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圧倒的な?戦い

二回目の投稿です。ちょっと短めですが楽しんでいただけたら嬉しいです。


「茂木さん。あなたは、そんな人間だったんですね。残念です」


竜は、失望した。といった感じに呟く。

現に竜は失望していた。


『勇者とは言えない存在じゃな』

竜之心も同じだった。

自分の師に言われると他人だと言うのに自分のことのように思えてきて恥ずかしい。

(自分はまだ、自分が勇者に対して名残惜しさがあったのか)


そんな竜の心情とは違い、周囲は混乱していた。

竜の登場に全員が動揺したことによって起きた現象。

自分達が見捨て、死んだと思っていた彼が生きていた。

そして。この場にいる仁美とレティシア以外の者達は今こう思った。


弱陰が復讐しに来たと。


現に茂木の取り巻き達の表情は恐怖に染まっていた。


「日陰さん!」

「ヒカゲ様!」

彼らとは対照的に仁美とレティシアの表情は嬉しさに満ちていた。

「神無月さん。レティシア姫。御待たせてしまいました。お迎えに来ましたよ」

竜は優しい笑みを浮かべ、二人を安心させる。


「久しぶりだね。日陰君」

三人の中を割って入るように茂木が喋り出した。


全員の中で動揺から脱するのが早かったようだ。


「久しぶりです。茂木さん」

「よく生きていたね。君みたいなのが」

「はい。生きてこれました。とても苦労しましたよ」

「それで、俺達に復讐しにきた、と」

「勝手な情報を流されても困りますよ」

「勝手も何も君は、〝今〟ここにいる」

竜自身がここにいる。その事実は立派な証拠になっていた。


「確かに僕は〝今〟ここにいます。ですが、僕の目的は復讐じゃないですよ」

「じゃあ。何が目的なのかな」

「彼女達。二人を助けるためですよ」

その言葉に茂木と取り巻き達は一瞬呆けていたが数秒も経たない内に大笑いしはじめた。

「ハハハハハハハッ!いや、いや、まったく君は!知らない間にギャグのセンスでも磨いてきたのか!傑作だよ!!」

そんな彼らに竜は気にすることなく。


「そう言うわけなんで、退いていただけませんか」

「冗談もそこら辺にしておきなよ。無能」

笑いを止め、殺意に満ちた表情になる茂木。そして竜に自身の持っている聖剣の切っ先もむけた。


「今俺は、俺は彼女達と話をしていたんだ。彼女達を〝救う〟話をね!」

救うと言う言葉を特に強調する。その声には黒い下心が混じっていると竜は感じた。


「救うですか。僕がずっと見ていましたがあれは話でも、交渉でもない。ただの脅迫にしか見えませんでしたよ」


呆れた。救うときたか。


「どうやら君の目は悪いようだね」

いえ。あなたの言動がおかしいですよ。心の声をあげる竜。


「茂木さん。言っていることがおかしいですよ」

「まあいい。君を捕らえるか、殺してからにしても遅くはない。

おい!後はお前達がやってくれ。この剣の錆にはしたくないから」

後ずさる茂木。それと同時に取り巻き達が前に出てきた。


「さっきまで、顔色が悪かったのにどうしたんですか。この短時間に」

回復。早いですね。


「へ。よく考えてみれば、お前みたいな雑魚が強くなったわけねえだろ!」

「大方。上手く逃げて潜伏していたんだろ」

「だから、問題ないんだよ!」


なるほど。そう考えますか。確かに短期間で今まで雑魚だった人が自分を越えた実力を身につけるなんて難しいことですからね。


その言葉を最後に一斉に襲い掛かってきた。

それぞれの武器を手にして振るう。ある者は呪文を唱えて火球を放った。

しかし、着弾する前からそこに竜の姿はなかった。


「参ります」

静かに呟く。

取り巻き達が竜がいた位置に着くまで、ドコッ!キンッ!といった鈍く、高い音が廊下で響く。

取り巻き達が竜のいた位置に着いた瞬間。竜も出現した。取り巻き達の背後に。そして、数秒もしない内に取り巻き達はバタバタと倒れていった。


「残ったのはあなただけのようですよ」

さっきまでの攻防がなかったかのような感じで竜は呟く。

そこには余裕が感じられる。

鋭く見据える竜。

そして、背後には、倒れたクラスメイト達の姿。

茂木には、竜が、友の屍を越えてきた一人の戦士のように見えた。


「っ」

竜の姿に一瞬、恐怖した。

クラスメイトを躊躇なく倒した竜。

それは竜が何の迷いもないという証拠だった。

そして、一番に感じたこと。それは自分達を倒せる力を手に入れたことに対する恐怖だった。


「少しは、強くなったんだね。日陰君。だけど、俺には勝てないよ」

しかし、平静を装う。

勇者としてのプライドが彼を奮い立たせていた。


「それが」

「そうだよ。これが俺の剣。聖剣キャリバー。勇者の証さ」

見せつけるように聖剣を構える。


『あの聖剣が不憫でならん』

竜之心は悲しそうに呟いた。

同じ武器として思うところがあるのだろう。


「ハァ!」

開始の合図もなく茂木は地を蹴り一気に竜へと接近し、聖剣を上段に振るった。

竜はそれを後ろに体を動かし、回避。


「よく避けたね」

すかさず聖剣を振るう茂木。

竜は、その一撃、一撃を回避していく。


(な、なんでだ、)

茂木は、攻撃をしていてそう思った。


自分は勇者として常に最強を維持してきた。今ではクラスメイトの中で最も強い存在になっていた。しかし、今の状況は一体なんだ!?召喚されてから何の力も持っていなく、無能として蔑まれてきた奴に一撃も当てられずにいる。


「く、クソォ!」

上手くいかない攻撃を繰り返していた茂木に焦りと怒りが出始めていた。

それは次第に茂木の攻撃に影響を与える。

攻撃の形が無くなり大振りになっていたのだ。それでも竜が応戦できないのはひとえに聖剣の力がその攻撃に含まれているためである。

当たればどんな影響が自分に振りかかるのかわからない。

しかし、そんな戦いが長くは続かない。

突然、聖剣の刀身が輝きはじめた。


「さあ。これで終わりにしてあげるよ。くらえ!閃光の一撃。シャイニング・ブレイザー!」


光輝く一撃が竜を襲った。


技を出した茂木は、勝利を確信した。


「すごい一撃でした。くらっていたら危ないところでした。でも…」


耳に聞こえてこないはずであろう声が耳に入ってきた。

それを最後に茂木の意識はなくなった。


「分かりやすい一撃でしたよ」


茂木を気絶させた竜は茂木をその場に寝かせる。そして、少女達の方へと歩んで行き。


「大丈夫ですか?お二人とも」

優しく、笑顔で声を掛けるのだった。


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