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少女達は、決心する。そして、新たな問題


少し、短いですが。

楽しんでくれたら嬉しいです。


仁美は、自分の見ている光景が信じられなかった。

この帝国では、騎士団以上の力を持つ自分達の仲間。クラスメイト。だが、仁美にとってはもう関わりたくないと思っていた彼ら。しかし、そんな中で、能力がまったくなく、蔑まれ酷い目にあってきた彼。日陰 竜。

酷い立場にいながらこの異世界で必死になっていた。そして、現在。目の前で竜はクラスメイトの中で最強と召されている茂木 賢斗を翻弄し、かつ、技までも回避して彼を気絶させてしまった。さらに、その前に戦った彼らとでは、仁美ですら目で捉えられないほどの速度で彼らを倒した。

そこには、かつての彼の姿は、なく、一回り、いや、二回りも大きくなり、強くなった彼がいた。

戦いを終えて、こちらに優しく語り掛けてくるその姿は、まさに勇者と言ってもよかった。

その姿に仁美は、こんな状況だと言うのに心臓の鼓動が早くなり、顔が熱くなるのを感じていた。

ここにきて仁美は、初めて自分の状態を理解した。そして、自分の心の中で渦巻く物が一体何なのかを。

仁美は、決心した。

この計画が終わった時に決着をつけようと。


レティシアは、竜の戦いぶりに目を奪われた。初めて会った時は、力はないが、勇者達の中で、最も優しい人だと思った。

他の勇者は、自分に対して他の貴族達と同じようにいやらしい視線をむけてきていた。しかし、仁美に紹介された竜は違った。最初の時は、自分に対して見惚れたような表情をしていたが、すぐに、自分に謝罪してきた。そして、まるで兄のように接してくれた。その時からレティシアにとって大切な存在になった。

そして、今、自分達を助けるために現れた彼はあの時の変わらない優しい雰囲気にたくましさが加わった姿になっていた。

そして、最強と言われていた勇者達を一方的に倒して見せた。

レティシアはその姿に今度は自分が見惚れた。そして、それと同時に気づいた。そして、確信した。

自分の中にある一つの感情に。

また、新たに気づく。

彼を自分と同じように見つめている友人の存在を。

レティシアは彼女の表情から本能的に理解した。

彼女は、決心した。

これが終わったら決着をつけようと。


二人の少女は、それぞれで決心した。


その決心は、少女達を救った勇者にすらわからない大きな決心であった。



「早く城を出ましょう。準備は大丈夫のようですね」

「「はい」」

そうして三人は行動を再開した。

物陰に隠れながら城の中を移動していく。

「このまま行きますと王族の脱出の時に使われる通路があります」

「ですが、そこには多くの警備の人がいるのではないのですか」

「大丈夫です」

竜の問いに仁美が答えた。

「ようは、注意を他に向ければいいのです」

そして、すかさず詠唱を呟きはじめた。


「我、契約の名のもとに命ずる。火の理。今こそ業火となりて火の災厄を起こさせたまえ」


詠唱が終了した瞬間。どこからじゃ凄まじい爆発音が響いた。

城の警備にあたっていた者、そして、クラスメイトまで爆発音がした方へと走っていった。

「引き付けるために用意しておいたんです」

「なるほど」

竜は爆発の威力を見てやり過ぎではなかった。かと思った。

『とんでもない娘さんじゃな』

頭に響いた竜之心の言葉に内心苦笑した。

しばらくして三人は、移動した。その後は爆発の影響か誰とも遭遇することなくやってこれた。

しかし、最後の最後で問題が発生した。


城から脱出するための通路の入り口の前にこの帝国の騎士団長が陣取っていたのだ。


「待っていたぞ」

剣を地面に差し三人を見据える。

「騎士団長」

レティシアは彼を複雑な表情で見ていた。

「どうして、ここが」

「あんな派手な爆発。陽動以外の何だというのだ」

当然、と言ったような言い方をする。

「僕達を止めに来ましたか」

二人を庇うように竜が前に出る。

「ヒカゲ。生きていたか。あの時とは比べ物にならないほど変わったな」

「お陰様で」

辺りを警戒する。

「ここには、私以外に誰もいない」

「その言葉を信じろ、と」

「今のお前ならわかっているはずだ」


騎士団長の言葉に竜は、嘘では、ないとわかっていた。

周囲を警戒したが騎士団長、仁美達以外の気配はなかったのだ。


「わかりました。それで、騎士団長は、どうしますか?」


竜の言葉に騎士団長は、一言だけ言った。


「私と闘え。ヒカゲ」


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