どうして、こうなったか
久しぶりの投稿です。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
なぜ、こうなってしまったんだろう。
それは、今の状況にある二人の気持ちだった。
計画では、二人は、仁美の部屋で竜を待つ。そして、来た竜と一緒に城を出ていく。
そのために脱出のルートやこれから必要になるであろう物は全て揃えていた。
しかし、ここに来て問題が発生した。
それは、茂木によってもたらされた竜の生存。そして、自分達に復讐にくるという情報だった。
仁美とレティシアは、驚いた。
なぜ、彼が生きている事を知っているのか。
なぜ、復讐するなどという情報が出たのか。
しかし、考えればそれはすぐに理解できた。だが、二人にはそんな疑問など考える暇もなく城は強固な警備へと変わってしまった。そして、レティシアは、警戒のためと言うことで自分の部屋に閉じ込められ、仁美もなぜか部屋で待機と言い渡されてしまった。
仁美は今、自分の部屋で椅子に座っている。
(困りました。まさか、ここに来てこんな状況下になるなんて)
仁美は焦っていた。
先ほど、水の精霊から竜が侵入に成功したと報告があったためだ。
仁美は、これからどうなるかわからないが準備だけはしておこうとした。そして、庶民的な服装が着替えた。これは、ここから出た後に目立たないようにするためだ。
それからは、いつでも出られるように待った。
しかし、事態は予想外な展開だった。
ドンッ!ドンッ!ドンッ!
突然、仁美の部屋を強く叩く音がした。
「ヒトミさん!開けてください!お願いします!」
それから悲鳴に近い声で向こうからレティシアの声がした。
仁美は、急いでドアを開けレティシアを入れた。
レティシアは、今にでも泣きそうな顔をしていた。
「どうしたんですか!」
「私たちの計画がばれています!」
その言葉に仁美は耳を疑った。
「どうしてですか」
「ヒトミさん達の仲間が私たちの話を盗み聞きしていたみたいなんです」
迂闊だった、と仁美は思った。
「ですが、そのために今夜にしたはずです」
「それはわかっています。しかし、それとは別の問題が起きたのです」
「別の問題?」
そしてレティシアはゆっくりと口を開いた。
「私の暗殺です」
仁美はこれ以上にないほど驚いた。
「日陰様の復讐に合わせて私を殺そうとしたのです」
「でも、よく」
「間一髪のところで気づいてここまで走ってきたのです」
思い出したのかレティシアの体は震えていた。
仁美は安心させるように優しく抱き締めた。
しかし、仁美は、こちらに向かってくる足音を聞いた。
『我が主。聖剣の勇者がこちらに向かって来ています。そして、それとは違う者達も』
別の何者なのか、それはレティシアを殺そうとする者達だろうと理解した。しかし、なぜ茂木達がくるのかがわからなかった。
仁美は、万が一を考え愛用の弓と剣を装備した。
そして、契約精霊達にも警戒を頼んだ。
暫くして部屋に茂木達が入ってきた。
「やあ。仁美さん」
いつものイケメンの笑顔で挨拶をしてくる。
「どうしたのですか。ここは、あなたの管轄ではありませんよ」
茂木の管轄は、王様の警護だったはず。
「いやね。ここにレティシア姫が来ていないかと思って」
「残念ですが、彼女は来ていません」
平静を保って答える。
「仁美さん。嘘はよくないよ。ここに来ているのはわかっているんだから」
「何度も言いますが彼女は来ていません」
言い張る仁美。
しかし、茂木は、笑みを浮かべていた。
「仁美さん。これは君のために言っているんだよ。それにどうして君は、彼を選ぶのかな」
「どういう意味ですか」
彼とは、誰だ?
「どういう意味もないよ。どうしてあんな奴を選ぶかな。君には俺が相応しいのに、どうしてさ」
「茂木さんの言っている意味がわかりません。それよりも急いで元の場所に戻った方がいいんじゃないですか」
仁美としては早く彼がいなくなってほしいと思った。
しかし、そんな気持ちはすぐに裏切られた。
「いい加減にしないと」
茂木の右手が輝く。
「痛い思いをしてもらうよ」
そして、右手に集めた魔力を投げつけてきた。
仁美から見て右斜めに。
仁美は咄嗟に魔力が向かう方向に移動し受け止めた。
踏みとどまって堪える。
「いきなり何をするのですか!」
「お姫様を早く出して、と言っているんですよ」
「いい加減に私も怒りますよ」
精霊達を出現させ自らの魔力を練り上げる。
「しょうがない。仁美さんに現実を教えてあげるとするか」
茂木はそう言って腰の剣に手を掛けた。
抜かれた剣は何の汚れのない銀色の刀そして装飾の施された鍔。見る者全てがその剣に目がいく。
「こんな所でそんな物を」
「そんな物とは失礼だよ。国を救う勇者が振るう聖剣の前で」
何が国を救う勇者ですか!
仁美は内心で叫ぶ。
そして、無理だと判断。弓を出現させる。
「覚悟してください」
弓を引く仁美。弓には引かれると同時に魔力で創られた矢が出現していた。
そして、
叫んだ。
「レティシアさん!今です!」
矢が放たれる。そして茂木達のいる場所で爆発した。
爆発と同時に仁美はレティシアの手を掴み茂木達を突き飛ばしながら部屋を出た。
「ヒトミさん!」
「逃げますよ!レティシアさん!」
このまま一気に。
仁美は逃げれると思った。
「ひどいなあ。仁美さん。俺を置いていくなんて」
だが、正面からゾッとする声が聞こえ、二人は正面から衝撃を食らってその場に倒される。
仁美達が起き上がった時には取り巻き達が駆けつけ二人を囲んでいた。
これが今に至っていた。
「仁美さん、俺はまだ何も言っていないじゃないか」
「私達をこんな目にして何を言っているのですか」
「言っていないよ。そもそも、レティシア姫は国家の反逆を企てている大罪人。それを庇って手助けをした仁美さんは共犯者。立場的に見て今のあなたは危うい存在」
仁美は言いがかりです!と叫びたかった。しかし反論することできなかった。今の状況は仁美達にとって不利だったからだ。
「でも、助かる道があると言ったらどうします」
「どういった方法でしょうか」
「簡単ですよ。俺の〝物〟になればいいんですよ」
「冗談じゃない!」
「ふざけないでください!」
仁美とレティシアはここに来て怒りの叫びをあげた。仁美など丁寧な口調など金繰り捨てて叫んでいた。
「そうですか。じゃあ力づくで俺の、いや、俺達の物になってもらいましょうか」
ゆっくりと二人に歩み寄る茂木とその取り巻き達。
その顔は欲望で歪んだ笑みを浮かべていた。二人はこれほど恐ろしい存在はないと思った。
そして、恐怖で目を瞑った。
「茂木さん。あなたは、そんな人間だったんですね。残念です」
この場に似合わない優しい声が響いた。
この場にいる全員が動きを止め、声のする方向を見た。
そこには、茂木達を鋭く見据える日陰竜の姿があった。




