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数ヵ月後

久しぶりの投稿です。

楽しんでいただけたら嬉しいです。


竜達が修行を開始してから数ヵ月が経過していた。

そして現在。

竜と竜之心は何もない草原で向き合っている。お互いに木刀を手にして。辺りは緊張感に包まれていた。

暫くの沈黙。しかし、声を出そうにも出せない空間がそこにはあった。


「いきます」

沈黙を破る竜の声が辺りに響いた。

しかし、次の瞬間にはそこに竜の姿は消えていた。

竜之心はそれに驚くことなく静かに木刀を構えている。

そして数秒も経たない内に木刀がぶつかる音が響いた。

鍔迫り合いが数秒続く。

竜は竜之心との鍔迫り合いを断つように上へと弾き上げ、竜之心から見て右斜め後ろから木刀をふりおろした。それを竜之心は振り返る事なく木刀を竜のいる方に木刀を動かし受け止める。

竜はそれに動揺することは追撃していく。

それをいなしていく竜之心。

「ぐっ!」

いなしていた竜之心の木刀の柄頭が竜の腹に突き刺さる。

「浅い…か」

竜之心は当たった感触で決定打ではないと直感した。

「さすがですね」

「お前さんも成長したな」


竜は一撃を受けるさいに後方に跳んで衝撃を和らげたのだ。

お互いに笑みを浮かべる。

竜は自分の師の強さに。

竜之心は自分の弟子の成長に。

再び睨み合う二人。

そして、ここで竜が動いた。

木刀を抜刀の構えをとったのだ。

一撃に主軸を置いた剣術。

竜之心も構えを見て真剣な表情を浮かべた。

竜は空気を切り裂くほどの速さで竜之心に向かって走った。

竜之心は木刀を振るった。

二人の一撃が交差した。

勝負はそこで終わりを迎えるのだった。


「見事じゃったぞ」

竜に称賛の言葉を贈る。

「でも、あれはまだ…」

「何、あれはわしから見てもまったく問題ない。あれは完成したと見るがのう」

「でも、あれを剣技と言えるか」

「何を言うとる。あれはお前さんがこの修行期間の中で自ら考え、自らの力で作り上げたもの。何も後ろめたく思う必要はない」

「ありがとうございます。師匠」

竜之心の言葉に竜は救われた気がした。

「さて、修行はここで一段落とするがそろそろこの国を出ようと思うが」

「それは僕も考えていました。けど…」

「ああ、お前さんが話をしとった少女か?」

頷く竜。

「なあ、竜よ。お前さんにとってその少女は何じゃ?」

「僕を心配してくれた唯一の人の一人です」

「なんじゃ。彼女じゃないのか」

残念そうに呟く竜之心。

「か、彼女って、そんなんじゃありませんよ」

慌てて否定する竜。

(っていうか。僕じゃあ彼女に釣り合わない)

これまで彼女と接していて竜は常々そう感じていた。

「のう。わしの余計なお節介なことを言うがわしから見てお前さんは悪くないぞ」

「そんな、僕にはよくわかりません」

竜はそう返すのであった。

竜之心から見て竜は顔は悪くはないと思っている。実際、街を歩いている時にたまにすれ違う女性はこっそりであるが竜のことを見ている時があった。

(自覚がないのかのう)

そんな竜に竜之心はため息を吐く。

「まあ良い。それでどうするのじゃ?」

「僕の安否だけは伝えたいと考えています」

自分の安否は師匠に頼んで彼女の精霊に伝えてある。しかし、身を隠すために安心であるという事を証明する自分の姿は見せていなかった。これからこの国を去る。そのため彼女達には無事であるという事だけは証明させておかなければならない。


「今夜辺りか、明日の午前中に合流できないか伝えてくれませんでしょうか?」

「わかった」

竜之心は頷く。

竜は修行の疲れを癒やすために現在泊まっている宿の自分の寝ているベッドの方へと向かった。

それから数十分は寝ていた竜に竜之心が声をかけてきた。

「竜よ。どうやら。厄介なことが起きそうじゃよ」

表情は真剣であった。

「どうしたんですか」

「城で何やら不穏なことが起きているらしい。それもお前の知っている者達に関係している」

「神無月さん達に」

竜之心は頷いた。

「どうやら。彼女達を暗殺。もしくは、手に入れようとする動きがあるらしい」

それを聞いていた竜はこれまでで一番動揺し、驚いた。

「ど、どういうことですか!」

「慌てるな。順を追って説明する」

そうして竜之心は語りだした。

今、城で彼女達に何が行っているのかを。


城の中。

仁美は城でできた友人レティシア・ミュエルと話しをしていた。

「もう数ヶ月ですね」

「ええ。それはとても早いです。時が経つのも」

二人は静かにお茶を飲んでいた。

現在、部屋には誰一人としていない二人だけであった。

「連絡は、定期的にありました。それで…」

連絡。それは二人だけにしか伝わらない暗号だ。この言葉は二人が親しくしていたある少年から伝えられてくる近況報告の事を意味していた。

「修行が一段落したので国を出ようと考えているみたいです」

仁美の言葉にレティシアは驚いた。

「そ、それは本当の事何ですか」

縦に頷く仁美。

レティシアは何とも言えない表情をしていた。

「レティシア。日陰さんが動こうとしている。〝私たち〟も動く時だと思う」

仁美の言葉にレティシアは息を飲んだ。

この数ヶ月の間に二人で練ってきたもの。

それを実行する、と仁美は言うのだ。

「このままだと私たちは危ない。だったら動ける今なら」

「でも、」

「大丈夫。でも、今は難しいからちょっと時間は必要ね。日陰さんに私たちの現状を伝えてあります」

「いいんですか。あの人を巻き込までしまって」

「するかしないかは日陰さんの判断に任せたいと思います。ですが準備だけはしといてください」


仁美の言葉にレティシアは不安な表情をしていたがゆっくりと頷くのだった。

そして、少女達は覚悟を決めた。

そして、少女達は一人の少年に希望を託した。


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