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対 騎士団長

戦闘描写がしっかり書かれているか心配ですが、楽しんでいただけたら嬉しいです。


「ヒカゲ。私と闘え」

騎士団長の言葉がこの場に響く。

竜は、次にどうするか考える。


「考えている暇などないぞ」

竜の思考を遮るかのように言う騎士団長。その姿は何者も通さない壁だ。


数秒間。竜は、一人、思考した。

そして、

少女達が心配する中、竜は、少女達を庇うように伸ばしていた手をゆっくりと下ろした。

「神無月さん。すいませんが、剣を貸してくれませんか」

仁美は、その言葉に息を飲む。

「で、…」

「お願いします」

彼女の続く言葉を竜は遮った。

仁美は、ゆっくりと竜の顔を見た。

そこには覚悟を固めた表情をした竜がいた。

それに仁美は圧倒された。

そして仁美は、自らの腰に差してある剣を竜に手渡した。


「無事に帰って来てください」

掠れ、絞り出すような声で言った。

「ありがとうございます」

剣を受け取り、礼を言うとレティシアの方を見る。レティシアも仁美と同じで悲痛な表情をしていた。

「どうか。武運を」

「ありがとうございます」

レティシアの言葉にも礼を言い、今度こそ、竜は騎士団長と対峙した。


「お待たせしました」

「よく決心した」


騎士団長は地面に刺していた剣を引き抜き構えた。そこから放たれる戦う意志、戦意はこれまで竜達クラスメイトには見せたことのないものだった。

ヒシヒシと竜の全身にぶつかる。

それに臆することなく竜も仁美の剣を鞘から抜き、構える。


両者が構えたまま静止した。

騎士団長は、両手で剣を持ち、平突きを繰り出す構えをとる。

対する竜は、剣を右手だけで持ち、だらんと下げたままだった。


「いいのか。そんな構えで」

「今、一番最善と思った構えですよ」

「ならば、結構」

騎士団長は、気にすることなく集中し直す。


「ダート帝国防衛騎士団長アレック・カドウィン」

名乗りをあげた。


「日陰無想流十三代目継承者 日陰・竜。いざ、参る」

竜も名乗りあげた。


そして、両者は同時に地を蹴り、中心で交差した。

ガギンッ!!

交差すると同時に剣と剣がぶつかる。

どちらの力も拮抗していた。


「やるな」

「どうも」

騎士団長アレックは、ここで初めて竜を賞賛した。

再び、平突き。

それを竜は、剣の刀身を当ててずらす。

今度は、右凪ぎ。

これは、後ろに下がり回避した。

「見事な動きだな。勇者の中でこれほど動けるやつはいなかったぞ。能力無しでは」

騎士団長の言葉を竜はお辞儀する。

礼の意味を込めて。

騎士団長は、自身のステータスの高さを活かして竜に剣を振るっていく。

対する竜は、能力もなく、対して身体能力があるわけでもなく、騎士団長の一撃、一撃を避け、いなしたりしていた。

それは、かつての竜では、有り得ない芸当だった。

「く」

騎士団長の表情は、少しずつではあるが苦悶になり始めていた。

そして、ここにきて初めて竜が、攻勢に出た。

ビュン!という音を出して騎士団長の視界から消えたかと思うと騎士団長の左側から斬りかかってきた。

騎士団長は、寸前のところで気づき、剣で受け止めた。

しかし、竜の剣は重く、騎士団長の腕を痺れさせた。

(なんという一撃。私の知る彼では、ない)

再び、高速とも呼べる速さで移動して剣を振るってくる竜。

騎士団長は、それを自分の能力と神経をフルに活用して剣で受け止め、時にはギリギリで回避していった。

(これほどとは)

自分をここまで振り回す竜に騎士団長は、感心した。

そして、それまで酷い仕打ちをしてきた過去の自分を殴りたい気持ちになっていた。

自分が相手を能力で実力と可能性を判断していたことに。


だが、今は勝負。勝つか負けるか。後悔している場合ではない。


(次で、仕留める)

決意した。

最大の敵に自分の持てる全てを一撃に込めて放つと。


精神を集中。そして、感覚を研ぎ澄ます。

耳には空気を裂き、高速で動き回る竜の音が入ってくる。


「そこだぁ!」


叫ぶと同時に剣を頭上へと向けた。

そこには空中で騎士団長に斬りかかろうと竜の姿があった。

騎士団長は、すかさず、竜の腹に剣を突き刺した。


勝った。


騎士団長は、確信した。と思った

しかし、騎士団長が刺した竜は、まるで煙のように消えていった。

目の前の現象に驚く騎士団長。

だが、次の瞬間。自分の腹に何かが突き刺さった。

そこには、剣の塚がしらを自分の腹に打ち込んでいる竜の姿があった。


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