!けどよ、この国では色々な種類の鶏が売買されるから味も色々なんだ」

「へえ」

それは楽しそうだな。

「それは?」

「この国の名物の鶏 セエルコックさ。脂身が少なくてさっぱりとしているのが特徴さ。女性に人気がある」

「じゃあ。一本はそのままで三本は袋にしていただきますか」

「お!ありがとーよ。兄ちゃん!毎度!」

お金を出して焼き鳥を受け取る。ここでの通貨は中央都市国の同盟国のため通貨は中央都市国と同じセンタという単位の通貨を仕様している。今回は三本で四センタであった。


買い食いなんて久しぶりだな。


口の中に広がる肉の味を堪能しながら街を歩いていく。


その後。焼き鳥を食べながら竜はその後、いくつかの店で聞き込みをして宿へと帰った。



「これは……」

「美味しいです」

『ふむ。これが焼き鳥か。いけるのう』

宿に戻った竜はお土産として焼き鳥を三人にあげた。三人はちょうどお腹を空かしていたためにすぐさまに焼き鳥に食いついていた。この時、竜はもっと買えば良かったと思った。

「喜んでいただけて良かったです」

「ありがとうございます。ヒカゲ様」

「美味しかったです。ありがとうございます」

「それは良かったです」


『さて、この国で得たことをわしらに教えてはくれんかのう』

「わかりました。ですがその前の伝えなくてはいけないことがあります」

一拍置いてから話す。

「茂木さんがガトー帝国の新しい王になった」

その一言は三人(?)に衝撃を与えた。

「第二王女と結婚して王位に就いたみたいです」

「ヒカゲ様。私達のことはどうなっているのですか」

「第二王女のことは聞かないのですか」

「御姉様のことは解っていました」

冷静な口調で言うレティシア。しかし、その表情にはわずかに動揺が伺えた。

「レティシア様と仁美さんのことは、帝国を自分達のものにしようと反逆を企てて勇者によって阻まれ、戦いの中で死亡したことになっているようです」

二人の表情は複雑だ。

竜ですらこの情報を知った時は驚いたのだ。二人の心情は計り知れない。

しかし

「わかりました」

「ヒカゲ様。ありがとうございます」

二人は堪えるように竜に礼を言う。その表情は笑っているが泣いてもいた。

こんな時自分は何ができるだろう。

剣術しか能がない自分に。

竜はこの時、これほど自分が非力だと痛感したことはないと思った。

そして竜は。

二人を抱き寄せた。そして、二人を包むように抱きしめた。

「辛いのなら泣いて下さい。貯めれば貯めるほど辛くなります。だから、今泣いて辛い今を全部出して下さい」

自分が彼女達に危険から守る以外に何ができるのか。

それはわからない。

だが

「こんなことしかできませんが、」

何もできない方がもっとやだ。


その夜。部屋では少女達の静かな泣き声が響いていた。

それを竜はいつまでも聞き続けるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ