再会。そして、決断
ちょっと、無理矢理な流れな気がしますが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
「と、言うわけじゃが、お前さんはどう思う」
竜之心の質問に竜は返答に困った。
「僕のいない間に随分と色々な事がありましたね」
「政治なんかそんな事で賑やかじゃよ。どこの世界も一緒じゃぞ」
竜之心は当たり前、といった感じに呟く。
その言葉には説得力があった。
「僕としては彼女達を助けてあげたいです。ですが、」
竜は返答に躊躇した。
「何じゃ?」
「僕に彼女達を助ける事ができるのでしょうか」
「たしかにこの数ヶ月の間に僕は強くなれました。でも、そんな僕でもできるかどうか」
竜は不安だった。自分が彼女達をこれから先助けて、守る事ができるかどうか。
それを聞いた竜之心は何も告げずに竜の頭を叩いた。
「ていっ」
「イダッ!?」
「バカモン!女を助ける事に不安になるんじゃない!」
竜は呆気にとられた。
「まったく、男なら、女のために骨身を削らんかい。まったく、」
「でも、」
「でもも、へちまもない!助けてからでも遅くはない!」
「わ、わかりました」
頭をおさえ、うめきながら答えた。
(やれやれじゃ)
竜は竜之心に押され、仁美達との密談を取り付けた。
仁美は現在、帝国の街の中にある食堂に来ていた。中では香ばしい匂いがたちこめ、客が料理を口にしている。
ウェイターが料理を運んでいく姿が見える。そしてその手にはできたばかりの魚料理が皿の上に乗せられている。
(私もたまには食べたいなあ)
それを見ていた仁美は食欲が湧いてくるのを感じた。
仁美は城で申し分ない料理を口にしている。しかし、仁美としては一般庶民が食べるようなものの方が親しみがあって好きだった。
そんな店を見ていた仁美に。
「後ろをむかないでください。誰が見ているかわかりませんですから」
「!」
背後から声がした。しかし、それが誰の声なのか仁美はわかっていた。
今まで、何度も聞きたいと思っていた声。
背中に感じる懐かしい気配。
今すぐにでも振り返り顔を見て無事な姿を確かめたいと思った。
しかし、仁美は全精神力を使って堪えた。
「お久しぶりです。無事で良かったです。そして、あの時、助けに行けなくてすみませんでした」
「いえ、気にしないでください。僕は大丈夫です。振り向いてあげられないのが残念です」
「はい。私もこんな状況でなければ、すぐにあなたの無事な姿を確かめたいです」
仁美の声は少し悲痛な感じだった。
竜にはそれが痛い程感じていた。それは自分も同じ気持ちだからだ。
「城では大丈夫ですか?話は聞いていますが」
「はい。大丈夫です。ですが、今の私達には危うい状況になりだしています」
「縁談があると聞きました」
「!」
竜からのその言葉に仁美は胸を貫かれた感じがした。
「はい。そんな話があります」
「相手は」
「茂木さんです」
その名前を聞いて「やはり…」と重く呟いた。
仁美は竜がどんな表情をしているか知りたかった。
「それで、仁美さん」
「もちろん、断りました。ですが、知らない間に外堀が埋められはじめていて」
(人の意志は無視か、なんて人だ)
竜は内心で吐き捨てた。
「それと、まだ、ありますね」
「はい」
仁美は私達と言った、これは仁美だけに危機があるとは竜は思っていなかった。
「レティシアさんです」
「レティシア様は、一体」
彼女のことは竜は聞かされていなかったのだ。
「レティシアさんにも、縁談があります。相手は、やはり、茂木さんです。しかし、それ以上に彼女は命を狙われています」
「命を…ですか」
それには驚く。
「はい」
「一体、なぜ?」
「レティシアさんは、王位継承位第三位です。しかし、レティシアさんは、貴族の出ではありません」
それは竜も知っていた。レティシアは、庶民であった母と王との間で生まれた子になっている。レティシアは、庶民であった頃に結婚していた母と庶民の父との間に生まれた子供だったのだ。
「王の妻は、レティシアさんのを入れて三人です。しかし、そのお母さんも亡くなってレティシアさんが王位を継ぐことになりました。しかし、最近になって勇者の婚姻が始まって城の中で小競り合いが起きるようになったのです」
「それで、狙われていると」
「はい、それと同時に庶民の出であり、王の真の子ではないレティシアさんをこれに乗じて亡き者にしようとする者も現れました」
聞いていた竜は二人に同情した。そして、それ以上に湧いてくる感情があった。
助けたい。
彼女達を助けたい。
竜は衝動にかられるのを抑えて呟いた。
「わかりました。僕は、二人を助けます。だから、準備をしておいてください」
そして、席を立ち上がり、仁美が座る席を通り過ぎる時、「絶対に助けます」と静かに呟いて店を出ていった。
竜の言葉を聞いた仁美は、店を出ていく竜の後ろを姿を目に焼きつけるように見ていた。そして、竜が通り過ぎる時に呟いた言葉が耳から消える事がなかった。
「信じています」
自然と口からそんな言葉が出たのだった。
そんな仁美の姿を睨み付けるように見ている存在があった。そして、それは仁美。気づかれないように店を出ていった。
そして、
「ついに、見つけた」
静かに呟いて街の通りを歩いていった。




