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修行開始

ちょっと遅めの投稿になってしまいました。

これから先は、こちらの都合で更新は遅くなります。

読んでくださっている人には、申し訳ございません。

しかし、都合が終われば投稿していく予定です。

「そ、それは、本当なんですか!」

自分の部屋のベッドに腰かけていた仁美は、おもわず立ち上がっていた。

『はい、本当の事です』

仁美の目の前には、水の精霊が丁寧に答えていた。

「い、生きているんですか!あの人が!」

その質問に水の精霊は肯定と縦に頷く。

『わ、我が主!』

水の精霊は珍しく驚愕した表情を浮かべる。

それは仁美がベッドから素早く起きて戦いの時の衣装に着替えようとしたからだ。

『お、お待ちください!今、外へ出ると危険です!』

「どうして!急いで行かないと!」

『まずは落ち着いて私の話を聞いてください』

水の精霊は必死の説得で仁美を止めた。

『我が主。今出ていけば主の立場にあのお方の立場も悪くなります』

「どういうことですか」

それを聞いた仁美は真剣な面持ちになる。

「今、あのお方が生きていると知られれば、主達の中で混乱が起こります」

あのお方が、何をするかわからないからです。と最後に付け足した。

仁美は水の精霊が言いたい事を理解する。

自分達は助かりたいがために彼を置いてきた。加勢することもできたというのに。

そんな彼が生きていた、と知れば、全員が恐怖するだろう。

彼が自分達に対して復讐するかもしれないからだ。

「ですが、それはしょうがないと思います。私達はされるような事をしたんですから」

仁美は泣きそうな表情を浮かべる。

仁美としては当然だ、と思っていた。

人一倍責任感がある彼女は話を聞いていてそう思っていた。

『我が主。それを本人の前で言えば、どれほど喜ばれるか』

水の精霊は仁美の考えに感銘させられた。

「でも、あなたはどうやってこの事を」

『それは、彼のそばにいる存在が私に話しかけてきたからです』

「助けてくれた人」

『はい、そして、その者の力で私に伝えてきたのです』

仁美は気になった。

竜を助けてくれた者に感謝のしようもない気持ちでいっぱいだった。

『それで我が主』

改めて仁美に声をかける。

『あのお方、いえ、日陰様からのお願いがあります』

竜の名が出て仁美は緊張する。

「わかりました。お願いします」

先を促した。

水の精霊は、ゆっくりとそして、はっきりと竜のメッセージを語った。

仁美も彼女の話に耳を傾けるのだった。


仁美が竜のメッセージを聞いていた頃。


城では別の事が進められていた。

会議の場では国王とこの国のトップ達が集められていた。


「まったく、厄介な事になった」

「いいではないですか。国王。あの者はどうせ使えない存在だったんですから」

「そうです。余計な出費がなくなって良かったと考えるべきかと」

「それで、他の国々はどうだ」

「反応は、まったく。しかし、燐国のヴォーロからは聖槍が送られました」

燐国 ヴォーロ。

この帝国の隣にある国で帝国と同じように孤立している国の一つである。この国にはかつて戦場でその猛威を奮ったと言われる聖槍があった。

勇者召喚は大陸の全ての国が知っている。そのため、近い内に大陸の全ての国のトップが集まり会議をする。

通称ー全国会議。が行われるだろう。


「それまでに間に合うか」

「何、その時までには整っているさ」

国王の問いに宰相は答える。

この集まりが後に何をもたらすのかそれはこの場にいる者だけしか知らない事であった。


ダンジョンから出て数日後。

「ふむ。ここならいいのう」

竜を連れていた竜之心は立ち止まり竜の方に振り返る。

着いた場所は竜がかつてゴブリンと戦った場所だった。

「で、でも、ここは、僕が」

「前にゴブリンと戦った場所だった…じゃろ?」

「は、はい」

「あ、そうじゃ。竜。お前さん。いちいち敬語などは不要じゃぞ。わしとお前さんは家族なんじゃから」

「家族、」

その言葉に竜は深い何かを感じた。それはこの世界に来て、初めて感じた温もりではないのかと思った。

「そうじゃ。わしの事は〝おじいちゃん〟とでも呼びなさい」

「はい!」

「あ、じゃが。稽古の時は〝師匠〟と呼ぶように」

その言葉に竜は苦笑した。

「さてと、では、始めるかの。我が子孫よ」

「はい!師匠!」


竜は声をあげ、修行への道へ踏み込むのであった。

竜達が修行を開始した頃。城は普段と変わらない様子であった。

しかし、一人だけ変わった人がいた。

訓練場で実力をつけようとする仁美だった。

彼女は何かにとりつかれたかのように訓練にせいをだしていた。

この日も仁美は騎士団の騎士相手に剣を振るっていた。

「ハァ!」

気合いの掛け声とともに騎士の剣を弾き飛ばす。

「ま、参りました」

「ありがとうございました」

お辞儀をして仁美はその場を後にする。


「しかし、ヒトミ様。最近随分と力を入れているな」

「ほら、やっぱりダンジョンで亡くなったあの男のために…」

騎士団の間では、仁美が竜のために強くなろうとしているのではないのか、と持ちきりだった。

仁美はそんな話にまったく反応しなかった。その事についてはちょっとした違いはあるがほぼ、正解だったからだ。

しかし、そんな彼女には、ある問題があった。

今日も訓練を終え自分の部屋へと続く廊下を歩いていた。


「良かった!ここにいたんですね!仁美さん」

貴族らしいスーツを着た茂木がそこにいた。

貴族の衣装を着た茂木はイケメンであるためか、そのためか見た目はどこぞの王子様のようである。

「茂木さん。その姿は?」

「今日は、王様達と話をね」

現在、茂木はその実力と今までの功績によって高い地位を与えられていた。そして、中でも第一王女と仲がいいと仁美は聞いている。しかし、その人以外にも女性の話があるため仁美は少しよく思わなかった。


「それで、私に何か?」

「いや、ちょうどいいから話でもしようかと」

「お誘いありがとうございます。ですが、私は訓練で疲れたので暫くは寝ていようと考えいますので」

そう言って通り過ぎようとした。

仁美は咄嗟に横に動いた。

「そんな事言わないでくださいよ」

茂木の手が空を掴む。

茂木が仁美の肩があった場所に手を伸ばしていた。さらに、視線もさっきとは違いねばつくようなものになっていた。

(うっ、何ですか…この感じは)

仁美はその視線に寒気を感じた。

こっちに来てから様々な思惑を乗せた誘いや視線を受け続けていたために彼女の感覚は敏感なものになっていた。

仁美はその視線に耐えられずそのまま走った。

しかし、それでも背中にはその視線を嫌というほど浴びるのであった。

そして、その後ろ姿を茂木は狙いを定めるようにしていた。


「なら、君に〝現実〟というものを見せてあげるよ」


最後にそんな言葉が廊下に響くのだった。


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